海野 一雅 院長の独自取材記事
おおくまクリニック
(名古屋市名東区/本郷駅)
最終更新日:2024/11/01
名古屋市営地下鉄東山線・本郷駅から、東へ10分ほど歩いた住宅地に立つのが「おおくまクリニック」だ。2010年に循環器内科を専門とする前院長の大熊攻先生が開業し、2023年4月に海野一雅(うんの・かずまさ)院長が継承。海野院長は名古屋大学医学部附属病院や日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院などで、心臓の手術を中心に多くの経験を積んだ循環器内科のスペシャリスト。さらに米国ハーバード大学に留学した際には先進的な研究を行い、その知識を生かした診療を行っているという。日本循環器学会循環器専門医と日本内科学会総合内科専門医の資格を持つ。循環器、一般内科ともに力を入れている同院では、検査体制も充実。数多くの知見を持つ海野院長に注力したい治療や診療方針など幅広く聞いた。
(取材日2023年5月25日)
総合病院の知識と経験を生かした健康管理を実践する
医師をめざしたきっかけを教えてください。
大学でも心臓の発生や細胞の研究をして留学もするほど、もともと生命科学が好きでした。しかし、きっかけと言うと、生物学者の利根川進先生がノーベル賞を取ったのを見て、興味を持ち始めたのだと思います。昔から、心臓や脳の仕組み、病気に関するテレビの特集を見るのも好きで、高校生くらいの時から医学の道に興味を持ちましたね。循環器内科を選んだ理由は、ダイナミックで動きが激しいからです。心臓に異常があって入院してきた方が1週間後に快方に向かう、というのもよくあるお話で、循環器の病気は急性期を適切に乗り越えると急に状態が良くなることも期待できます。そういうところに興味を持ちました。
クリニックを継承した今の率直なお気持ちをお聞かせください。
今までクリニックで対応することとは違うことをしてきましたが、その経験を生かしていきたいです。これまで勤務していたような大きい病院では、まさに状態が悪くなってしまった方の治療をメインに行っていました。しかし、クリニックの仕事の中心は「予防」や「症状を悪くしない」ためのものです。ただし、扱っている病気は同じで、病気のフェーズが違うだけなので、症状が悪化するケースや悪化しやすい方も判断できます。クリニックの仕事は慢性期の方の管理と病気の予防で、こちらもやりがいのある仕事です。これまで心筋梗塞を起こしている方、心不全が悪くなってしまった方も数多く診てきたので、そういった経験を生かして地域の方々の健康をサポートしていきたいです。
これからどのような治療に注力していこうと考えていますか?
患者さんの症状を悪くしないための治療です。病気になるリスクファクターを取り除いて予防することと、症状が悪くならないようにするストッパーの役割が大切だと考えます。あとは、悪くなっていくところを見逃さないことです。例えば、心臓弁膜症だと、徐々に手術をしたほうが良いサインが出てきます。私たちはそういったサインを見逃さずに、発見した場合は適切に大きな病院へ紹介しなければいけません。予防では、患者さんによってリスク管理も異なります。血圧の数値が同じでも、動脈硬化の状態によってリスクは変わるため、患者さんによってはもう少し血圧を下げたほうが良いケースもあります。心臓に病気がある方も同じです。また、循環器内科だけでなく高血圧、糖尿病、高脂血症をはじめとした生活習慣病の指導や一般内科の診療にも力をいれています。個人のリスクに合わせて対応していきたいです。困ったことがあれば、お気軽にご相談ください。
頸動脈エコーや負荷心電図検査など循環器の検査が充実
こちらのクリニックの強みはどのようなところでしょうか?
循環器内科を専門にしているので、検査体制が整っているところです。循環器の検査で大切な心臓超音波検査や負荷心電図検査も行っています。先ほど、循環器内科のクリニックの役割は患者さんの症状の管理がメインだとお話ししましたが、もし悪化しそうなサインを見つけたときは速やかに適切な医療機関へ紹介することも大切なのです。私は日本赤十字社愛知医療センター名古屋第二病院で部長をしていた経験もあり、愛知医科大学病院や名古屋大学医学部附属病院にも後輩や知り合いがたくさんいるので、紹介しやすいのも強みかなと思います。また、総合内科専門医の資格をもっているので「かかりつけ医」として幅広く診ることができるのも特徴の一つです。
具体的にどのような検査が可能なのでしょうか?
