下竹 敦哉 院長の独自取材記事
えがおのこども しもたけクリニック
(西宮市/西宮駅)
最終更新日:2023/05/29
JR神戸線・西宮駅から徒歩1分の「えがおのこども しもたけクリニック」は院長の下竹敦哉(しもたけ・のぶや)先生が、2017年に開業したクリニックだ。同院は、一般小児科だけでなく、全国的にも数少ないという小児心療内科の診療を行っている。院内には、色とりどりの海水魚が泳ぐ水槽が設置されており、心の悩みを抱えた患者に癒やしを与えられるようにという思いが込められている。また、年々増加傾向にある起立性調節障害の診療に注力しているほか、小児科にもかかわらず、20歳まで患者を受け入れていることが大きな特徴だ。「心身症の中には高校生以降も症状が続く場合があり、年齢で区切ると治療できる施設がなくなってしまうのではと思うんです」と話す患者想いの下竹院長にさまざまな話を聞いた。
(取材日2023年4月19日)
体にも心にも優しい癒やしの空間を提供したい
まず、これまでのご経歴について聞かせてください。
もともとは生物系の大学院で研究を行っていました。そこで研究を続けるうちに、研究者になるよりも医療関係の仕事に就きたいという気持ちが強くなったんです。研究室で一緒に働いていた医師から医学部の受験を勧められ、27歳で医大に学士編入学しました。子どもの心の診療を専門にしたいと思い小児科か精神科で迷いましたが、子どもが好きだったのと、体も診察できることが大切と考え小児科を選びました。勤務医時代はとにかく忙しかったのですが、一般小児科の知識や経験を身につけるとともに発達障害や心身症の治療などさまざまな経験を積むことができました。しかし、忙しさゆえに、なかなか理想とする診療ができず、もどかしさを感じていたのが開業しようと思ったきっかけです。
開業場所に西宮市を選んだ理由は何ですか?
11年間勤務医として働いた後に開業したのですが、場所は西宮と芦屋近郊で探していました。それは、開業する直前まで神戸市内の病院に勤めていたことが大きいですね。全国的に発達障害や心身症の診療ができる小児科や精神科のクリニックは増えてきていますが、まだまだ不足していることは否めません。以前の勤務地の周辺にも、専門的な診療ができる医師が少なかったため、続けて私が診るには神戸からアクセスしやすい場所でなければいけないと考えていました。そんな時、JR神戸線の西宮駅のすぐ近くに新しい医療テナントビルができるという話を聞き、何の迷いもなくここに決めました。駅から徒歩1分と通院しやすい場所ですので、気軽に足を運んでほしいですね。
内装でこだわった部分はどこですか?
開業前から、誰もが体も心も癒やされるような空間にすることを理想としていました。クリニック名に「えがお」とつけたのは、病気でつらい思いをしているお子さんをはじめ、ここに来られた方たちみんなを笑顔にしたいという想いからなんです。勤務医時代にも、治療にはお子さんだけではなく、付き添いの親御さんの力も重要だと感じていました。そこで、バリアフリーはもちろん、親御さんにも快適に過ごしてもらうため、お手洗いや授乳室を広く設計して機能性を重視しました。患者さんを癒やす工夫としては、待合室に海水魚の水槽を設置しています。皆さん楽しんでいただいているようです。思春期のお子さんも多いので、内装はそこまで小児科らしい雰囲気にはしていません。少しでも居心地の良い空間と感じていただきながら診療を受けてほしいですからね。
尽力する起立性調節障害から一般小児科まで幅広く診療
こちらのクリニックならではの特徴はありますか?
