今野 裕之 名誉院長 の独自取材記事
ブレインケアクリニック
(新宿区/新宿御苑前駅)
最終更新日:2024/08/09

新宿御苑前駅から徒歩約1分の場所にある「ブレインケアクリニック」は、うつ病や適応障害、認知症などを対象とした心療内科・精神科クリニックだ。待合室や診察室の窓からは新宿御苑に生い茂る木々の緑が見え、院内には落ち着いた雰囲気が流れている。名誉院長の今野裕之先生は、精神疾患に幅広く対応する中で、特にリワーク(職場復帰支援)と栄養への助言に注力。仕事などで忙しい人でも受診しやすい環境を整え、誰もが気軽に来院できるクリニックをめざしている。同院の特徴は、精神疾患をバイオロジカルなメカニズムから分析しているところだ。約10年にわたって栄養についての知識を学び、それについての講演会や本の執筆などにも精力的な今野名誉院長に、クリニックの特徴や診療方針について聞かせてもらった。
(取材日2024年6月20日)
若いうちから認知症の予防対策をすることを推奨
まず最初にクリニックを紹介していただけますか?

約8年前に当院を開業し、認知症やうつ病などの患者さんへの診療や栄養面へのアドバイスを行ってきました。また、同じ医療法人でリワーク施設を併設している新宿御苑前メンタルクリニックも運営していたのですが、2020年に統合しました。その結果、薬物療法だけでは回復が難しい患者さんに対しては必要に応じてリワークを進めたり、栄養面のアドバイスを行ったりするなど、より統合的にアプローチできるようになりました。一つの施設の中でさまざまな診療ができることが強みです。
クリニックを開業された理由を教えてください。
若いうちから脳を健康に維持して認知症にならずに人生を全うできる方を増やしたいという思いから開業しました。メリニック名に「ブレインケア」を冠したのは、年齢が若い段階から脳をケアしていくことが大切だからです。また、認知症になったとしても、症状自体は食事や運動・睡眠などを見直すことで改善をめざすことは可能であることがさまざまな研究で明らかになっています。実際に、海外ではこのような知見に基づく積極的な認知症予防医療が行われるようになっています。
どのような症状で悩まれている患者さんに利用してもらいたいですか?

当院では精神疾患全般の治療を行っていますので気持ちの落ち込み、不安、不眠、パニック、食欲低下、意欲低下など、心の症状で気になることがあればお気軽にお越しください。私の専門分野である物忘れに関していうと、物忘れは認知症だけではなくて、さまざまな原因で発生します。例えば、ADHDやうつ病、睡眠不足などでも起こります。それぞれの疾患・症状に対して適切に対応することが必要となるので、「物忘れ=認知症」と決めつけず、気軽に来院してほしいです。また、何かしらの症状が2週間ほど続いたら受診することをお勧めします。
さまざまなアプローチで患者をケアする
リワーク(職場復帰支援)に注力されているそうですね。

リワークとは、休職中の患者さんの再発・再休職を予防しながら職場復帰をめざすリハビリテーションプログラムです。精神的な疾患の場合、いったん症状が安定したとしても、職場に戻ると具合が悪くなってまた休んでしまうという方が少なくありません。そのため、リワークを挟むことによって復職成功率の向上につなげます。休職原因の振り返り、講義やディスカッションなど、多角的な参加プログラムをご用意しており、患者さん一人ひとりに担当スタッフが1名つき、個々のニーズや復職時期、体調に合わせて参加プログラムの調整を行います。リワーク施設は当クリニックに併設しており、患者さんのことについて何かあればリワークスタッフとすぐに共有できます。ドクターとスタッフが密に情報共有をすることで、問題が発生してもスムーズに解決することが可能です。
貴院では栄養面からもアプローチをされているそうですね。
精神疾患の症状には食事の内容や生活習慣が影響している場合があります。こういった問題を明確にして適切に対処することによって、薬だけの対症療法ではなく、心身ともに健康的な身体づくりをめざしていきます。精神疾患の発症に大きく関わっている脳も臓器の一種であり、必要な栄養が欠如すればその働きも悪くなります。特に投薬での治療を希望されない方、薬の減量をめざしている方には身体の不調につながるような食習慣や生活習慣がないか伺ってアドバイスをしていきます。こうしたアドバイスはその方の状態によって変わりますので、定期的に医師のアドバイスを受けることをお勧めします。
認知症予防についても取り組まれていると伺いました。

認知症の原因物質は、発症の20~30年ほど前から溜まり始めます。そして、脳の機能低下が明らかになってくるのがだいたい40代ぐらいといわれています。こうしたことを考えると、40歳を過ぎた方は一度相談に来ていただきたいですね。脳の老化を予防したり、ライフスタイルを変えたりすることで認知症の発症の確率を大きく減らすことも期待できます。健康なうちから将来に備えて対策を始めることがとても大切です。現時点で問題がなくても、健康なうちから将来に備えて対策を始めることが重要なのです。しかも気づかないところで老化は始まっています。また脳の健康は、心や体の健康と若さに直結していますので、脳をケアすることで若々しさも手に入るでしょう。
「ブレインケア」という言葉を定着させたい
医師をめざしたきっかけを教えてください。

父が整形外科の開業医として働いていたこともあり、自然と医師をめざしていましたね。日本大学医学部に入学し、いろいろな診療科を経験しました。最終的に自分の適性に合っていた精神科を選択し、今に至ります。精神科の臨床では客観的なデータから疾患を確定診断できることは少ないため、患者さんの診断や治療に関しては役職や経験に関係なく、対等に議論できます。このように自由に意見交換できる点に他科とは異なる魅力を感じ、精神科の道に進むことを決めました。
患者さんと接するときに心がけていることはありますか?
単に症状が良くなるだけでなく、患者さんに満足してもらえるかどうかを大切にしています。もともと不安や悩みを抱えて来院される方が多いので、スタッフにも患者さんに安心感を与えられるような対応を心がけてもらっています。私が理想とする医師像は、優れた知見と治療技術を持ち、なおかつ患者さんから笑顔を引き出せるようなドクターです。日々の診療を通じて、患者さんの健康と笑顔を支えられるよう、全力で取り組んでいます。
将来的に取り組んでみたいこと、実現したいことは何ですか?

当院のクリニック名にもなっている「ブレインケア」という言葉をもっと広めていきたいです。「ブレインケア」には、脳の老化を防ぐだけでなく、その人本来が持っている脳の力を引き出すという意味が込められています。私たちがめざすのは、スキンケアやヘアケアのように「ブレインケア」という言葉が一般的に使用されるレベルにまで広めていきたいと思っています。