水野 大介 院長の独自取材記事
加木屋眼科
(東海市/南加木屋駅)
最終更新日:2021/10/12
名古屋鉄道河和線南加木屋駅から徒歩15分、皮膚科、耳鼻科の医院と隣接する便利な立地にある「加木屋眼科」。水野大介院長が眼科冨田クリニックの分院として2015年に開院した。子どもから高齢者まで、幅広く診察する地域のかかりつけ医だ。自身も幼い頃から眼科に通院していた経験を持つ水野院長は、患者視点を持ち、思いやりのある丁寧な診療を心がける。豊富な人脈を生かし、大学病院ともスムーズに連携を取るほか、ロービジョン検査や往診に力を入れるなど、ニーズはあるが受け皿が少ない分野で役に立ちたいと言う水野院長から、地域医療への強い思いを聞いた。
(取材日2018年1月24日)
治してくれた先生に憧れ、眼科の道へ
これまでの先生のご経歴を教えてください。
2000年に昭和大学医学部を卒業後、名古屋市立大学眼科に入局しました。早くから眼科に入ることは決めていて、在学時は大学に残るか、地元である名古屋に戻るかで迷っていました。そんな折、所属する部活の先輩でもあった眼科教授に相談したところ、「名古屋での開院を考えているなら、名古屋市立大学にとても良い先生が着任されたので、ぜひそちらで学ぶといい。東京へはいつでも戻ってきていいから」と背中を押してくださり、地元に戻ることに決めました。名古屋市立大学では大学病院での1年間の研修の後、短期でさまざまな病院に勤務して臨床経験を積みました。途中、大学院へも進学し研究を行い、学位も得ました。そして市立恵那病院に9年間勤務したのち、分院の立ち上げを考えていた「眼科冨田クリニック」の冨田院長からお誘いをいただき、院長に就任しました。
水野院長が医師をめざしたきっかけは?
私自身が幼い頃からずっと、名古屋市立大学病院で眼病治療を受けていたからです。低出生体重児として産まれた私は、生後間もなく未熟児網膜症を発症。幸い早期に発見され、当時、未熟児網膜症の画期的な治療法を研究していた名古屋市立大学病院に転院することになりました。未熟児網膜症は当時も今も治療が遅れると失明の恐れのある恐い病気なのですが、先生方のおかげで後遺症もなく治してもらうことができたんです。私はその治療法の最初期の、第何号という患者だったそうです。その後も高校生くらいまで、毎年検査のために眼科に通っていました。そうやって子どもの頃から医師という職業をずっと見て育ってきたので、当然のように自分を救ってくれた先生たちのような眼科の医師になりたいと強く願い、医学部を志しました。
主にどのような疾患の治療を行っていますか?
アレルギー性結膜炎や、お子さんのものもらい(麦粒腫)が多いですね。緑内障や白内障の患者さんも来院され、検査や点眼治療は当院で、手術が必要な場合には本院の「眼科冨田クリニック」や他病院と連携を取っています。緑内障の患者さんの場合は、まず視野の進行具合を当院で入念に検査して、それに合った目薬を処方します。すぐにでも手術が必要な場合には、名古屋市立大学病院に紹介しています。名古屋市立大学眼科は、糖尿病網膜症や加齢黄斑変性の治療においても全国でも数少ない重点的医療施設の一つですので、個々の病状に合わせた専門の先生にすぐ診てもらえるという利点があります。患者さんには大学病院でしっかり治療を受けていただき、その後のフォローはすべて当院で行うことができるような体制を整えています。
人脈を生かし、大学病院とも密に連携
名古屋市立大学病院の眼科とは、スムーズな連携が重要になりますね。
同病院の眼科の医師とは密に連絡を取り合っているので、普段から気軽に連絡を取れる間柄ですね。手術などで紹介受診が必要な場合も、事前に旧知の先生に相談して、入院の手配やベッドの確保、治療の準備までしてもらうこともあります。患者さんが紹介状を持って受診した時にはもうほとんどの準備が済んでいるわけですから、待ち時間も少なくなり患者さんの負担を軽減できます。また退院の頃にも、スムーズな情報共有が可能です。このように大学病院の先生と気軽に連絡ができ、紹介から入退院までスムーズな連携ができているのは当院の特徴の一つだと思います。
