伊藤 久美子 院長、野口 哲夫 先生、伊藤 俊紀 先生の独自取材記事
はなクリニック
(さいたま市南区/浦和駅)
最終更新日:2024/12/03

小児科と整形外科を併設した「はなクリニック」。伊藤久美子院長が小児科を、久美子院長の父で2024年3月まで同院の院長を務めていた野口哲夫先生と、久美子院長の夫の伊藤俊紀先生が整形外科を担当している。院内はぬくもりある木目を基調にした落ち着きある雰囲気で、車いすやベビーカーでも受診しやすいオールバリアフリー。子どもから高齢者まで、幅広い年齢の患者が訪れる同院の診療について、息の合った様子の久美子院長、野口先生、俊紀先生に話を聞いた。
(取材日2024年9月18日)
家族みんなのかかりつけクリニック
小児科と整形外科が併設されているクリニックは珍しい存在ですね。

【久美子院長】小児科は地域の乳幼児から学童期のお子さんのあらゆる病気を診ています。整形外科にかかるほどではないけれど、ちょっと相談したいという親御さんは多いんですよ。鼻水で受診されたついでに、「少し前から膝が痛いと言っているんですが……」といった感じで、気になっていることをお話ししてくださいます。整形外科にかかる前のワンクッションというんでしょうか。小児科の医師はもともと皮膚や体の痛みなどお子さんに関するご相談はなんでもお受けする存在。そこから痛みが長く続く場合や他に心配な症状があれば、整形外科の受診をお勧めします。当院の待合室は診察順を映し出すモニターだけでテレビを設置していないのですが、これは待っている間にご家族で会話をしてほしいとの思いからです。とはいえ、現在は感染症対策の観点から、できるだけ待ち時間も少なくするよう工夫しているところです。
整形外科の診療ではどのようなことに気をつけていますか?
【野口先生】整形外科でのご相談は、首・肩痛と腰痛が多いです。2階にはリハビリテーションルームも設けていますので、病院で手術を受けた後の機能回復や維持を目的としたリハビリテーションも行えます。エレベーターを設置していますし、廊下も介助しやすいよう横幅も広めにしましたので、車いすの方も利用しやすいと思います。痛みに関しては、できるだけ早く取って差し上げたいと思っています。痛くてつらいと、来院するのも大変だったはず。ですので、来院した時より良い状態でお帰りいただきたいと思っています。当院では神経ブロック注射を積極的に行っています。痛みに関しては、今はさまざまな治療方法がありますから、我慢せず早めにご相談ください。お子さんで気になるのは側湾症。自然治癒するものではなく悪化すると手術が必要になることもありますので、注意深く経過を観察し、進行するようであれば専門の医療機関をご紹介しています。
整形外科は子どもの患者さんも多いのでしょうか。

【俊紀先生】小児科を標榜していることもあり、お子さんも多いですね。小さいお子さんから高齢の方まで、ほぼすべての年代の患者さんを診ています。診療では、お子さんは飽きてしまうので手早く、ご高齢の患者さんはたくさんお話しさせていただくようにしています。説明をする際は、特にわかりやすさを心がけています。例えばお子さんが骨折した時、治るまで動かさないでね、とお話ししますが、ただ動かさないでと言ってもお子さんは理解できませんので、きちんとどうして動かしてはいけないのか、をお話しします。そうすると、ちゃんと気をつけてくれるんですよ。逆にご高齢の方は、リハビリテーションを兼ねて積極的に患部を動かしてほしいとお願いしますが、怖くてなかなか動かせない方が多く、そこが難しいところですね。ですので、患者さんの症状や状況に応じて、こまやかな説明やサポートができるよう努めています。
子どもにもきちんと説明する姿勢
院長の診療におけるポリシーは何ですか?

