日浅 佳奈 院長の独自取材記事
日浅レディースクリニック
(福岡市中央区/赤坂駅)
最終更新日:2021/10/12
「日浅レディースクリニック」は、赤坂駅・天神駅からいずれも徒歩5分。院長の日浅佳奈先生が、婦人科の受診率向上をめざしこだわった院内は、ホテルや空港のラウンジをほうふつとさせるグレーと木目を基調とした洗練された空間で、婦人科が持つイメージとは一線を画している。診療では不妊治療に力を入れており、先進の設備を備え、顕微授精にも対応。また患者一人ひとりの状況を共有するため全スタッフによるカンファレンスを毎週実施している。「頑張るべきは患者さんではなく医師・スタッフである」との院長の言葉どおり、常に患者に寄り添う温かい診療が特徴だ。3人の子どもを育てる母の顔も持つ日浅院長。開院の経緯、日々の診療で心がけていることなどを穏やかな口調で語ってくれた。
(取材日2020年12月11日)
通いやすく居心地の良いクリニックをめざして開院
今年の10月に開院されたんですよね。
産婦人科医として市中病院や大学病院で勤務する中で、もっと一人ひとりの患者さんにじっくり向き合いたいと思ったことに加えて、不妊治療専門病院でなく一般の産婦人科に通われている不妊症の患者さんに接し、高度生殖医療につなげられたら、とも思っていました。さらに、その先も専門病院に紹介して終わりではなく、最後まで自分で担当したい気持ちもありました。長女が小学生になり、夕方以降の時間を少しでも確保しようと大学病院を退職して、不妊を専門に行う市内のクリニックに勤務しました。その時に不妊治療のニーズの高さを肌で感じ、あらためて不妊症や婦人科疾患に悩む患者さんの支えになりたいと思ったことがきっかけで、2ヵ月前に開院となりました。
クリニックはアクセスも良く、院内の雰囲気もとてもすてきですね。
当クリニックは不妊治療での通院も多く、中でも採卵周期の場合は通院回数が多くなります。お仕事を続けつつ通院される方も多いので、職場からそのまま通いやすいように博多・天神地区で場所を探していました。表通りより静かで落ち着いた場所のほうが入りやすいですし、診療時間の前後で休憩や買い物などもしやすいためこの地を選びました。病院へ行くこと自体緊張すると思うのですが、特に婦人科は受診へのハードルが高い科だと思います。もっと気軽に、ご自身の体のメンテナンスに来てほしいと思っています。そのため院内はホテルのラウンジをイメージし、居心地の良い雰囲気をめざしました。
不妊治療に特化されたきっかけは?
産婦人科は大きく3つのグループに分けられます。妊娠・出産、胎児に関する周産期分野、婦人科悪性腫瘍に関する分野、無月経や月経不順、子宮筋腫や子宮内膜症などの内分泌疾患、不妊症や更年期障害を診察する生殖生理内分泌の分野です。大学病院にいた時は、がんやハイリスク妊娠の患者さんが多く、一方で町の産婦人科クリニックでは、妊婦さんのほか月経不順や不正出血、不妊症などの患者さんが多く通院され、女性としてより患者さんの身近で、月経や不妊症に悩む方の力になりたいと、生殖生理内分泌の分野をサブスペシャリティとすることを選びました。また、私自身1人目の出産の後、2人目をなかなか妊娠しない時期があり、子どもが欲しいのにできない焦りやストレスを抱えながら仕事をこなす日々を経験し、不妊治療を受ける患者さんの気持ちを感じることができたのも、今につながっていると思います。
患者の心に寄り添い、チームで丁寧な診療を提供
患者さんと接する上で心がけていることはありますか?
不妊治療をされる患者さんはとても真面目に治療を頑張られる方が多いです。例えば毎日基礎体温をつけ、食事に気を配り、サプリメントを飲み、体を温めるなどさまざまな対策を取られる中で、それが苦になる場合は、「やらなければいけないことを減らしましょう、来院してくださるだけでいいですよ」と伝えています。高度生殖治療に進まれた方の多くは、連日の注射や内服、数日間隔のエコー検査に緊張して、ストレスも多く感じておられます。なるべく緊張感を取り除いて落ち着いて治療が進められるようスタッフみんなで気をつけています。誰しも努力が報われるからこそ頑張れると思うのですが、不妊治療は頑張った分だけ必ず結果が出るというものではありません。基礎体温の上下に一喜一憂し、生理が来るたびに落ち込むような日々を続けないといけない。「頑張りすぎないでください。頑張るのは、私たち医師やスタッフです。」と皆さんにはお伝えしています。
具体的にはどのようなことに注力されていますか?
