千村 浩 院長の独自取材記事
代官山やまびこクリニック
(渋谷区/代官山駅)
最終更新日:2024/07/19
代官山、恵比寿、渋谷という都心の各駅から徒歩圏内とアクセスの良い場所にある「代官山やまびこクリニック」。それでいて周囲は落ち着いていて静かな地域で、初めての患者も通いやすい雰囲気だ。入り口には「やまびこ図書館」と名づけられた図書コーナーがあり、待合室は木のベンチと、足を運び入れただけで心落ち着く。院長の千村浩先生は臨床に携わる前は、厚生労働省で保健医療行政に従事。「子どもの持つ育つ力を信じて、親子それぞれに寄り添う診療を提供したい」と話す。思春期の悩める子どもたちがさらに通いやすいよう、また、小児期から思春期への子どもの成長に寄り添えるよう、2024年からは「児童・思春期精神科」を明確に打ち出した。クリニックで行っている診療や、その理念についてさまざまな話を聞いた。
(取材日2024年3月25日)
児童精神科から児童・思春期精神科へ
どのような方からご相談を受けていますか?
東京都内だけでなく、近県からもご来院いただいています。他の病院に相談してみたものの、別の医師の話を聞きたいと来院される方もいらっしゃいますね。相談内容としては幼稚園、保育園や学校、職場での集団生活や家での生活での困り事が中心です。これまで「児童精神科」を標榜して診療してきたのですが、実際には小児に加えて、思春期から20歳過ぎの方まで、幅広く来院されています。それを踏まえて、2024年から「児童・思春期精神科」と改めることにしました。お子さんの家庭環境にも配慮し、必要に応じて親御さんのケアを行い、学校や職場で必要なサポートについてもお手伝いをしています。問題を抱えがちなお子さんの子育てに悩み、ご自身も精神的につらくなってしまう親御さんもいらっしゃるので、親子ともに受診いただくことも可能です。
治療はどのように行われているのでしょう。
お子さんやご家族の話をお聞きして、学校やご自宅での環境を整えることや、必要に応じて服薬についてアドバイスします。薬物療法では漢方薬も用います。薬を使いたくないという方には、他の方法をご提案することもあります。私は、服薬だけが選択肢ではなく、親や教師が対応を変えるなど、環境を整えること、子どもの主体性を引き出して、成長を促していくことが大切だと考えています。状況に応じて学校の先生にもご相談することもあります。お子さんとご家族のお話を丁寧に聞いて、お一人おひとりに寄り添ったプランを提案するためには、充分な時間をかけることが大事になります。そのため、診察はご予約いただくようお願いしており、初診は40分、再診も10〜20分かけて行います。
年齢によって相談内容は変わってきますか?
年齢によって抱えがちな問題は少しずつ違ってきます。幼児期から小学校低学年頃までは、静かに座っていられない、かんしゃくを起こす、忘れ物が多いといった生来持っている特性、不安、恐怖感、不登校などの悩みが多いのですが、小学校の高学年から中学、高校ぐらいになると、親子関係や友達、先生との関係などさまざまな意味での人間関係の悩み、気力がない、体調不良、不安や不眠などやこれらによる不登校などの悩みが多くなります。悩みや不満を言語化するのが苦手なお子さんもいます。そのようなお子さんの声に耳を傾けることが大切です。
自分の課題を言語化して理解する
子ども自身に気づかせるということでしょうか。
子どもたちはいろいろなことを感じ、思い、そして主張します。私は子どもの言葉に耳を傾け、子どもにとっての真実を理解することを通じて信頼関係を築くことに心がけています。お母さんの中にはお子さんを大切に思うあまり、不安が募ったり、怒りや悲しみ、罪悪感から、お母さんご自身の心と身体の健康を害してしまったり、お子さんの成長の妨げになってしまう場合もあります。お子さんの成長とともにお母さんの健康や幸せのお手伝いもできるよう、お母さんの訴えに耳を傾け、医療の枠を越えてお子さんやお母さんをサポートするさまざまなプログラムなどもご紹介しています。
診療で大事にしていることは何ですか?
お子さんとお母さんやご家族の声に耳を傾けることを心がけています。さまざまな課題の改善のためには、患者さんご自身が、自分の抱えている課題を言語化して理解できることが大切です。私は子どもが自分で理解した課題を解決しようと意欲を持つことを援助することが大切だと考えています。私の恩師は「子どもは成長する。その成長を見守っていくのが楽しいんだ」とよく話されていました。子どもたちは頼もしいなと思うことが多いんですよ。私が子どもに勉強させてもらっている気がします。
クリニックの特徴として他にどういったことがありますか?
小さなお子さんから思春期、青年期の人まで診療しています。お母さん、お父さんご自身も、お子さんとご一緒に診察をお受けいただくこともできます。初診は40分、再診は20分、10分と十分な時間を取ってしっかりお話をお聞きすること、診察をお待ちいただくことがないよう予約をお願いしています。また、代官山、渋谷、恵比寿の3駅から徒歩圏内というアクセスの良い場所にありながら、静かで落ち着いた環境にあり、安心して受診していただけます。
多様な人たちと広く連携し、子どもの成長を促す
先生は公務員として医療や福祉に携わっていらっしゃったとか。なぜクリニックを開業されたのですか?
医学部を卒業後、現在の厚生労働省に入省し、保健医療福祉行政に携わってきました。医学部在学中から精神科領域には興味を持っており、公務員としても、精神保健福祉法の制定や精神障害者保健福祉手帳制度の創設を担当するなど、精神科とは深い関わりを持ってきました。身近でも不登校や虐待など子どもたちを取り巻く社会問題にふれる機会が増え、子どもたちの心の問題を診る臨床に携わりたいという思いを強くしました。現役の公務員を退いてから、改めて学びを再開し、精神科病院やクリニックで精神科の臨床を勉強してから、当院を開業しました。公務員として国や県、国際機関に勤務した多様な経験から、患者さまやご家族に幅広い視野からさまざまなアドバイスを差し上げることができると考えています。
休日の息抜きや気分転換の方法があれば教えてください。
体を動かすのが好きで、ゴルフや、ランニングを楽しんでいます。ゴルフは技術の向上、ランニングは走力の強化をめざしてトレーニングを続けています。春から秋までトレイルランニングにも挑戦し始めました。またクラシック音楽やジャズが好きで、どちらも聴くだけでなく、演奏もします。子どもの頃に習っていたヴァイオリンを再開し、今も楽しく続けています。何事も凝るタイプで、できないことに夢中になるタイプです。いろいろなジャンルの本を読むのも好きです。
最後に今後の展望をお聞かせください。
クリニックの隣のやまびこ村でのお子さんの「好き」「楽しい」を見つけるワークショップや講演会、お母さんの「いやし」「学び」「つながり」を育むセミナーなどを一層充実させたいと考えています。また、社会の中で子どもたちの育ちを応援するさまざまな活動をしている人たち、地域の保健や福祉関係機関など、あるいは学校などとの連携を模索していきたいと考えています。そして、医療の枠にとらわれない活動を通じて子どもたちとご家族の幸せに貢献したいと考えています。