宮本 良平 院長の独自取材記事
みやもとこどもクリニック
(京都市伏見区/桃山御陵前駅)
最終更新日:2023/10/26
近鉄京都線の桃山御陵前駅からも、京阪本線の伏見桃山駅からもすぐの「みやもとこどもクリニック」。扉を入ると開放感と清潔感のある空間が広がり、子どもたちがワクワクするようなキッズルームも用意されている。院長の宮本良平先生は明るくて優しいドクター。マラソンが趣味というだけあって、常にはつらつとして元気に日々の診療を行う。医療の知識だけでなく、自身のスキルアップや食などのさまざまな分野にもアンテナを張り、「子どもたちが健康であるために、お母さんは特別な存在」との思いから、家族が健康になるためのヒントを満載した本の執筆も手がけた。「子どもたちの成長を見るのが、何よりの楽しみ」と笑顔で語る宮本院長に、診療の方針から予防医学について、本の話や今後の展望まで、じっくりと聞いた。
(取材日2023年8月24日)
漢方薬を取り入れた、抗生剤に頼らない治療
こちらで開業された経緯をお聞かせください。
大学に残って研究を続けるか、開業して患者さんに寄り添った診療をするか考えて、診療のほうを選びました。自宅は大阪府枚方市の樟葉ですが、小学生の時に丹波橋の塾に通っていたり、伯母や父親が桃山高等学校の出身ということもあり、親しみのある地域でした。大阪と京都の間でもあり、若い人が住みやすい場所でマンションも多くあります。クリニックのキャラクターは、桃山の地名からピンク色の桃の男の子。頭にグリーンの帽子をちょこんとのせて山を表現しました。帽子には伏見の酒造りに欠かせない清流も描いています。小さいお子さんをお持ちのお母さんに「桃のお医者さんに行こうね」なんて言ってもらい、愛されているようです。
クリニックづくりでこだわった点はありますか?
待合室は熱のある子と熱のない子のソファーを分けています。広々としたプレイルームですが、こちらは熱のない子のみの使用にしており、感染症のお子さんには横になれる個室を2つ用意しています。待合室には除菌のために、天井に大きな空気清浄機も導入していますし、トイレも常に清潔にするなど、感染症対策には力を入れています。お子さんだけでなく、付き添いのお母さんもリラックスしてもらいたいという思いで、アロマをたいたり、オルゴールのBGMを流したりと工夫しています。
治療での方針を教えてください。
抗生剤の使用は必要最小限にしています。抗生剤はおなかの中のいい菌まで殺してしまう恐れがあり、免疫にも関わるため、積極的に漢方薬を使っています。漢方薬は風邪の子、情緒が不安定な子、夜泣きする子などに使うことがありますね。作用が緩やかなイメージがあるかもしれませんが、漢方薬によって即効性が期待できるものもあります。風邪の中には、咳や鼻水用の薬よりも漢方薬のほうが合っているケースがあり、通常のお薬と漢方薬を併用することもありますが、いずれもお母さんにどうするか聞いた上で決めています。ただ、漢方薬は生薬の独特な味がするので、甘いシロップに混ぜて飲みやすいようにしています。「風邪はウイルスによるもので自然に治まるものだから、抗生剤を飲んでも意味がない」というご説明をしますが、まだまだ「どうしても抗生剤」という方がおられるのも事実です。もっと情報を発信していきたいですね。
子どもたちを元気にしたい、と本を執筆
小児科で予防医学に取り組まれるのは珍しいですね。
予防医学というと、中年になってから始めるイメージですが、生まれた時から取り入れたいなと思っています。食生活、運動、睡眠のほか、漢方でも体質改善が期待できます。必要以上に抗生剤を使わないことが子ども自身の免疫力を上げることにもつながるなど、予防医学における一つの方法だとも考えられます。また、弱視の検査もしています。お子さんに画面を見てもらうだけで検査が可能です。片目でしか見ていない子は使わないほうの目が弱ってきて、ある段階になると治療が難しくなっていきますが、早く見つければ視力矯正もめざせます。機械を通した検査だと、より精密に診断できるでしょう。7、8ヵ月になったら検査できるようになるので、視力の発達する3歳くらいまでには見つけて、矯正していくことが大事です。予防医学の重要性については今後、もっと発信していきたいと考えています。
自然治癒力をテーマにした本を出版されたそうですね。
人には自然治癒力というものがもともと備わっているので、お薬に頼りすぎなくてもこの力を普段から高めていれば、元気に日常生活が送れると期待できますよ、という考えをお伝えしたくて、それをテーマにした本を書きました。お子さんが体調を崩す度に病院へ連れて行く、お母さん方の心痛やご苦労は大変なものです。そんなお母さんたちの気持ちを受け止めて、応援したくて作りました。免疫のメカニズムのお話から、食事、睡眠、運動の大切さ、さらに簡単な漢方の紹介をしています。ママとママ友達と医師が会話をする形で構成していますので、堅苦しくありませんしどなたでも読んでいただきやすいと思います。子どもにとってお母さんは、かけがえのない存在です。この本を読んで、お母さん方が明るく、元気になっていただければうれしいです。
診療で何を大切にされていますか?