設備面では、受精卵に極力負担をかけないで培養するタイムラプスシステムを導入しています。先進の設備を整え、スタッフ全員が正しい知識と最新の治療法についての知識を常にアップデートしており、日本看護協会不妊症看護認定看護師もおりますので、患者さんをメンタル面からも支えていきたいと思っています。それぞれの患者さんに寄り添った治療をするため時間をかけてカウンセリングを行えるようにしています。不妊治療を始めるにあたって治療内容やスケジュール、費用や助成金についてご夫婦とスタッフとがお話し合いができる場を設けています。ご夫婦そろっての来院が難しい場合や、コロナ禍においては、テレビ電話といったオンラインでのカウンセリングにも対応しています。
診療体制について教えてください。
医師は私と副院長の2人です。副院長は県外の不妊治療専門病院で経験を積んだ女性医師です。医師を2人体制にした理由は、患者さん一人ひとりに時間をかけてじっくり向き合って寄り添いたい思いからです。勤務医時代から一緒に働いているスタッフも多いので、私の診療スタイルを理解してくれていて、助かります。ただ、カルテ上だけでは患者さんのこれまでの背景や状況を共有しきれないこともありますので、スタッフ全員で週に一度カンファレンスを行って、治療方針や、問題点について情報共有を徹底しています。
なんでも相談できる母親のような存在に
医師を志したきっかけと先生のご経歴をお聞きします。
中学生の頃、医療ドラマを観て感動したのが最初のきっかけでしたね。生物の授業も好きで、中でもテレビ番組の人体をテーマにしたシリーズが好きで、もっと勉強してみたいと思いました。人の役に立つことと、興味を持てることが同じなのはとてもすてきなことだと思い、医学の道を志しました。出身は福岡ですが、大学は宮崎大学医学部に進み、卒業後は九州大学病院で研修医として勤務し、後に福岡赤十字病院での勤務、九州大学病院での特任助教を経て現在に至ります。
女子高生に向けた講演もなさっているとか。
年に1度母校で、高校1・2年生を対象にして、性教育を含めた女性のライフプランをテーマに、月経周期の仕組みから妊娠のメカニズム、望まない妊娠を避けることの大切さについて講演しています。また、女性は妊娠の適齢期と仕事のキャリアアップ時期が重なることから、人生の選択肢を減らすことのないよう、どんなことも自分で選択して決断できるように具体例を提示しながらお話ししています。また、初めての婦人科診察では、誰でも緊張してしまうものですが、その時に怖い思いや痛い経験をしてしまうと、その後、婦人科受診をしたくなくなってしまいます。当クリニックには思春期専門の外来もありますが、内診台での検査を行わずに、経腹エコー検査を行うこともありますし、20歳前後の初めてのがん検診の際には、内診台で嫌な思いをしないよう気を配っています。また、スタッフは全員女性ですので安心して来院していただけると思います。
今後の目標をお聞かせください。
当クリニックでは不妊治療に年齢制限を設けていません。しかし、40代になってから治療を開始した場合、治療を受けても妊娠に至らない方の割合は20代に比べて高くなります。いつまで治療を続けるのか自分で決めるのはつらいことです。望んだ結果が得られなかった場合でも否定的な最後で終わるのではなく、十分なケアをして差し上げられるようになるのが最終的な目標です。
読者へのメッセージをお願いします。
状況や症状は人それぞれですので、ご自分が不調を感じたらいつでも受診していただきたいですね。女性は、年齢によってホルモンバランスも変化しますから、かかりつけの婦人科を持つことが大切です。思春期の方や高齢の方は特に婦人科に行くことにためらいを感じる場合もあるかと思いますが、当クリニックでは、どの年代の方の相談にも乗りますし、皆さんがなんでも話せるお母さんのような存在になりたいと思っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは体外受精(胚移植)/初回 13万2000円、2回目 11万円、3回目 以降8万8000円