井上 展聡 院長の独自取材記事
寺塚クリニック
(福岡市南区/高宮駅)
最終更新日:2026/05/15
「寺塚クリニック」は、古くから居住する住民の高齢化が加速しているエリアにある。2012年の開院以来、地域の健康を見守ってきた井上展聡(ひろさと)院長は、内科と脳神経内科を中心に、急性期病院から地域医療の現場まで幅広く研鑽を積んだ、笑顔のすてきなベテラン医師だ。外来診療では、風邪や生活習慣病などの一般内科から、めまいやしびれ、物忘れ、歩行障害など、専門性を生かした診療を実施。年齢を重ね、通院困難になった患者は訪問診療へ移行するなど、切れ目なく診療する体制を整えている。さらに、併設のデイケア施設と連携して提供する通所リハビリテーションに加え、訪問リハビリも開始。多職種連携を強化し、在宅での看取りにも数多く立ち会ってきた井上院長に、患者と向き合う姿勢やめざす医療などについて詳しく聞いた。
(取材日2026年3月17日)
外来からデイケア・訪問診療・訪問リハビリまでカバー
まずは、クリニックの概要についてお聞かせください。

当院は、2012年10月に開院したクリニックになります。私は開院当初より院長を務めさせていただいており、併設するデイケア施設とも連携しながら診療を行っております。一般内科・脳神経内科の外来、訪問診療、訪問看護に加え、訪問リハビリも開始しましたので、さまざまなニーズにお応えできる体制が整っています。当院の周辺はご高齢の方が多いエリアになりますので、基本的にはこれまで外来に来られていた方が、通院困難になった場合に訪問診療へ移行し、切れ目のない診療を行っています。
外来には、どのような主訴や疾患で来られる方が多いですか?
内科では、頭痛や腹痛などの風邪症状や高血圧症や糖尿病といった生活習慣病の方が多いですね。脳神経内科に関しては、頭痛やしびれ、めまい、物忘れ、ふるえ、脱力、けいれん、歩行障害、ろれつが回らないなどの症状。疾患名としては、アルツハイマー病などの認知症やパーキンソン病をはじめとする神経難病、脳梗塞などの脳血管障害になります。2022年の厚生労働省の国民生活基礎調査によると、「要介護者」において、介護や支援が必要になる主な原因は、1位が認知症、2位が脳血管疾患、3位が骨折・転倒となっており、上位3つで全体の約半分を占めています。そのようなこともあり、当院では加齢や病気による身体機能低下の予防を図り、自立した生活維持をめざす通所リハビリを、併設のデイケア施設と連携して提供することに加え、訪問リハビリも開始しました。
リハビリの内容について、詳しく教えてください。

特に高齢者の生活の質を大きく左右する「転倒予防」と「認知症予防」を重要なテーマとし、医師の医学的管理のもと、理学療法士の専門職が一人ひとりの状態に合わせたリハビリを提供しています。筋力やバランス能力の改善を目的とした運動療法に加え、日常生活動作訓練や認知機能へのアプローチを取り入れることで、転倒しにくい体をめざし、認知機能の維持・向上を図ります。訪問リハビリでは、理学療法士がご自宅を訪問し、実際の生活環境に合わせたリハビリを実施。自宅内での安全な動作方法の指導や歩行訓練、バランス訓練などを行い、転倒を予防するための体づくりを支援します。また、生活の中での活動を通じた認知機能へのアプローチも行い、日常生活の自立度の維持と認知症の進行予防をめざします。住み慣れたご自宅で安心して生活を続けられるよう、ご本人だけでなく、ご家族への助言や住環境の調整についても支援しています。
体だけでなく、心の状態にも目を向けた診療を
さまざまある診療科の中から、院長が脳神経内科を選択された背景をお聞かせいただけますか?

