尿に異常を感じたら腎臓内科へ
貧血・むくみ・息切れにも注意
上星川ファミリークリニック
(横浜市保土ケ谷区/上星川駅)
最終更新日:2021/11/05
- 保険診療
腎臓の病気では、初期の自覚症状がほとんどない。だが悪化すると、貧血、むくみ、尿の泡立ち、息切れといった症状が表れるという。「上星川ファミリークリニック」の伊藤秀之院長は、大学病院や大規模病院で腎臓の疾患に幅広く対応し、特に腎生検の経験が豊富な日本腎臓学会腎臓専門医だ。また日本内科学会総合内科専門医として多角的に診断を行い、腎臓の疾患であるか否かに関わらず、症状に合わせた適切な治療を行っている。「腎臓の組織に損傷がある場合、失った組織は元に戻りません。腎臓の機能を守るため、早期発見が何より大切」と話す伊藤院長に、腎臓の病気と生活習慣病との関係について、また「ネフローゼ症候群」についても話を聞いた。
(取材日2021年3月11日)
目次
腎臓の組織を検査して原因を探る。総合内科専門医として多角的に診断を行うクリニック
- Q腎臓疾患について教えてください。
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A
腎臓の機能が低下する「腎炎」や糖尿病が原因で起こる「糖尿病性腎症」に悩む患者さんは多いです。腎臓内に体液のたまった袋ができる「多発性嚢胞腎」は遺伝性の疾患ですが、近年では治療薬の開発も進んでおり、早期に発見すれば悪化する前に対処ができます。また、尿たんぱく量が増加することで体内からたんぱく質が失われ、血液中のたんぱく質濃度が一定の基準を下回る病態を「ネフローゼ症候群」と呼びます。ネフローゼ症候群では、腎臓機能以外の全身臓器に悪影響を及ぼすことがあり、治療の遅れが命取りになることも少なくありません。ネフローゼ症候群の原因究明と迅速な治療が鍵となります。
- Q腎臓疾患の場合、むくみや貧血といった症状があるそうですね。
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A
腎炎のような腎臓そのものの病気では、尿に血液が混ざったり尿たんぱくが出るといった異常がみられます。さらに血液量が増えると尿の色が紅茶のような褐色になり、尿たんぱくが増えるとビール状の泡を生じることもあります。いずれも初期では見た目でわからない程度ですが、症状が進行するとはっきりわかるようになります。尿たんぱくが増えると、尿の泡立ちのほかに「むくみ(浮腫)」も現れます。また腎臓の機能が30%以下になってくると造血ホルモンが不足して貧血の原因となることがあります。これはかなり進んだ状態といえますが、腎臓疾患は自覚症状があまりないため、貧血や疲れやすさがきっかけで腎不全に気づく患者さんもおられます。
- Q腎臓の病気が生活習慣病などに影響することもありますか?
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A
糖尿病や高血圧は腎臓病を引き起こす原因の一つです。特に糖尿病性腎症は透析治療に至ってしまう最大の原因といわれています。高血圧による腎硬化症も高齢の方には多くみられます。長年の生活習慣病により動脈硬化が進み、徐々に腎臓がダメージを受け、機能が損なわれてしまうのです。生活習慣病から腎臓を守るためには、もととなる糖尿病や高血圧を早い時期から治療することが大切です。一方で、腎臓病が高血圧を引き起こすこともあります。腎臓には血圧を調整するホルモンを分泌する機能があり、腎臓の血流が低下するとさらに多くの血流を求めるようになり、それが高血圧につながります。高血圧は腎臓に悪影響を与えますから悪循環ですね。
- Qどんな方が気をつけたほうがよいのでしょうか。
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A
特に生活習慣病を抱えている方は、気づかないうちに腎臓に影響を及ぼしているかもしれません。定期的に尿検査を受けてください。また、多発性嚢胞腎など、腎臓の病気では遺伝性も無視できません。ご家族に腎臓の病気や透析を受けている方がいらっしゃる場合、若いうちからのチェックをお勧めします。薬による薬剤性腎障害もよくみられます。市販の薬でも腎臓に影響を及ぼすものは多いので注意が必要です。また、痛み止めや骨粗しょう症の薬によって腎機能が影響を受けているケースも珍しくありません。尿の異常・急激なむくみ・貧血の自覚症状を感じたら、すぐに検査を受けてください。
- Qまずは気軽に相談をすることが大切だということですね。
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A
そのとおりです。腎臓の病気は自覚症状が出る前でも、尿や血液の検査ですぐに異常がわかります。腎臓の組織に損傷がある場合、失った組織は元に戻りません。残った組織を守り、それ以上の悪化を防ぐ治療がメインとなります。早期発見がとても大切なのはこのためです。腎臓はあらゆる臓器と連携しているため、膠原病・血液障害・心臓疾患が腎臓病につながることもあります。生物が海から陸に上がった時代から、その生命を維持するため、腎臓は発達し続けてきました。腎臓の機能を守るためにも、皆さんにはもっと気軽に健康診断を活用してほしいと思っています。