【久美子院長】子どもを泣かせてまで診察や処置をしたくないと思っています。例えばインフルエンザの検査。あの検査は長い綿棒で鼻の奥をぐりぐりして結構痛いし不快ですよね。中にはトラウマになってしまっているようなお子さんもいて、何を聞いても「お鼻のやつやらない?」としか言わないお子さんもいるんです。どうしても必要なことだから仕方なく行うわけなので、検査する場合には、どうしてしないといけないのかをきちんと説明するように心がけています。「痛くないよ」とだますと二度と信用してくれませんし、無理やり押さえつけて行うのは論外だと思ってます。きちんとできたら、偉かったね、良かったねと褒めます。診察も予防接種もお子さんの負担にならないようになるべく短時間で済ませるように意識しています。
小児科の予防接種についてはどのように対応していますか?
【久美子院長】お子さんの予防接種はスケジュール管理が大変ですよね。予防接種で来院された際「ちょっと鼻水が出ているので診察もお願いします」「先日発熱しましたが今日は下がりました」とおっしゃるお母さんがいますが、予防接種は本来体調が万全な時に受けていただくものです。これは大人も子どもも同じです。予防接種はそれ自体が体に大きな負担をかけます。それでも病気にかからないようにするため、体の中に抗体を作る大切なプロセスとして頑張って受けていただかなくてはなりません。親御さんからすると、お子さんの予防接種のためにお仕事の調整をしたり、タイミングを見計らって来院したり、子どもを連れての外出はそれだけで大変でしょう。私も2人の子の母なのでよくわかります。しかし、少しでも小児科にかかりたいような状況なら見合わせましょう。特に発熱があったら最低1週間、できれば10日~2週間は開けていただきたいです。
整形外科ではどんなことに気をつけて診療をされていますか?

【野口先生】今は同じ疾患でも治療法がいくつもあります。例えば痛みの治療なら、薬や注射や湿布などさまざまな方法があります。それぞれメリットや使い方をご説明して患者さんに選んでもらうようにしています。患者さんによってライフスタイルや好みが違いますからね。
【俊紀先生】中には骨折のように、どうしても痛みを伴う処置もありますが、私もお子さんを泣かせるようなことはしたくないと思っています。私の中では、診察や処置が終わって診察室を出るときに、お子さんに「バイバイ」と声をかけ、お子さんが「バイバイ」と手を振り返してくれたらミッション成功だと思っています。
生活に支障が出始めたら早めに受診を
俊紀先生は骨粗しょう症も専門的に診ておられます。

【俊紀先生】当院では、腰椎と大腿骨で骨密度を測定する機器を導入しています。骨粗しょう症が見逃されて骨折し、その後放置したまま骨が曲がってくっついた、ということは実際に起こっています。骨折しやすいのは、手をついたときの手首、転んでぶつけたときの肩、尻もちをついたときの尾骨と足の付け根の4ヵ所。特に足の付け根は早く手術しないと歩けなくなることも。特に女性は閉経を境に骨密度が低くなりますので、50歳をめどに一度検査を受けてみてください。今は骨粗しょう症治療のための新しい薬もありますし、せっかく受診されたからには、何か役に立つ知識をお土産に持って帰ってもらいたいと思っています。症状の原因や対処法など、知っていれば役立つ知識はたくさんありますので、そんなこともお話ししています。
他に気になる疾患はありますか?
【俊紀先生】ごくたまに痛みが長引いていると思ったら骨折一歩手前だったというお子さんがいますので注意しています。いわゆる成長痛の半数は、ストレッチで体をほぐすことなく運動をする子に見られます。自分の体が痛くなって初めて、日頃からちゃんと行うように言われているストレッチの重要性がわかるわけです。一方で、スポーツで痛めてしまう子も多いですね。ちょっとしたフォームなどの改善が痛みや故障の予防に役立つので、将来的には子どもたちのフォームもチェックしてあげたいと思っています。また、お子さんは軟骨を痛めることが多く、それは超音波の検査でよくわかりますので、最近は超音波検査にも力を入れています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

【久美子院長】不安なこと、聞きたいこと、たくさんあると思います。受診するほどではないと思って様子を見ておられる方も多いことでしょう。中には、長期にわたって様子を見ていたために悪化することもあります。我慢しすぎず受診していただきたいです。受診の目安は生活に支障が出始めたら。これは小児科だけでなく整形外科も同様です。咳がひどくて夜中に何度も起きてしまう、足腰が痛くて歩くがちょっとつらい、またお体の痛みは10日から2週間程度続くようなら、ぜひ受診してください。