門田 欣也 院長の独自取材記事
もんでん内科ハートクリニック
(福岡市博多区/竹下駅)
最終更新日:2021/10/12
JR博多駅から春日市までを結ぶ筑紫通りの弓田交差点からすぐにある「もんでん内科ハートクリニック」。2020年9月1日に開院したばかりで、門田欣也(もんでん・よしや)院長は、循環器内科が専門で、心臓病や糖尿病の治療を中心とした地域医療に取り組んでいる。特に心疾患や生活習慣病に対しては、有酸素運動と負荷をかけすぎない筋力トレーニングを行う心臓リハビリテーションの概念を取り入れた運動療法を展開。心疾患を発症させないための一次予防から、再入院を防いでいく二次予防までに注力し、患者の健康寿命延伸をめざしている。そんな門田院長にこれまでの経歴やクリニックの特徴、専門である心疾患や生活習慣病などについて話を聞いた。
(取材日2020年9月16日)
急性期から慢性期まで幅広い心疾患に対応
これまでにどのような臨床に携われてきましたか?
循環器内科は外科のようにメスを持って手術をしなくても、カテーテル治療によって狭心症や心筋梗塞、不整脈などの心疾患を治すことができるところに惹かれて選んだ道。九州大学循環器内科に入局後は、救急病院に勤務することが多かったので、急性心筋梗塞や心不全の患者さんに対するカテーテル治療を数多く担当しました。急性期の患者さんが中心ではありますが、幅広く心疾患の治療に携わったほか、大学院では心不全に関する基礎研究にも取り組み、ニュージャージー州立医科大学に留学。研究に打ち込んだおかげで、診療においても一つの検査データをうのみにせず、ほかの検査結果や所見などから複合的に考える習慣が身につきました。
急性期後の患者さんの治療が転機となり開業されたと伺いました。
兵庫県の綱島会厚生病院の勤務では、急性期後の亜急性期や慢性期の医療に携わりました。基本的に心疾患は良性ですが、高齢の方の場合、急性期を乗り切ってもすぐにご自宅に戻れるかというとそうではありません。そのまま家に戻ってしまうと、家族も介護できず、本人もリハビリができず弱ってしまうことも。そこで患者さん自身のQOLをアップさせるために亜急性期から慢性期にかけての心臓リハビリテーションが重要になります。その段階での治療が、寝たきりになるのか、あるいは日常生活を取り戻せるのかの分かれ目。そうした急性期以降の医療の価値を実際に体験することで、再入院を防ぐ二次予防、あるいは生活習慣病の段階で心疾患を食い止める一次予防に貢献したいと考え、患者さんに最も近いクリニックという形での医療を志すようになりました。
あまり一般的ではない心臓リハビリですが、実際にはどういった施術を行うのでしょうか?
いわゆる整形外科的なリハビリとは違い、心臓リハビリはウォーキングや自転車こぎなどの有酸素運動と、低負荷の筋力トレーニングであるレジスタンス運動を組み合わせた運動指導です。これは、骨格筋やほかの内臓の機能を高めて心肺機能をカバーしていくことを目的に行っています。実際に心筋梗塞や心不全で入院した方の再入院を防ぐことも期待されています。また糖尿病などの生活習慣病を持っている患者さんにもお勧めで、心臓リハビリと食事指導を組み合わせることによって、血糖や血圧を効率的にコントロールしていきます。まだまだ認知度は低いのですが、今後高齢化が進む中で需要は高まっていくはずです。
心臓リハビリの考え方を取り入れた運動療法を提供
先生がめざすクリニック像についてお聞かせください。
有病者の方の二次予防はもちろん、生活習慣病の段階で心血管病を食い止める一次予防に注力したいので、生活指導に興味のある看護師、そして患者さん自身やそのご家族と一緒に、薬を処方するだけではなく生活習慣全体を変えていけるような運動療法、食事療法を提供できるクリニックにしたいですね。将来的には管理栄養士、理学療法士、作業療法士などのスタッフや施設とも連携し、心臓リハビリも提供していきたいと考えています。また今後は心不全パンデミックと表現されるように、ある種の老化現象として高齢の心不全の患者さんが増えると言われています。そうした患者さんは治療が難しく、微妙な薬の調整で対応しなければなりません。ご本人が望むような生活ができるように管理維持しながらバックアップしていくことも、私たち日本循環器学会循環器専門医の責務だと考えています。
どのような主訴でいらっしゃる患者さんが多いのですか?
