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千村 浩 院長の独自取材記事

代官山やまびこクリニック

(渋谷区/代官山駅)

最終更新日:2024/12/10

千村浩院長 代官山やまびこクリニック main

代官山駅から徒歩8分。八幡通りに沿った脇道を入った場所にあるマンションの3階で診療する「代官山やまびこクリニック」は、児童・思春期精神科、心療内科、精神科を標榜するクリニック。渋谷駅、恵比寿駅から徒歩圏内の同院では、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症など発達障害の診断と治療・ケアを行い、5歳頃から成人まで幅広い年代の患者とその家族の悩みに向き合う。医師の診察と併せて公認心理師による心理検査やカウンセリングを実施し、多角的な評価に基づいた診療を提供するだけでなく、発達障害の患者や家族を対象にしたイベントや勉強会なども開催。2024年11月からは毎月2日、漢方の専門医師による女性漢方内科の外来を開設するなどさまざまなサポートに注力する千村浩院長に、その思いを聞いた。

(取材日2024年9月25日/情報更新日2024年12月5日)

発達障害の患者やその家族と向き合う精神科クリニック

まずはクリニックの特徴を教えてください。

千村浩院長 代官山やまびこクリニック1

当院は、2020年に開業した児童・思春期精神科、心療内科、精神科のクリニックです。主に自閉スペクトラム症やアスペルガー症候群などの広汎性発達障害や注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害といった発達障害の診断と治療・ケアを行っています。発達障害を診療しているクリニックには15歳ぐらいまでのお子さんを対象としているところが多いようですが、当院では5歳頃から成人の方まで、幅広く診療しています。また、ご本人だけでなくご家族へのケアにも力を入れている点も当院の特徴です。他の医療機関に相談してみたものの別の医師の話を聞きたいと受診を希望される方も多く、東京都内だけでなく近県からもご来院いただいています。

どのような相談が多いのでしょうか?

発達障害にはさまざまな種類があり、複数の種類が重複することもあります。また、ご本人の年齢によって困っていることも変わってくるので一概には言えませんが、家庭や学校、職場などでの生活がうまくいかない、周りの人との関係でつらさを感じるといったことは共通していると思います。発達障害の原因は親のしつけや教育の問題、本人の努力不足ではなく、生来の脳機能の障害がと考えられています。当院では、ご本人やご家族がどんなことで困っているのかをお聞きして、うまくいかない原因がどこにあるのか、どうすれば良いのかをご本人、ご家族と一緒に考えながら、もつれてしまった糸を少しずつほぐしていく、そのようなイメージで治療を進めています。

特性に気づいたら、早めに受診したほうが良いのでしょうか?

千村浩院長 代官山やまびこクリニック2

そうですね。時間がたつと徐々に物事が複雑になっていって、もつれた糸がさらにこんがらがってしまうんですね。そうなると糸をほどいていくのも大変になりますから、できれば早めに来ていただいてケアを始めたほうが良いと思います。発達の特性が理解されず、ご本人に強いストレスがかかると、生活上の支障がより強くなってしまうこともあります。例えば、学校の先生や親、上司などから叱責されることで自信をなくし、意欲低下やうつ、不安障害、引きこもりといった精神的な症状や、頭痛や腹痛などの身体症状が出やすくなります。これを「二次障害」といい、特に思春期には暴力や過食嘔吐、自傷行為、過量服薬など深刻な問題につながる可能性もあります。ですから、周囲あるいはご本人が特性に気づいて早めに一人ひとりにあった支援をすることはとても重要だと思います。

多職種・多機関と連携し、医療の枠を超えた支援を

具体的にはどのような治療をされていますか?

