春山 興右 院長の独自取材記事
大宮静脈瘤クリニック
(さいたま市大宮区/大宮駅)
最終更新日:2023/02/21
大宮駅西口から徒歩2分にある「大宮静脈瘤クリニック」は、下肢静脈瘤の診療を専門的に行っているクリニックだ。院長の春山興右先生は東京医科歯科大学医学部付属病院や東京都立墨東病院などの基幹病院で治療にあたってきた下肢静脈瘤のエキスパート。春山院長は皮膚科も専門としており、皮膚外科や皮膚腫瘍などの臨床経験も豊富だという。下肢静脈瘤は皮膚にも症状が出るため、皮膚科の立場からも診てもらえるのは心強いだろう。そんな春山院長に下肢静脈瘤の症状や治療方法などについて話を聞いた。
(取材日2018年12月28日)
血管外科と皮膚科、両方の観点からトータルに診療
静脈瘤と皮膚疾患を専門としたクリニックですが、先生がこれらを専門にされたきっかけを教えてください。
大学卒業後、東京医科歯科大学医学部付属病院の多くの診療科で研修を行い、幅広い臨床経験を積みました。ある時、同大学血管外科の先生に、静脈疾患について直接お話を聞く機会があり、その話にとても強く惹かれました。しかし、静脈瘤への理解が深まるにつれ、併発する皮膚病変についても理解・治療をしている医師が不足していることを痛感し、静脈疾患と皮膚疾患の両方を専門にできる医師になろうと決意しました。その後、両疾患を専門的に学ぶため、都立墨東病院へ赴任しました。着任当初、静脈瘤治療は入院による手術が主流でしたが、カテーテル治療の保険適応後は、これを中心に行うようになりました。これまで静脈瘤の手術だけでも数多く行い、皮膚疾患も幅広く診療していますが、どちらの治療も本当に自分の性に合っており、下肢静脈瘤や皮膚疾患を血管外科と皮膚科の両方の観点からトータルに診療できる点は、やはり大きな強みだと感じています。
下肢静脈瘤とはどんな病気なのですか。
足の静脈は、重力に逆らって血液を心臓に戻す働きをしており、静脈内部には血液の逆流を防ぐ働きをする逆流防止弁があります。下肢静脈瘤は、この逆流防止弁が必要以上に開いたり、弁が壊れた状態となり、正常に機能せず心臓に戻るべき血液が逆流し、逆流した血液が足の静脈にたまってしまう病気です。足の血管がぼこぼこと膨れ上がったり、浮き出たりしてきます。夜から朝にかけて足がつる、足がだるい、足が重苦しい、疲れやすいなどといった症状も出てきます。 進行すると、こむら返りや、皮膚のかゆみ、色素沈着、皮膚潰瘍などの皮膚のトラブルも起きてきます。また、足のだるさや重苦しさなどの症状はほとんどないのですが、血管が蜘蛛の巣状や網目状にもやもやと広がる場合もあります。下肢静脈瘤自体は良性の病気ですが、自然に治ることもなく、放置しておけば少しずつ進行していきます。
どのような人が発症しやすいのでしょうか。
中高年の女性の方に多く発症し、リスク要因としては家族に下肢静脈瘤の既往歴のある人、妊娠・出産経験のある人、美容師や調理師のようにあまり歩かずに立ち仕事をしている人などです。特に遺伝性が高いと考えられていますので、両親や兄弟に下肢静脈瘤を発症した人がいる場合は注意が必要です。男性は女性と比較すると少ないですが、肥満傾向の人は注意してください。
保険適用でより身近になった日帰り治療
治療にはどんな方法があるのですか。
静脈瘤の種類によって治療法は異なります。静脈がぼこぼこと盛り上がる伏在型静脈瘤の場合、従来は原因となる静脈を抜き取るストリッピング手術が行われていました。しかし、2011年にカテーテルを使った血管内治療が保険適用になって以降は、体に負担の少ない血管内治療が主流になっています。当院では、切開をすることなく、逆流を起こしている静脈にカテーテルを挿入し高周波を当て血管を焼いて塞ぐ方法と、接着材で血管を塞ぐ方法を行っています。この治療は日帰りで短時間で治療が行えるのが大きな利点です。特に最近は接着材で血管を塞ぐ方法が、術後の圧迫も不要なため選択される方が増えてきています。伏在型静脈瘤が進行して血管が激しく蛇行していても治療できる自信はありますが、カテーテルが入りにくくなる場合もありますので、そんな状態にならないうちに治療を受けていただきたいですね。