学生の時に循環器、呼吸器など各診療科をローテーションで回ったのですが、脳神経内科が一番難しいと感じたんです。そして、医師の数が他の診療科に比べて少ないことも選択した理由の一つです。治らない疾患が多く、長い時間をかけて病気と付き合っていく診療科でもありますので、患者さんとの関わりも必然的に深くなります。私にとってはそれも魅力でしたし、私の母親が認知症とパーキンソン病を患ったことにも運命を感じました。先ほどお伝えしたとおり、厚生労働省が発表している「要介護者」に介護や支援が必要になった原因は、ほとんどが神経疾患です。だからこそ、今もなお取り組んでいくべき課題が多いと感じています。
院長は患者さんの体の状態だけでなく、心の状態にも目を向けた診療を大切にされていると伺いました。
「心が動けば、体も動く」。つまり、心の状態が体にも大きく影響すると考えています。実際、心が前向きになることで体の動きの改善につながることも多く、逆に不安や気持ちの落ち込みが体の不調につながることもあります。そのため、当院では症状や検査結果だけを見るのではなく、患者さんの生活状況やお気持ちにも耳を傾けながら診療することを心がけています。患者さんが安心して治療に取り組み、前向きに生活していけるよう支えることも医療の大切な役割だと考えます。
良くも悪くも体と心は影響し合うのですね。

体に不調があると、不安・心配・恐れといった感情も生まれ、人はどうしてもネガティブ思考になりがちです。そうなると、治療も良い方向に進みづらいことをこれまでの経験で実感していますので、まずは私がプラスの「気」を出すことが重要です。例えば、これまでできていたことができなくなったことで落ち込んでしまい、前向きになれない場合は、「今できていることに目を向けましょう」と、お声がけするようにしています。少し目線を変えるだけで、気持ちは大きく動くもの。そんな私自身、多くの患者さんから大切なことに気づかせていただき、それを心に留めて診療を行っているので、与えてもらっていることのほうが多いような気がします。
声に出して「ありがとう」と伝えることの大切さ
患者さんから気づかせてもらったこととは何でしょうか?

いつも声に出して「ありがとう」と伝えることの大切さです。訪問診療もしていますので、これまでたくさんのお看取りにも立ち会ってきました。そんな中で、いつも私やスタッフたちに「ありがとう」と言ってくださっていた方は、本当に穏やかな良い表情で旅立たれることに気づいたんです。感謝することの大切さをたくさんの方から教えていただきました。私自身、医師としてたくさんの出会いをいただけていることにも感謝ですし、その想いを患者さんにも伝え、元気を与えていくことが本当の医療だと思うんです。薬はあくまでも補助にしかすぎません。体も心も動かせる本当の医療をめざして、今後も続けていきたいです。
さまざまな患者さんの旅立ちに立ち会ってきた院長だからこそ伝えたいことはありますか?
元気な時こそ、ご家族や大切な方と死生観についてお話ししていただきたいと思います。人生の最終段階になると、患者さんは徐々に食事が取りにくくなり、点滴を行うかどうかなど、さまざまな選択をする場面が増えてきます。ただ、点滴を長期間続けるとむくみが出てきますし、息苦しさにつながることもあります。多くの方をお見送りしてきた経験で感じたのは、無理に身体に負担をかけるよりもその人らしく自然な経過を送り、穏やかに過ごせることが多いということです。1日でも長く一緒に過ごしたいというご家族のお気持ちも理解できますが、延命治療の有無についてはしっかりご本人のご希望を確認されることが大事だと考えます。
最後に、地域の方や読者へのメッセージをお願いします。

めまいやしびれ、物忘れ、歩きづらさなど、日常生活の中で気になる症状はありませんか? 当院では、一般内科診療に加え、認知症や頭痛、めまい、転倒など、生活に影響する症状の診療に取り組んでいます。高齢化社会においては、認知症や転倒による生活機能の低下などの日常生活に影響する症状への対応がますます重要になっています。今後はこれらの課題に対し、より専門的に対応するため、「認知症」「頭痛・めまい」「転倒」など、専門の外来の充実を図り、早期の評価と適切な対応を行っていきたいと考えています。地域の皆さまが安心して生活できるよう、体だけでなく、心の状態にも目を向けながら、一人ひとりに寄り添った診療を行っておりますので、気になる症状がありましたら、どうぞお気軽にご相談ください。