千村浩院長 代官山やまびこクリニック3

ご本人やご家族のお話を伺った上で生活環境を調整したり、必要に応じてお薬の服用をご提案したりしています。薬物療法ではADHDに対する精神刺激薬のほか、不安や不眠などの精神的な症状に対して抗精神薬を処方することもあります。また、当院では漢方薬も処方し、ご本人の年齢や状況によって西洋薬と使い分けています。2024年11月からは漢方医学専門の医師による外来を、毎月第2・第4火曜日の9時から12時半に開設しました。この外来では、主に思春期の女性と患者さんのお母さんなど、女性を対象に、心身両面のさまざまな症状を緩和するための治療を提案できればと考えています。また、公認心理師による心理検査やカウンセリングも行い、さまざまな視点でご本人とご家族をサポートする体制を整えています。

先生はクリニックの診療以外の支援にも力を入れているそうですね。

はい。受診する子どもの成長をサポートする場、母親の学びや癒やし、つながりの場を設けたいとの思いで、開業と同時に隣にやまびこ村を開きました。発達障害や子どもの成長に関心を持つさまざまな人と協力し、発達障害の人の障害者福祉サービス利用相談、子ども向けの音楽と即興演劇、アクセサリー作り、生け花、星の話、マインドフルネスワークショップや子育てに関する勉強会、講演会などを開催しています。その他、学校などの教育機関、児童相談所や保健所などの行政機関、子どもと大人が「バディ」となって関係性を築いていく活動とも連携しています。

精神科訪問看護も実施されていると伺っています。

千村浩院長 代官山やまびこクリニック4

精神科訪問介護とは、精神疾患のある方や心のケアを必要としている方のご自宅を訪問して、在宅医療を提供するサービスです。当院は精神科領域に特化した訪問看護ステーションと連携し、月1回の診察だけでは対応が難しいと判断した場合、訪問看護の利用を提案して、希望されたご家庭に定期的に訪問をお願いしています。ステーションのスタッフから月に1回レポートを送ってもらっていますが、普段の診察ではわからない日常生活の様子が把握でき、診療にも非常に役立っています。また、発達障害がある方の職場探しと就労サポートを行う就労移行支援事業所とも連携するなど、大人のサポートにも力を入れています。

「やまびこ」のような双方向のやりとりを大切に

先生は開業前、公務員として働かれていたそうですね。

千村浩院長 代官山やまびこクリニック5

大学卒業後、現在の厚生労働省に入省し保健医療福祉行政に携わってきました。医学部在学中から精神科領域に興味を持っていて、公務員としても精神保健福祉法の制定や精神障害者保健福祉手帳制度の創設を担当するなど、深い関わりを持ってきました。その中で、身近に不登校や虐待など子どもたちを取り巻く社会問題にふれる機会が増え、子どもたちの心の問題を診る臨床に携わりたいと思うようになったのです。公務員を退いて改めて学びを再開し、精神科の専門病院やクリニック勤務を経て当院を開業しました。公務員として国や県、国際機関に勤務した多様な経験から、患者さんやご家族に幅広い視野からさまざまなアドバイスができればと思っています。

クリニック名の「やまびこ」の由来を教えてください。

医師が一方的に治療方針を決めるのではなく、患者さんやご家族とやまびこのように双方向でやりとりする診療をめざしたいという思いを込めました。例えば、薬の服用に抵抗がある方には他の方法をご提案するなど、ご本人やご家族の声に耳を傾け、皆さんの意思を尊重した診療を心がけています。また、双方向のやりとりを成立させるには、患者さんがご自分の特性を理解し、困っていることを言語化して伝えられることも大切です。そのためにも、ご本人が自分の課題を解決しようという意欲を持てるよう働きかけていくことも大切にしています。

最後に、読者へのメッセージをお聞かせください。

千村浩院長 代官山やまびこクリニック6

「ADHDですよ」などと診断名をお伝えすると、納得できない表情をされる方がいらっしゃる一方で、診断がついたことでホッとされるご本人やご家族も多いです。発達障害があるからそれ以上の成長が望めないわけではなく、特にお子さんの場合は適切な治療やケア、周囲の理解やサポートがあれば、ほとんどの子が自分の力を伸ばしていくことを望めることを知っていただきたいですね。これからも、地域で発達障害がある人たちのサポートに携わっている方々や保健所・児童相談所などの行政機関、学校などの教育機関と連携し、医療の枠を超えた多様な活動を通じて、発達障害がある方そのとご家族の幸せに貢献していきたいと思っています。

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