日浅 佳奈 院長の独自取材記事
日浅レディースクリニック
(福岡市中央区/赤坂駅)
最終更新日:2025/05/30

2020年に日浅佳奈院長が開院した「日浅レディースクリニック」は、赤坂駅と天神駅、いずれからも徒歩5分の場所にある。婦人科の受診率向上をめざしこだわった院内は、ホテルや空港のラウンジをほうふつとさせる洗練されたデザインで、婦人科が持つイメージとは一線を画している。診療では不妊治療に力を入れており、先進の設備を備え、顕微授精にも対応。また患者一人ひとりの状況を共有するため全スタッフによるカンファレンスを毎週実施している。「頑張るべきは患者ではなく医療従事者である」という院長の言葉どおり、常に患者に寄り添う温かい診療が特徴だ。3人の子どもを育てる母の顔も持つ日浅院長に、開院の経緯や日々の診療で心がけていることなどを語ってもらった。
(取材日2020年12月11日)
通いやすく居心地の良いクリニックをめざして開院
2020年に開院されたとお伺いしました。

ええ。産婦人科医として大学病院に勤務していた時、もっと一人ひとりの患者さんにじっくり向き合いたいと思ったのです。加えて不妊治療専門病院ではなく一般の産婦人科に通われている不妊症の患者さんに接する中で、高度生殖医療につなげられたらとも思っていました。さらに専門病院に紹介して終わりではなく、最後まで自分で担当したい気持ちもありましたね。大学病院を退職し勤めることになった不妊を専門に行うクリニックで、不妊治療のニーズの高さを肌で感じ、改めて不妊症や婦人科疾患に悩む患者さんの支えになりたいと思い、開院を決意したのです。
クリニックはアクセスが良く、院内の雰囲気もすてきですね。
当クリニックは不妊治療での通院も多く、中でも採卵周期の場合は通院回数が多くなります。お仕事を続けつつ通院される方も多いので、開院する際は通いやすいように博多・天神地区で場所を探していました。この地を選んだのは、表通りより静かで落ち着いた場所のほうが入りやすく、診療時間の前後で休憩や買い物をしやすいだろうと考えてのことです。医療機関へ行くこと自体緊張するでしょう。特に婦人科は受診へのハードルが高いと思います。もっと気軽にご自身の体のメンテナンスに来てほしいと思い、当クリニックの院内はホテルのラウンジをイメージし、居心地の良い雰囲気をめざしました。
不妊治療に特化されたきっかけは?

産婦人科は大きく3つのグループに分けられます。妊娠・出産や胎児に関する周産期分野と、婦人科悪性腫瘍に関する分野、そして無月経や月経不順などの内分泌疾患と、不妊症や更年期障害を診察する生殖生理内分泌の分野です。大学病院にいた時はがんやハイリスク妊娠の患者さんが、クリニックでは妊婦さんのほか月経不順や不正出血、不妊症などの患者さんが多く通院されていました。こうした経験から女性としてより患者さんの身近で月経や不妊症に悩む方の力になりたいと、生殖生理内分泌の分野をサブスペシャリティーとすることを選んだのです。また私自身1人目の出産の後、2人目をなかなか妊娠しない時期があり、子どもがほしいのにできない焦りやストレスを抱えながら仕事をこなす日々を経験しました。不妊治療を受ける患者さんの気持ちを感じることができたのも、今につながっていると思います。
患者の心に寄り添い、チームで丁寧な診療を提供
患者さんと接する上で心がけていることはありますか?

