新型コロナウイルス感染症後も不安
うつ病、不眠症、パニック障害
鶴見メンタルクリニック
(横浜市鶴見区/鶴見駅)
最終更新日:2025/04/18


- 保険診療
新型コロナウイルス感染症流行を経て、心療内科、精神科を受診する人が増加傾向だという。新型コロナウイルスに罹患後、症状が改善せず続くことで不安を抱え、うつ病やパニック障害などを発症するケースから、直近ではパンデミック後の環境変化による適応障害発症へと主軸が移行していると「鶴見メンタルクリニック」の小川雄史院長は話す。移り変わりが激しい社会情勢の影響などで、パニック障害やうつ病、不眠症を発症した場合、どのように対処したら良いのだろうか。早稲田大学理工学部で工学を学び、鉄道会社の技術系総合職に従事した後、精神科医となった異色の経験を持つ小川院長。多くの「引き出し」の中から一人ひとりに適した治療法を導き出す小川院長に、うつ病、不眠症、パニック障害の概要と治療法、日々の生活に対する注意点などを聞いた。
(取材日2025年1月9日)
目次
新型コロナウイルス流行などによる社会情勢の変化は、うつ病、不眠症、パニック障害の引き金にも
- Q新型コロナウイルス流行以降心身の不調の相談が増えているとか。
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A
▲在宅勤務やマスクの着用などの影響で増えている疾患もあるという
新型コロナウイルス感染症の症状に長く悩まされ、対応する外来を受診するけれども改善せず、二次的にうつ状態に至る人は多くいました。在宅勤務で過覚醒状態に陥って不眠症になる人や、パニック障害の発作で救急科外来に運ばれる人も増えたとか。流行の収束後には、再び出社を求められたビジネスパーソンの適応障害が増加傾向です。新型コロナウイルス感染症流行に限らず、社会情勢が大きく変化することで、精神の不調を来すケースは散見されます。咳が止まらない、長く倦怠感が続くなど、感染症状自体を精神科で治療することはできませんが、メンタルの不調に対してはフォローできます。
- Qパニック障害とはどのような病気なのですか?
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A
▲気になることがあれば、気軽に受診してほしいと話す院長
動悸や心拍数の増加、発汗や震え、息切れや息苦しさのほか、冷感・熱感、めまいや、現実感の喪失、自身を外から眺めているような離人感など、症状は多岐にわたります。周囲の視線が極度に怖い、人前で食事ができないなどの基準に照らして診断します。高温や高湿度が発作を誘発するとされ、環境変化も重なる春先は特に要注意です。地球温暖化で気温の高い時期が長くなっていることも懸念されます。カフェインや二酸化炭素の影響も考えられ、マスク着用も悪化因子となる可能性があります。カフェイン類やアルコール、炭酸飲料を控え、部屋を換気すること。規則正しい生活と十分な睡眠、ストレス解消などで自律神経を安定させることが大切です。
- Qうつ病へのアプローチを教えてください。
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A
▲適切な運動をすることで、良い方向へ向かいやすい
厚生労働省も健康増進のため1日8000歩以上歩くことを推奨していますが、歩くことで血圧と心拍数を上げ脳の血流が良くなれば、うつ病など精神疾患の好転が期待できます。「喉が渇いた」「花がきれい」など自然と意識がほかへ向き、悩みからの解放も見込めます。高齢者の場合は、実は認知症ということもあるので、慎重な診断も不可欠に。患者さんには物事を違う角度から考えることを勧め、ご家族には、患者さんが楽しめない自分を意識したり責めたりしないよう、旅行などに連れ出さないことをお願いしています。プラシーボも重要なので「この先生の薬なら」と思われるような患者さんとの信頼の構築は、精神科医としての勝負どころです。
- Q不眠症に対してはどのような治療方法があるのですか?
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A
▲睡眠指導も行っている
当院では、薬の処方以外に睡眠指導を行っています。睡眠の質は、ベッドで過ごす総就床時間と眠っている総睡眠時間の割合を表す睡眠効率で算出し、数値が高いほど熟睡感があります。寝床でスマホやテレビを見るなど寝る以外の作業はしないことが熟睡には大切です。また、年齢に伴い人間に必要な睡眠時間は少なくなるため、例えば45歳なら6時間半ほどの睡眠で十分になってきますので、それに合わせて、起きる時間と寝る時間をセットする必要がありますね。昼寝は30分以内、寝る前はコーヒーだけでなく緑茶のカフェインも摂取しないよう注意、体を温めると眠れなくなるので、寝る直前ならぬるめのお風呂かシャワーにするなどの指導を行います。
- Q休職や休養が必要な場合、お金の不安がつきまといそうです。
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A
▲一人ひとりに合わせた解決策を提案している
経済的な負担が軽くなる制度を紹介しています。意外と知られていないのが傷病手当金です。公的医療保険の被保険者が休職する際、条件を満たせば直近の給与の3分の2ほどの金額を約1年半受けられるので、保険組合などに確認をと伝えています。困り事の解決策を患者さんに提示することは、安心して休職してもらうために大切なことなのです。復職のタイミングでは、より良い人間関係のためのスキルの一つ「アサーション」に関する本を読むことを勧めたり、上司と面談したり、必要に合わせて解決策を提案しています。また、子育てでメンタルに不調を来しているお母さんには「診断書を書くので保育園に預けてください」とのアドバイスもします。