蜘蛛の巣状になっている場合はどのような治療を行うのですか。
静脈が蜘蛛の巣状や網目状になっている場合は、硬化療法を行います。これは静脈に硬化剤という薬を注入し、下肢静脈瘤そのものをつぶして治療する方法です。治療時間は症状の出ている範囲や患者さんの要望によって異なりますが、できる限り最短の時間で行っています。また、血管内治療の場合、かかる時間は10分から15分程度です。両足行ってもだいたい30分以内で終わります。
普段診療の際に心がけていることはどんなことですか。
患者さんによく説明することです。どのような症状か、どんな治療を行うかなど誠意を持って丁寧に説明をすることが最も大切だと思っています。どうして治療を行う必要があるか、それを患者さんによく理解していただくことが重要です。また、患者さんがご高齢で認知機能が少し衰えている場合などは、ご家族に来ていただいてご理解、納得していただいてから治療に入っています。患者さんの主訴が下肢静脈瘤によるものかどうか、といったことも正しく診断して説明することが大切ですね。
例えばどのようなことでしょうか。
足がむくんでいるという訴えの場合、そのむくみが本当に下肢静脈瘤によるものか、あるいは他の病気、例えば心臓や肝臓、腎臓などの内臓疾患によるものかをきちんと診断して、患者さんに理解してもらう必要があります。右足に下肢静脈瘤があって左足には下肢静脈瘤がない、でも左足がむくんでいるという場合、そのむくみは下肢静脈瘤が原因ではないと考えられます。この場合、右足の下肢静脈瘤の治療を行ってもむくみは消えないことになります。そういったことも含めて患者さんに説明して理解していただくことが重要です。
患者に喜んでもらえることがやりがいに
これまでで心に残った出来事はございますか。
これまで数多くの治療を行ってきましたが、その中には非常に複雑な血管の方や他院で治療した後に再発してしまった方なども多くいらっしゃいました。どのような状態の方であっても常に誠意を持って診療にあたり、適切に診断し、最善の治療を模索してきたと思います。そして患者さんから「治療を受けて良かった」と言っていただけること、それが一番うれしいですね。自分の好きな分野の診療や治療を行い、患者さんに喜んでいただけることに大きなやりがいを感じます。
ところでプライベートはどのようにお過ごしですか。
子どもがいますので、プライベートの時間は子どもと一緒に過ごしています。実は今、妻が仕事で海外に滞在していますので、家事や子育てなど家のことは私がやっています。私自身ももともと、国際医療も好きで、開発途上国での医療支援やクリニックの立ち上げなど支援をしてきました。今後も時間を見つけては行いたいと思っています。読書も好きですので、時間の余裕があれば本を読んでいたいですね。ただ、今は診療と子育てに忙しいのが現状です。
では最後に今後の展望と読者へのメッセージをお願いいたします。
下肢静脈瘤の潜在患者さんはとても多いと思います。足がだるい、重いと感じていても、それが下肢静脈瘤によるものと認識していないこともあるでしょう。ですので、下肢静脈瘤についてより多くの方に正しい知識を持っていただきたいと思います。当院でも説明会を行っていますので、ぜひご参加ください。下肢静脈瘤の治療は、決して急ぐ必要はありません。ですが、悪化しないうちに治療を受けていただきたいと思っています。たとえ外見上何も変化がなく問題がなさそうな場合でも、エコー検査によって逆流を発見でき、何秒以上の逆流があれば治療適用といった客観的診断を得ることができます。静脈瘤かどうか心配な方や皮膚疾患で悩んでおられる方はお気軽にご相談ください。
自由診療費用の目安
自由診療とは弾性ストッキング(保存療法の場合)/5500円(税込)~