大島 美穂子 院長の独自取材記事
おおしま小児科アレルギー科
(豊田市/豊田市駅)
最終更新日:2024/11/29

豊田市駅東口から徒歩5分。豊田参合館の隣のビル3階に「おおしま小児科アレルギー科」はある。院長の大島美穂子先生は、加茂病院(現・豊田厚生病院)、トヨタ記念病院での勤務を経て、名古屋大学大学院で医学博士号を取得。その後再びトヨタ記念病院に戻り、10年以上アレルギー疾患の診療経験を積んだ。日本小児科学会小児科専門医および日本アレルギー学会アレルギー専門医としてキャリアを重ねる一方で、愛知学泉大学の管理栄養士専攻教授を務めた経験も持つ。2020年4月に同院を開業してからは、アレルギー疾患の治療や一般小児科診療、予防接種、乳児健診、さらに食物アレルギー検査や食事指導にも注力している。現在も週に1度トヨタ記念病院で診療を行う大島院長に、診療にかける思いを語ってもらった。
(取材日2021年12月22日/情報更新日2024年10月30日)
食物アレルギーの検査、食事指導に注力
開業に至るまでの経緯をお聞かせください。

小児科を専門にすることとなったのは、初期研修を受けた加茂病院の小児科の雰囲気がとても良かったからです。その後、名古屋大学大学院とあいち小児保健医療総合センターで食物アレルギーの診療に従事。その後、大学で教える機会もいただき、豊田市の学校給食の調査を行いました。そのおかげで豊田市の給食に詳しくなり、食物アレルギーを持つお子さんの給食に関する相談にも専門的に対応できるようになりました。その矢先、この場所で小児科を開業されていた私の恩師である岩瀬勝彦先生が引退されることになったんです。この場所を引き継ぎ、私が生まれ育った豊田市の子どもたちに大学や病院で学んだ知識を提供したいと考え、開業に至りました。
どのような患者さんが来られていますか?
小児の患者さんが中心ですが、アレルギー科に関しては、年齢制限を設けておらず、0歳児から成人の方まで幅広い年齢層の方が日進市やみよし市など豊田市外からもいらっしゃっています。小児科では、風邪や胃腸炎などの一般診療のほかにも乳児健診や予防接種も受けつけています。地域のかかりつけ医として、そしてアレルギーの専門的な医療を受けられるクリニックとして身近な存在でありたいと思っています。心配なことがあればすぐに来ていただけるアクセスの良さも当院の強みだと思っています。
先生のご専門は食物アレルギーだそうですね。

離乳食を食べた後に肌が赤くなったなど、お子さんの食物アレルギーを心配して受診される親御さんは少なくありません。診療では、まず親御さんからお話を伺い、次に「食物経口負荷試験」を行います。これは、アレルギーの原因と確定している食べ物、もしくは疑いのある食べ物を少量ずつ摂取して反応を観察するというもので、食物アレルギーかどうかを診断する上で重要な検査です。食物アレルギーと診断された場合、当院ではアレルゲンの食べ物を完全には排除せず、症状が出ない範囲内で食べるという指導を行っており、その際も食物経口負荷試験でどのくらいの摂取量なら「安全な範囲」なのかを確認します。
摂取可能な量を確認後、食事指導を行うのですね。
重症の患者さんですと、0.1g単位で量を調整するので、食事をつくるお母さんはかなり大変です。しかし、「ここまでは食べても大丈夫」という線引きができる点で、検査や食事指導の意義は大きいと思っています。検査はこれまで私が週に4日行い、1日に2人の検査が精いっぱいでしたが、患者さんの増加に伴い、去年から今年にかけて食物経口負荷試験担当の非常勤医を2人増員。現在は月・木曜の午前中に非常勤の先生と一緒に、1日あたり最大6人の検査をしています。火・金曜の午前はこれまでどおり私が2人まで行っています。
初診から1ヵ月以内に食物経口負荷試験を実施
より多くの方がスムーズに検査を受けられるようになったのですね。