一般的な循環器の検査全般は可能で、心電図や心臓超音波検査、負荷心電図検査、動脈硬化のレベルを測るための血圧派波検査、24時間ホルター心電図検査、24時間血圧検査などを行うことができます。もちろん血液検査や、情報が多い尿検査もできますし、胸部エックス線検査や聴力なども測れます。循環器に関する検査は特に充実させていますね。負荷心電図検査と頸動脈エコー検査は、外部から経験豊富な専門の先生に週1回来てもらっています。頸動脈エコー検査では、動脈硬化の状態を測って、今後患者さんが脳梗塞を起こしやすいかどうかのリスクを診ます。
院長を継承されたばかりですが、これからどのようなクリニックをめざしていきますか?
地域の方たちの健康寿命を延ばしていけるようなクリニックでしょうか。クリニックで診療を行うからには、地域の方たちに健康でいてもらえるようにしていきたいです。昨今、介護を必要としない「健康寿命」というのが話題になっていますが、現状は平均寿命と比べると7~8年離れています。それはつまり、皆さん亡くなる数年前から寝たきりや重い障害があって、誰かにサポートしてもらわないと自分で生活できなくなるということですよね。介護が必要になる原因として、脳梗塞や心筋梗塞が挙げられます。循環器は心臓や血管だけでなく脳にも関係しているので、私たちがしっかり患者さんを診てあげることが健康寿命を延ばすことにつながっていくかもしれません。私もそうですが、誰もができれば寝たきりではなく、元気な状態で長生きしたいはずです。当クリニックが地域の皆さんの健康寿命を延ばすことにつながればうれしいですね。
患者のリスクを見極め、適切な治療を提案する
患者さんと接するときは、どのようなことを大切にしていますか?
患者さんの症状だけでなくバックグラウンドも考慮して、適切な治療を提案することですね。あらゆる状況において「この治療が確実に良い」というのがない場合は多いです。治療に絶対はありません。患者さんの年齢や生活、家族構成などのバックグラウンド、患者さんの価値観によっても治療の選択肢は変わってきます。私は患者さんのお話をよく聞いて、いろいろなことを考慮した上で適切だと思う治療を提案するように心がけています。もちろん最終的に治療方法を選択するのは患者さんですが、専門家ではない患者さんが適切な選択をできるようにサポートするのが、医師である私たちが大切にすべきことだと考えています。
先生の医師人生で印象的なエピソードをお聞かせください。
1つのエピソードには絞れませんが、やはり患者さんが慕ってくれることがうれしいです。私が医師になって3年目くらいの時に、心筋炎という心臓が炎症して止まってしまう恐れのある病気の方に、心臓にポンプを入れる手術をしました。その方が今も慕ってくれていて、毎年年賀状をくれます。ほかにも、以前の病院で診ていた方に「次のクリニックは遠いから他のクリニックを紹介する」と言ったのですが、「先生についていきます」と言っていただき、遠方から来てくれている方もいます。この辺りはクリニックも多いのに、わざわざ当クリニックまで来てくれるのはうれしい限りです。
最後に読者の方へメッセージをお願いします。
循環器系の病気は、女性より男性のほうが発症しやすいです。しかし、女性も閉経後に女性ホルモンが減少し始めると、循環器系の病気が増える傾向があります。50~60代になると女性も男性と同じくらい患者さんが増えて、血圧やコレステロールが高い方はリスクも高くなるので、きちんと問題意識を持って改善を試みる必要があります。また、働き盛りの男性は生活習慣が乱れがちな方が多いです。脳梗塞や心筋梗塞を発症すると、健康寿命を短くしてしまう可能性もあります。私は患者さん一人ひとりのリスクを見極めて、治療方針を決めるスタンスで診療をしています。健康診断で引っかかった方など、不安がある方は一度ご相談ください。