「寄り添う」ことを理念にしているので、「笑顔、安心、共感」を大切にしています。具体的には、安心には清潔なことも大事なので、私自身、朝はクリニックの掃除から始めます。クリニック周りの掃き掃除では通勤途中の近所の方や患者さんと笑顔であいさつができるので、街を明るくする手助けになっているようで楽しいですね。共感という点では、お母さんともお子さんとも目線を合わせて話を聞くことを大切にしています。そのために私自身、教育講座やコーチングを学ぶスクールへ通って勉強もしました。お母さんのお話はできるだけ遮らずに最後まで伺います。小さいお子さんの診察の際には、安心できるように、時には私が椅子から降りてしゃがんで話すように心がけるなど、こういったことを日々スタッフと話し合い、行動に移せるようにしています。
地域とさらに交流を深め、伏見の人々に尽くしたい
小児科の医師としてやりがいを感じる瞬間や、工夫されていることも教えてください。
2016年の開業から8年がたちますので、小さかった患者さんがだんだんと大きく、成長していく姿を見られることがうれしいですね。「注射を嫌がってあんなに泣いていた子が、こんなに立派になって」とつい親目線になったりもします(笑)。当院では予防接種にも注力していまして、専用の時間帯を設けていますが、お忙しい方は一般診察の時間帯にお越しいただいてもいいですよ、とお伝えしています。今は同時接種が一般的ですから、一度に数本の予防接種をされるお子さんも少なくありません。診察室に入ってから注射を待つ時間が長いとお子さんの不安が増しますから、できるだけスピーディーに痛みの少ない注射から順番に行うように工夫しています。
ところで、先生が医師をめざされたきっかけは何だったのでしょう。
父が歯科医師で、母方の祖父も医師。話をよく聞いていたので、医療の道に進む環境はありました。小児科に進んだのは、未来がある子どもに関われるところがいいなと感じていたからです。私自身、小さい時はアトピー性皮膚炎、大人になってからは喘息にかかるという経験をしているので、そういう子に寄り添ってあげたいという思いが強かったんです。幼少期には、アデノイドが大きく、中耳炎を繰り返していたので、耳鼻咽喉科にはよく通っていた記憶があります。病院に勤務していた時は一般診療のほか小児神経を専門としていたのでてんかんの子なども診ていましたが、小児科は内科のように循環器、消化器など細分化されておらず、体全体を幅広く診ることができるのもいいなと思った点です。
受診のアドバイスと今後の展望をお願いします。
一番間近でお子さんを見ているのはお母さんですから、そのお母さんが「普段よりぐずっている」「ぐったりしている」と感じた時が、受診のタイミングだと思います。どんな小さなことでも気軽にご相談いただきたいですね。私は医師の仕事の傍ら、食育や自然にも興味を持ち、野菜ソムリエやアロマの資格を所得しています。当院のある伏見は日本酒の街として有名なので、今は日本酒検定に挑戦しています。さらに執筆した本をもとにワークショップや健康教室を開くことを検討しています。これからも笑顔、安心、共感を大切にしながら、地域の他業種の人たちとも交流を深め、さらにこの地に根を下ろして、ここに住む皆さんに貢献できるよう努めてまいります。