鬮目 美穂子 院長の独自取材記事
いわくら内科・呼吸器内科クリニック
(岩倉市/岩倉駅)
最終更新日:2023/01/04

地域の生活道路に面し、広い駐車場を備える至便な環境にある「いわくら内科・呼吸器内科クリニック」。院長の鬮目(くじめ)美穂子先生は岩倉生まれで「なじみ深い地域に、医療で貢献したい」との思いから開業を決意した、優しさにあふれるドクターだ。同院では内科・呼吸器内科・アレルギー科を標榜し、鬮目院長が専門とする呼吸器内科では、専門性の高い検査にも対応。勤務医時代には呼吸器疾患の診療に加えて、人工呼吸器管理の必要な患者に対するケアや、多診療科・多職種との連携が必要な緩和ケアにも従事し、現在の診療でもその経験が役立っているそうだ。「患者さんの人生に寄り添う診療を実践していきたいです」とほほ笑む鬮目院長に、診療に対する思いを語ってもらった。
(更新日2021年3月23日)
呼吸器内科の専門家としてなじみ深い地域に医療で貢献
開業に至ったきっかけをお聞かせください。

私自身の生活環境の変化が、きっかけの一つになりました。結婚を機に、非常勤で働くスタイルに切り替えたんです。病院や健診センター、地域のクリニックなど、さまざまな医療機関に勤務することになり、診療する患者さんの年齢層も子どもからご高齢の方まで、非常に多岐にわたるようになりました。中でも、特にクリニックでの診療に携わった影響は大きく、私の中で「町のお医者さん」がとても身近に感じられるようになりました。医療を行う場が違えど、目の前の患者さんを診る点においては変わりないのですが、総合病院では患者さんの「病状の1つの瞬間」を診ることが多く、患者さんの退院後の状況はわかりづらいのが常でした。しかし町のお医者さんは文字どおり地域に根差して医療を行う存在で、患者さんの人生に寄り添うことができるのだと気づいたんです。そして、自分もそんな医療を実践したいと思い、開業を決めました。
クリニックを立ち上げるにあたり、どのような点にこだわられましたか?
「地域医療に貢献したい」という思いがあったので、開業の地は迷うことなく出身の岩倉を選びました。幸運にも近くに知り合いの医師の先生が多く、開業にあたり幾度となく助けてくださりました。来院する患者さんに少しでもリラックスしてもらえるような空間にしたいと思い、院内は待合室から診察室まですべてバリアフリー設計の、明るく開放的な造りにしました。待合室に暖炉の演出をしたのも、待っている時間のストレスを少しでも軽減できればと思ったからです。また呼吸器内科に関しては、総合病院などで行う検査と同様の設備を導入しました。他にも、生活習慣病の一つである糖尿病の患者さんの診療に役立てたいと、HbA1cが15分程度で検査できる設備も備えています。キッズスペースも用意していますので、小さなお子さんをお持ちの方も気軽に来院してくださるとうれしいです。
現在はどのような患者さんを診られているのですか?

想定以上に咳の症状で悩んでいる患者さんが多い印象を受けていますね。一番多いのは呼吸器内科の患者さんで、長引く咳やぜいぜいといった呼吸の荒い音がする「喘鳴(ぜんめい)」、動くと息苦しいなどの主訴で来院される方が7~8割で、そのほかに高血圧・高脂血症などの生活習慣病や糖尿病など内科の患者さんや、アトピー性皮膚炎などのアレルギー性疾患の患者さんもいらっしゃいます。エリア的には、自転車で来院される近隣の方から、岩倉市・一宮市・小牧市・江南市などから車で来院される方も多いです。
地域医療として患者の生活に寄り添うクリニック
院長が医師を志したきっかけや、これまでのご研鑽についてもお聞かせください。