食物経口負荷試験の予約は数ヵ月先となる医療機関が多いのですが、私は、食物アレルギーはできるだけ早期の段階で介入し重症化を防いでいくことが何より重要だと考えています。なので、もし食物アレルギーが疑われる症状が見られた場合は、できるだけ早く専門の医療機関を受診してください。当院では、初診から1ヵ月以内に初回の食物経口負荷試験を実施するようにしています。検査を担当する2人の非常勤の先生たちも、私と同様アレルギーに関して高い専門性と知識を持っており、安心してお任せしています。「食物アレルギーかも」と思ったら、ぜひ早めにご相談ください。
そのほかのアレルギーではどのような治療をしていますか?
アトピー性皮膚炎に関しては、私が診られる範囲で診させてもらっています。症状に合わせてステロイドの塗り薬も処方していますが、皮膚のトラブルが多い患者さんの場合は、専門的な治療ができる皮膚科の先生を紹介するようにしています。最近の傾向としては、一時期に比べてステロイドの塗り薬に対して抵抗感を持つお母さんが減ってきたように感じますので、引き続き皆さんに正しい知識を提供していきたいですね。また、花粉症やダニアレルギーについては、舌下免疫療法をお勧めしています。舌下免疫療法では副反応が起こることもありますが、アレルギー症状の治療経験が豊富な当院では、安心して導入していただけると思います。
他院との連携について伺います。

近隣の小児科からアレルギーの検査や治療を希望する患者さんをご紹介いただくこともあります。また、アナフィラキシーなどのリスクが高い場合は、トヨタ記念病院や豊田厚生病院と連携し、適切にご紹介させていただく体制になっています。トヨタ記念病院では現在も私が定期的に診察をしているので、私が予約して、患者さんに直接行っていただくことも可能です。
診療で心がけていることは?
お子さんには「病院は怖くない」と思ってもらいたいので、スタッフも含めできるだけ笑顔で患者さんと接するように心がけています。そして、お母さん方にとっても相談しやすく、話しやすい医師でありたいですね。お子さんのことに関して、お母さんたちはいろいろな情報に惑わされることもあると思います。不安なことは気負わずに相談ください。当院には小児科の経験のある看護師が多く、事務スタッフも皆、患者さんに優しく対応してくれています。子育て経験者も多く、患者さんへの接し方もそれぞれの仕事も安心して任せることができるのでありがたいですね。
早い段階での受診を呼びかけていきたい
感染症対策にも注力されていますね。

新型コロナウイルスが流行している中での開業だったこともあり、感染症対策には力を入れています。発熱、咳、下痢症状など感染症の疑いがある患者さんとそうでない患者さんの接触をできるだけ避けられるよう、待合スペースを2つ設けました。診療時間も13時から15時までは、感染症の方が来院できない時間帯として区切っています。空間と時間の両方を分離することで、安心して通院していただけるようにしています。
アレルギー治療を行う際の注意点があれば教えてください。
以前、体調不良で受診した別の医療機関でアレルギー検査をしたら、いろいろな食品の数値がプラスになってしまい、何を食べていいかわからなくなったという患者さんを担当したのですが、診察をすると食べられることが判明したことがあります。30種類以上を網羅的に調べるアレルギーテストは手軽ですが、食べられるものが陽性と出ることも多く、検査値の正しい解釈が必要です。結果をすべてうのみにするのではなく、専門の医師が総合的に判断した説明をしっかりと聞き、正しく理解することが重要です。
休日はどのように過ごされていますか?

休日は日曜と祝日だけなのですが、家事をしたり犬の散歩をしたりして過ごしています。ゴールデン・レトリーバーを飼っていて、クリニックのロゴにもなっています。小さなお子さんにクリニック名を覚えてもらえなくても、ワンちゃんのクリニックだと覚えてもらえたらうれしいですね。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。
食物アレルギーもアトピー性皮膚炎も、乳幼児の頃や症状が出てすぐのなるべく早い段階から治療を始めれば、予後が良くなる可能性が高いと考えられています。ですから、お子さんが何か食べた後にかゆがっているなど、ちょっとした皮膚のトラブルに気づいたら、軽い症状のうちに相談に来ていただきたいです。当院は、不安な思いを抱えながら頑張って受診してくださった親御さんに寄り添うことを心がけ診療しています。インターネットなどの不確かな情報で不安に陥ることがないように、医師の適切な診療を受けてほしいです。