低年齢の急な身長の伸びは要注意
気づいたらすぐに小児科の受診を
医療法人 吉村こどもクリニック
(北九州市門司区/門司駅)
最終更新日:2022/09/29
- 保険診療
第二次性徴期に見られる身長の伸び、乳房の膨らみ、精巣の発達などが、通常より早い小学校低学年より前に始まる疾患を「思春期早発症」という。男女ともに原因がわからない「特発性」と呼ばれるケースが多いが、中には脳や卵巣、精巣、副腎の腫瘍が起因となっていることも。また低出生体重児で生まれた子どもは、思春期早発症になりやすい傾向も見られるという。「小さく生まれたお子さんが大きく育ったと親御さんはつい喜んでしまうのですが、放置すると身長が低い状態で止まってしまう恐れもあります」と警鐘を鳴らすのは「吉村こどもクリニック」の吉村和子先生だ。低身長などの内分泌に関わる疾患を専門的に学んできた吉村院長に、思春期早発症の症状やその治療方法、日常生活で取り入れておきたいツールなどについて話を聞いた。
(取材日2022年3月16日)
目次
本人が気づきにくい思春期早発症。低年齢での急な身長の伸びや、第二次性徴の兆候があれば早急に小児科へ
- Q「思春期早発症」とは、どのような疾患なのでしょうか?
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A
女の子は7歳半より前に胸が膨らむ、男の子は9歳前に精巣が発達する、男女ともに急激に身長が伸びるなど、小学校低学年より前の時期に第二次性徴期の兆候が見られるようになるのが思春期早発症の症状です。本人も知識がなく、親御さんも目が届きにくい部分のことなのでなかなか気づかれにくいのですが、学校の健診で「急に身長が伸びた」と指摘されて疾患がわかるケースが多いかもしれません。学校では、横軸を年齢、縦軸を身長・体重として、成長の速度や変化を視覚的に捉えられる「成長曲線」というグラフを使用しています。「昨年までは平均的な曲線にいたけれど今年は急に変わった」などの変化があれば思春期早発症を疑うことがあります。
- Q症状に気づかず放置してしまうと、将来的なリスクはありますか?
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A
まず身長に関しては、平均よりも低い状態でとまってしまいます。低学年時にぐんと伸びて、それ以降は伸びなくなるのです。またお友達にはない変化が起きるため、お子さんの精神的な負担になることも考えられるでしょう。特に注意したいのは、原因に脳腫瘍などの器質的疾患が考えられる場合です。思春期早発症の多くは特発性といって原因がわからないものが多いのですが、まれに腫瘍が原因になっていることもあります。検査の結果によっては手術の必要なども生じますので、やはり早めの相談が必須です。この器質的なものによる思春期早発症は、女の子よりも男の子に多く見られます。
- Q受診のタイミング、治療の流れについて教えてください。
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A
お子さんの変化に気づいた、もしくは学校から指摘された場合は、まずかかりつけの小児科に相談しましょう。小児科で血液検査などを行い、さらに検査が必要だと判断されれば、大学病院などでMRI、超音波検査などを行って原因を精査していきます。腫瘍が見つかれば手術になる可能性もありますが、特発性の場合は思春期抑制療法を4週に1回、クリニックもしくは病院で注射します。女の子は12歳くらい、男の子は13歳くらいまで治療を続けます。治療終了の目安は骨の成長の様子によりますが、加えて同級生との身長差なども加味しながら調整を行い、その子にとってなるべくベストな状態になるよう工夫を重ねていきます。
- Q気をつけたいケースなどはありますか?
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A
まずお子さんの成長が一般的であるかを気にかけておくと、変化にも気づきやすいのではないでしょうか。また2500g未満の低出生体重児であったお子さんには、思春期早発症が発症しやすい傾向もあります。低学年時に身長が伸びるとご家族はうれしくなると思いますが、「小さく生まれたけど身長が伸びて良かった」と安易に考えず、まずは小児科に相談してほしいと思います。思春期早発症は、通常小学校高学年から始まる第二次性徴期が前倒しになってしまい、ほかのお子さんよりもかなり早めに成長が止まってしまう疾患。特に身長差は大きくなります。お子さんの将来のためにも、疑問に思うことなどがあればぜひ早めの行動を心がけてください。
- Q先生は内分泌疾患について専門的に学ばれてきたそうですね。
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A
大学病院にいた頃は、低体重で生まれたお子さんの発育を新生児科と連携して診ていたこともあります。思春期早発症は第二次性徴期が前倒しで始まる疾患ですが、逆に第二次性徴期になってもなかなか声変わりしない、生理が来ないといった思春期遅発症のお子さんもいます。こちらは男性らしさ、女性らしさが発現しにくく、身長が高校生になっても伸び続けるといった傾向も見られます。どちらの疾患であれ、お子さんと同じくらいに親御さんが不安になるのは当然のことですし、症状や感じ方は人それぞれです。学校で嫌な思いをしなかったか、生活で困ったことはないかなどしっかり診察時にフォローしていくので、なんでも相談してほしいと思います。