血糖値が高い、食べすぎ、運動不足は生活の見直しを
糖尿病の治療
鎮目記念クリニック
(渋谷区/新宿駅)
最終更新日:2022/01/11
- 保険診療
罹患者やその予備軍も合わせるとその数2000万人以上に上るといわれている糖尿病。今や国民病といっても過言ではないだろう。糖尿病は単に血糖値が高いというだけでなく、長い間、高血糖の状態が続くとさまざまな疾患を引き起こす。腎不全や糖尿病網膜症、足の壊疽(えそ)といった疾患をはじめ、脳梗塞や心筋梗塞などその影響は全身に及ぶという。「鎮目記念クリニック」の院長で糖尿病を専門とする鎮目学(しずめ・まなぶ)先生は、糖尿病の怖さをあらためて認識してほしいと強く訴える。血糖値が高いと言われたらどうすべきか、実際、どのように治療していくのかなど予防方法も含めて話を聞いた。
(取材日2021年10月27日)
目次
糖尿病は進行するとさまざまな合併症を引き起こす怖い病気
- Q健診で血糖値が高いと言われたらどうすればよいですか?
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A
健診での血糖値検査は空腹時血糖値ですからそれが高いとなるとすでに糖尿病になっている可能性が高いと考えられます。まずは糖尿病を専門的に診られる病院、クリニックを受診し、どの程度高いのか、なぜ高いのかなど専門的に診察・検査してもらうとともに、それが続くとどうなるのか、今後どのような生活を送ればいいのかについてもよく話を聞いて理解することが大切です。糖尿病は食べすぎや運動不足など生活習慣に原因があることが多いため、それらに対する意識を変えることが非常に重要です。気になる数値をコントロールするために食事の内容を見直すなど、日々の生活習慣のスイッチを切り替えることを意識してください。
- Q糖尿病の治療はどのように進めていくのですか?
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A
食事管理と運動指導が基本です。食事管理には本人の意識が最も重要ですが、ご家族の協力も欠かせません。栄養士の指導で食事内容を見直しますが、患者さんと医師、ご家族が現状の認識を一致させることが前提です。その上で「適正なカロリーを摂取し、その糖を有効活用する」という考え方を丁寧に説明します。合わせて一日の中でも血糖値が上がりやすい夕食後1時間たった頃に、ウォーキングなどの運動がお勧めです。糖尿病治療では1~2ヵ月に1回の頻度で血液検査を行い、血糖値の過去1~2ヵ月の平均値に相当するヘモグロビンA1cの推移を観察します。食事管理と運動指導で成果がない場合はその方に合った最低限の薬から処方を開始します。
- Q糖尿病の薬にはどのようなものがありますか?
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A
大きく分けて血糖値を下げる目的の内服薬と体の外からインスリンを補填するインスリン注射があります。最近では内服薬の進化が著しく、インスリン分泌を促す薬やインスリンの効きを高めるための薬に加え、血糖上昇時にインスリン分泌を促す薬や糖を尿から排泄するための薬など、従来と異なる機序で血糖を低下させる目的の薬も出ています。配合薬も複数あり血糖コントロールの状態や体格、体重、ほかの疾患の有無など総合的に判断して適切な薬を使い分けます。体質や遺伝的要素で発症時からインスリン治療が必要な場合もありますが、生活習慣が主原因で発症した糖尿病では内服薬の進化によりインスリン注射が必要になる例は少しずつ減っています。
- Q進行するとどうなるのでしょうか。
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A
激しい喉の渇き、1日に20~30回の多尿、脱水症状、急激に体重が減少するほどになると入院治療も必要となります。また、血糖コントロールが悪い状態が続くと体のさまざまな部位に合併症が起きます。例えば糖尿病網膜症や脳梗塞、心筋梗塞、腎不全、歯周病、足の壊疽などです。体の免疫力が低下するため、さまざまなウイルス、細菌などにも感染しやすく肺炎や膀胱炎、場合によっては敗血症など生命に危険を及ぼす感染症のリスクも高まります。血液循環の悪化で皮膚の再生力も弱まり傷が治りにくくもなります。そのためほかの疾患で手術が必要となった場合、血糖値が改善されないと手術ができないなど、ほかの疾患の治療にも影響が出ます。
- Q予防のためにはどんなことに注意すればよいですか?
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A
定期的に健康診断を受けて血糖値はじめ自身の体の状態を把握することが大切です。また毎日の食事を意識すること。塩分を控えて栄養バランスの取れた食事を取るようにしましょう。運動については忙しくて時間が取れないという人も多いかもしれません。ですが毎日の通勤時に少し意識するだけでもいいですね。例えば漫然と歩くのでなく、少し早歩きしたり姿勢を良くしたり歩幅を少し広げたりというように工夫してみましょう。毎日決まった時間に体重計に乗って体重をチェックすることも大切です。ご自身の意識のスイッチを切り替え、生活習慣を見直すことが血糖値改善への第一歩となります。