OCT(光干渉断層計)など先進の機器を取り入れていますが、どんなメリットがありますか。
例えばOCTは体に負担が少なく、検査時間も数分程度とスピーディーです。この機械が出る前は、加齢黄斑変性などの病気は見た目と医師の経験で判断していました。しかしOCTなら、断層撮影といって、網膜自体の厚みがわかります。どこで、どのように血が出ているのか、ここに水が溜まっているなど、画像で確認できます。治療後も同様です。今はいろいろな治療法が出てきているので、より最適な治療法を受けてもらうには細かく診断する必要があります。程度や状態がわかり、どの治療が最適か当院で判断できれば、こういう状態なら大きな病院がいい、この状態なら飲み薬でと次のステップを決断できます。ただ単に詳しくわからないから大きな病院に行ってくださいとするよりも、線引きを明確にしたほうが、患者さんの安心感もきっと違うと思います。
患者さん目線での診療を大事にされているそうですね。
私自身が患者側だったことの影響は大きいですね。いつも患者側の立場を考えて診療するように心がけています。往診もそんな思いから始めています。内科と違い、眼科は往診をする医師は少ないのですが、近年眼圧を測る機器がコンパクトになってきており、比較的簡単にできるようになりました。最近は自宅で介護したり、老々介護で眼科への通院が難しいという方も多く、私が行くことで患者さんやご家族の負担を減らせればと思っています。できることは歩み寄っていけばいいという思いがあり、できる範囲で一日何軒か回っています。まずはやってみようと思う性格なので、柔軟に対応できているのかもしれません。
実施機関の少ない分野に注目し、地域医療に貢献
20~40代の患者さんも増えているそうですね。
午後の診療が14時30分からと他より早いため、休憩時間や営業の合間に寄りやすいようで、働き盛り世代の患者さんも多くいらっしゃいます。この世代は、ドライアイやアレルギー性結膜炎になっている人が増えている印象です。オフィスの乾燥した中でパソコンを使い、コンタクトレンズは帰宅まで外さないとなると、目はとても疲れています。ですがこの世代の方に、ドライアイの薬や、アレルギー対策の薬を使ったりすると改善されることも多く、最近は継続して通ってくださる方が増えています。目のトラブルは気付かないうちに抱えていることが多いので、ドライアイや目がごろごろするなどの症状が気になったらぜひ受診してほしいですね。
スタッフの方とはどのような連携を取られていますか?
SNSで全職員参加のグループを作って、その中で気軽に意見交換をしたり、周知事項をそこに掲載したりと柔軟に運用しています。また月に一度は全体ミーティングも行い、そこでも日々の疑問点や改善点を話し合うようにしています。過去には、議題が“院長のダメ出しをする”という回もありました(笑)。その時はあとで私がかなり落ち込んでしまうくらいたくさんの改善要望が出てきて正直とてもびっくりしましたよ。でもこういう機会を設けることで一人ひとりの意見をうやむやにせずに引き出すことができますし、ともに同じ方向を向いて進んでいくきっかけにもなります。それぞれの立場から積極的に意見を出してもらって医院をより良くしていけたらと考えています。その中で私は、あくまでまとめ役として意見を出しやすい雰囲気をつくり、そしてスタッフの働きやすさにも常に気を配るようにしています。
今後力を入れていきたい分野についてお聞かせください。
視覚障害のある方に対して障害者手帳の取得に必要な検査を行ったり、ロービジョン相談を行っています。また開院当時から抗がん剤の副作用による涙道狭窄の検査も積極的に行っていて、2年前からは愛知県がんセンターとの連携も始めました。昨年からは小さなお子さんでも行うことができる、花粉症などアレルゲン(抗原)を調べる検査もスタートしました。今までは単に出ている症状に対して目薬を処方するだけでしたが、そもそもの原因を減らさなければ本当の治療とは言えないと考え、日常生活の改善点までアドバイスできるようにしました。医療行為には、ニーズはあっても実際に対応できる医療機関の少ない分野がありますが、そういった分野で当院が積極的に受け皿となっていけたらと思っています。