胸が痛い、動悸がするという方が多いのですが、心臓などの循環器に問題がないケースもあります。例えば呼吸苦で来られる患者さんは、循環器内科的には心不全や弁膜症などが疑われますが、気管支喘息や肺気腫であることもままある。患者さん自身、自分は心臓が悪い、肺が悪いとわかって来られるわけではありませんから。そういう意味では、日本内科学会総合内科専門医の資格も持ち、幅広い症状に対応できるのは強みのひとつかもしれません。
糖尿病の治療経験が豊富なのも一つの特徴ですね。
糖尿病に関しては重症化するとさまざまな合併症を引き起こし、最終段階では透析が必要になります。現に透析が必要な患者さんも増えていますし、社会的な問題にもなっている。これもきちんと血糖をコントロールすることができれば、合併症に悩むことなく一生を過ごすことができるはずです。専門的な糖尿病診療を行う医療機関に勤務した経験、そして循環器専門医という立場からも、糖尿病の患者さんたちの力になれるのではないかと思っています。
生活習慣病の治療では、心臓リハビリの要素も取り入れているのでしょうか?
心疾患のリスクファクターである生活習慣病の治療においては、食事や運動などの生活指導が基本。心臓リハビリの見地から、高齢の方にはラジオ体操を勧めています。ラジオ体操は意外に体力が必要で、低負荷の筋力トレーニングにも適しているんですよ。また万歩計をつけてもらったり、体重や血圧などの数値を手帳に書きとめたり、客観的に判断できる指標を記録することも推奨しています。食事面においても、毎日食べたものを記録してもらうことで、患者さんと一緒にチェックするとともに、患者さん自身が食生活を見直すきっかけにしてもらっています。
急な高血圧、高血糖は早めに専門の医師へ相談を
若い方でも高血圧や糖尿病などで気をつけたほうが良いポイントはありますか?
20〜40歳代で高血圧と診断された方には、動脈硬化や加齢がベースにある本態性高血圧ではなく、二次性高血圧の可能性があります。原発性アルドステロン症をはじめ内分泌疾患などが疑われるので、きちんと調べる必要があるのです。本態性と二次性の高血圧では治療方法もまったく異なるため、高血圧を指摘された際には循環器専門のクリニックを受診することをお勧めします。また高血糖も半年から1年で急に数値が高くなったという人は要注意。生活習慣の悪化によるものではない糖尿病が隠れていることも。とくに緩徐進行1型糖尿病であれば、膵臓のインスリンを分泌する細胞が壊されていくため、一般的な糖尿病の薬が徐々に効きにくくなります。そのため若い方であってもただの高血糖と見くびらずに、糖尿病治療に精通した医師を受診してください。
そのほかに循環器専門の先生に診てもらった方が良いケースはありますか?
動悸や胸の痛みなどの出現に規則性があったり、めまいや気の遠くなるよう感じなど別の症状がプラスアルファとしてある場合には専門の医師に相談したほうが良いでしょう。例えば狭心症は体を動かした際に発作が起きるケースが多いのですが、中には異型狭心症といって夜間や明け方に発作が起きることも。高血圧や糖尿病などのリスクファクターがなくても発症する心疾患があるので、そうした病気が隠れていないかを判断するのも役目だと思っています。
生活習慣病予防のためにアドバイスをお願いします。
生活の中に運動を取り入れること。私自身、昔から通勤に自転車を使うなど日々の運動を心がけています。自転車も毎日20分程度こげれば有用な有酸素運動です。一人で黙々と取り組むのは難しいかもしれませんが、通勤などの日常に運動を取り入れたり、ご夫婦で散歩をしたりしながら継続してください。また野菜中心の食事は徹底するのが難しい面もありますが、食事の最初に野菜を食べるように意識してみてはどうでしょうか。肉や魚、ごはんなどの主菜で満腹になり、野菜は残しがちになってしまうため、野菜から食べ始めるのもお勧めです。とにかく生活習慣病は命に関わる病気を引き起こすので、普段から気をつけて予防していくことが大切です。