一般的な小児科は0歳から中学生くらいまでを対象としていますが、当院では20歳まで診ていることです。心身症の中には、高校生以降も症状が続く場合があり、仮に中学生までに当院での診療を区切ってしまうと、高校生以降の子たちの診療をこちらで行えません。ただでさえ心身症や発達障害を診療できる施設が少ない中、それは患者さんにとっても私たちにとってもつらいことですので、高校生以上でも診療することにしました。また、経験豊富な臨床心理士が4人在籍し、カウンセリングを行っていることも特徴です。臨床心理士は曜日ごとに異なり、基本的には担当を固定し、最後まで責任を持ってサポートにあたります。院内にはカウンセリング室を設置していて、そちらで心理カウンセリングや発達検査などを行います。
心療内科の疾患や発達障害だけでなく一般小児科まで幅広く診療されているのですね。
午前は一般小児科外来、午後は専門の外来の診療をしていましたが、新型コロナウイルスが5類になった後もその形式を継続しています。一般小児科では小児科全般をカバーしているので、発熱や風邪、腹痛・下痢・湿疹などさまざまな症状のお子さんが来院します。順番を取って待つのではなく、診療時間を決めた完全予約制なので、待ち時間が少なく、待合室で多くの患者さんが待つことがないため、風邪などの感染症の患者さんとの接触も避けることができます。診療時間は1枠15分で、一般的な診療時間より少し長めに設定しています。その分ゆっくり話を聞けて、丁寧に診療ができるので私にとっても患者さんにとってもメリットは大きいと思います。また、発熱症状で受診されても「体重が増えない」「最近よく泣く」といったご相談をしていただいて構いません。保湿剤や便秘の薬が欲しい場合なども含め、気になることがあれば気軽に来院していただければと思います。
予防接種の対応やその大切さについてお聞かせください。
当院では、ロタウイルス・B型肝炎・ヒブ・小児用肺炎球菌・四種混合・二種混合・BCG・麻疹風疹混合・水ぼうそう・日本脳炎・子宮頸がんワクチン・おたふくかぜ・インフルエンザに対応しています。予防接種も完全予約制で、火曜と金曜日の14時30分から17時に設定し、外来とは分けて行っているので、風邪などの感染症をもらう心配もなく安心して受けてもらうことができると思います。予防接種を行う外来の待合室では、子育て中の親御さん同士が情報交換をする姿もよく見られます。「うちだけじゃなかったんだ」などと同じ悩みに共感したり、安心して交流できる場にもなっているようです。
常に患者の心に寄り添った診療をしていきたい
患者さんと接する際に心がけていることはありますか?
人の心に関わるクリニックですので、常に心に寄り添った診療をするように意識しています。これには患者さんの年齢は関係ありません。赤ちゃんであったとしても、同じ子どもになった気持ちで少しでも心と心を近づけて接します。そして、診察が終わった後は、「頑張ったね」と必ず褒めるようにしていますね。そうすることで、病院が嫌いだったお子さんも、次に来院するときは笑顔で来てくれたらうれしいですよね。自ら診察に協力してくれたり予防接種で泣かなかったりしたら、その成長に親御さんも驚かれると思います。
お子さんだけではなく、親御さんとの接し方も気を使われるのではないですか?
そうですね。この地域は教育熱心な家庭が多いからか、ご家庭や学校、習い事などでストレスを抱えてしまい、精神的につらくなってしまうお子さんも多いと感じています。親御さん自身で理想を高く設定し、そこまでめざさないといけない、と思い込んでしまっている場合もあるようです。そんな親御さんには、「このように接してみてはいかがでしょう」とお話をします。また、診断を聞いてショックを受けられる親御さんもいらっしゃいますので、診断名を告げる時はとても気をつけています。
最後に、読者へメッセージをお願いします。
発熱や発疹など一般的な小児科の内容であっても、不登校など心が影響するものであっても、発達障害であっても、どれもお子さんにとってはつらいものです。親御さんは不安だと思います。些細なことでも構いませんので、体や心に関して気になることがありましたら気軽にご相談ください。また、特に外来を設けているわけではないですが、育児相談も行っています。医師、看護師、臨床心理士、受付事務がそれぞれの知識や経験をもとにアドバイスします。当院ではスタッフから「こういうことを勉強したい」という話があれば、院内で勉強会を行って勉強を続けています。私だけではなく、スタッフの誰もが悩みにお応えしていくのも、当院の強みですね。お力になれることがございましたら、全力でサポートさせていただければと思います。