不妊治療中の患者さんは真面目に治療を頑張られる方が多いです。毎日基礎体温をつけ、食事に気を配り、サプリメントを飲み、体を温めるなどさまざまな対策を取られています。ただそれらが苦になる場合は「やらなければいけないことを減らしましょう」「来院してくださるだけでいいですよ」「頑張り過ぎないで。頑張るのは医師やスタッフです」とお声がけします。高度生殖治療に進まれた方は連日の注射や内服、エコー検査に緊張してストレスも多く感じているでしょう。ですから当クリニックでは落ち着いて治療が進められるよう気をつけています。不妊治療は頑張れば必ず結果が出るというものではありませんし、基礎体温の変化や生理の有無に一喜一憂するような日々が続きますからね。また治療方針は患者さんとお話ししながら決めること、押しつけることは絶対にしないことも大事にしています。
具体的にはどのようなことに注力されていますか?
患者さんの望む治療法を提案できるように、培養室や受精卵への負担をなるべく減らしながら培養するタイムラプスシステムなど先進機器の導入。そしてスタッフ全員が医療知識を常にアップデートすることに力を入れています。日本看護協会不妊症看護認定看護師にも在籍してもらっており、スタッフ一丸となり患者さんをメンタル面からも支えられるように努めていますね。また寄り添った治療をするため、診療前に時間をかけてカウンセリングを行っています。ご夫婦と不妊カウンセリングを専門的とする看護師が話し合える場を設けて、治療内容やスケジュール、費用などについてお伺いしているのです。
診療体制について教えてください。

患者さん一人ひとりとじっくり向き合いたいという思いから、当クリニックには私を含めて経験豊富な医師が4人います。スタッフはそれぞれの業務に専念できるようにと、看護師や培養士、受付スタッフ、事務長と多くの職種が在籍しています。勤務医時代から一緒に働いているスタッフも多いことから、私の診療スタイルを理解してくれていて助かっていますね。より密な連携を図るためにインカムを使ってこまめに情報を共有したり、スタッフ全員で週に1度カンファレンスを行ったりしています。ちなみに当クリニックは事務長以外は全員女性なので、患者さんに安心していただきやすいのではないでしょうか。
何でも相談できる母親のような存在に
医師を志したきっかけとご経歴を教えてください。

中学生の頃、医療ドラマを観て感動したのがきっかけです。また生物の授業や人体をテーマにしたテレビ番組が好きで、詳しく勉強してみたいとも思っていました。その後、人の役に立つことと興味を持てることが同じなのはとてもすてきなことだと考え、医学の道を志したのです。出身は福岡ですが大学は宮崎大学医学部に進み、卒業後は九州大学病院で研修を積み、後に福岡赤十字病院で勤務し、九州大学病院での特任助教を経て現在に至ります。
女子高校生に向けた講演もなさっているとか。
年に1度母校で高校1・2年生を対象に、性教育を含めた女性のライフプランをテーマに、月経周期の仕組みから妊娠のメカニズム、望まない妊娠を避ける大切さについて講演しています。また女性は妊娠適齢期と仕事のキャリアアップ時期が重なることから、人生の選択肢を減らすことのないように、どんなことも自分で決断できるように具体例を提示しながらお話ししていますね。初めての婦人科診察は誰でも緊張するものですが、その時に怖い・痛い経験をすると、その後婦人科に行きたくなくなってしまうでしょう。ですから当クリニックでは思春期専門の外来では内診台は使わず経腹エコー検査を行うこともあったり、がん検診時には内診台で嫌な思いをしないよう気を配ったりしています。
今後の目標をお聞かせください。

当クリニックでは不妊治療に年齢制限を設けていません。ただ40代で治療を開始する場合、治療を受けても妊娠に至らない割合は高くなります。いつまで治療を続けるのか自分で決めるのはつらいことです。望んだ結果が得られなかった場合でも否定的な最後で終わるのではなく、十分なケアをして差し上げられるようになるのが最終的な目標です。また待ち時間の軽減にも努めたいと考えています。不妊治療は診療時間が長くなりがちな上、当クリニックは丁寧さを重視しているため、待ち時間が出てしまい申し訳なく思っています。診療の良さは変えずにスムーズに受診していただけるよう努力しますので、ご了承いただけましたら幸いです。
読者へのメッセージをお願いします。
状況や症状は人それぞれですし、女性は年齢によってホルモンバランスも変化することから、かかりつけの婦人科を持ち、不調を感じたらいつでも受診していただくことが大切です。思春期や高齢の方は婦人科に行くことにためらいを感じる場合もあるかと思います。当クリニックは不妊治療だけでなく婦人科診療やワクチン接種も行っていることから、どの年代の相談にも対応できるのが特徴です。不安に思っていることを何でも話せる、「お母さん」のような存在になれたらと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは体外受精(胚移植)/初回 13万2000円、2回目 11万円、3回目 以降8万8000円