母が看護師だったこともあり、子どもの頃から医療が身近な存在で、自然と医学部進学を決めていました。呼吸器内科を専門にしようと決めたのは、気管支炎や喘息などのアレルギー性疾患、悪性腫瘍などの病気の多様さに加えて、病気によって日常生活において呼吸管理が必要な人なども診ていく必要があり、「幅広い内科的診療ができるのでは」と思ったからです。その後、総合病院で研鑽を積むとともに、名古屋大学大学院医学研究科で研究にも従事しました。大学院修了後は一般診療に加えて、呼吸器疾患の患者さんがスムーズに転院していくために、病院同士の橋渡し役を担ったり、日本国内では珍しくなりつつあった結核の診療にも携わったりする機会もありました。病院という大きな組織にいたからこそ、本当にさまざまな症例、患者さんと向き合うことができたと思っています。
当時の経験が、現在の診療で生かされる場面もあるのではないでしょうか?
そうですね、特に印象に残っているのは、がん患者向けの診療科目横断で他科の医師や薬剤師・臨床心理士など他職種のメンバーで構成された「緩和ケアチーム」の一員として診療に関わっていた経験です。この時期には、緩和ケアチームの他に、人工呼吸器の必要な患者さんに対して肺炎を起こさないためのケアや「何とか人工呼吸器が外せないか」を検討するなど、さまざまな面からアプローチする「呼吸ケアチーム」でも経験を積むことができ非常に有意義でした。病気を治すだけでなく、患者さんの日常生活や、それこそ人生において医師としてできることはないかを深く考える機会になりましたし、当院でも当時の経験を生かして、往診や訪問診療に応じています。
患者さんを診療する際に心がけていることを教えてください。

患者さんとのコミュニケーションを大切にしています。中には、なかなかご自身のことをうまく話せない患者さんもいらっしゃいますが、そのような方のお話もしっかり受け止められるようにありたいと思います。地域にお住まいの方が、気軽に相談しに足を運べるような、やわらかさのある雰囲気づくりに努めています。「受診の際はお薬手帳を持参ください」というクリニックも多いですが、当院ではお薬手帳がなくても、患者さんご自身に今までの病気の経緯を伺いながら診療を行いますので、初診の時でも安心してご来院ください。また、別の内科でかかりつけ医をお持ちの方でも、呼吸器内科の検査だけ当院で受診していただくことも可能です。
他科のクリニックとの連携、往診や健康診断も視野に
呼吸器内科を受診してほしいタイミング、受診の目安となるポイントはありますか?
咳が1ヵ月以上続いたり、喘鳴が続いたりしている場合には、一度呼吸器内科を受診することをお勧めします。一般的には、風邪をひいて喉の痛みや鼻水の症状がある時は耳鼻咽喉科、喉に痛みがある時は呼吸器内科の受診が望ましいといわれています。ただ、近くに呼吸器内科がない場合は、内科でも大丈夫ですよ。治療を続けても症状が快方に向かわない場合は、医師のほうから他科のクリニック受診を勧められると思います。何かしらの不調を感じたら、まずは受診して医師の診察を受けていただくのが良いと思います。
新たな環境で医療にまい進する院長にとって、今後の目標は何でしょうか?

予防医療など、地域に根差したクリニックだからこそ柔軟に対応できる医療の充実を図っていきたいと思っています。当院内で健康診断を受診していただけるような準備も整いましたので、より患者さんの健康をトータルにサポートしていけると考えていますし、大学院時代からお世話になっている先生方が近くに多くいらっしゃいますので、そのような他科の先生方ともクリニック間同士で連携していきたいと思っています。また、緩和ケアや人工呼吸器管理を伴う患者さんのケアの経験を生かして、既に在宅医療を受けられている患者さんに対する往診なども積極的に関わっていきたいと思います。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

外来診療に限らず、往診や訪問診療にも対応し、私自身が心惹かれた「患者さんに寄り添う診療」を、自分なりに形にしていきたいと思っています。また、患者さん自身が「ちょっとしたこと」と思っていても、実際には大きな病気の兆候である可能性もあります。呼吸器に関するお悩みはもちろんですが、些細なことでもどうぞご相談くださいね。何かあってもなくても気軽に足を運んでいただける、そして地域の皆さんとともに歩むパートナー的存在である、そんなクリニックをめざしたいと思っています。