羽溪 眞 院長の独自取材記事
はたに内科
(神戸市灘区/六甲道駅)
最終更新日:2024/12/03

JR神戸線の六甲道駅から北へ徒歩約3分。神戸市バスのバス停からもほど近く、近隣からもアクセスしやすい場所にある「医療法人社団はたに内科」。地域に根差した病院である国家公務員共済組合連合会六甲病院に20年間勤務し、副院長を務めたのちに羽溪眞(はたに・まこと)院長が同院を開院したのは2006年。勤務医時代から長年灘区内で地域住民の健康を支えてきた羽溪院長は、一般内科とともに専門である循環器科の診療も行うことから、特に中高年の患者が連日多く訪れているという。穏やかな人柄で患者の話をじっくり聞き、気持ちに寄り添う羽溪院長。そんな羽溪院長に、専門である心臓疾患の話や地域への思い、プライベートの意外な一面などさまざまな話を聞いた。
(取材日2019年6月13日)
勤務医時代から地域に根差した診療を続ける
医院を開院したのはいつですか?

2006年で55歳の時です。神戸大学を卒業してから大学病院などで研修をし、大学院で5年間過ごした後に、兵庫県立柏原病院に赴任。その後は、国家公務員共済組合連合会六甲病院で20年間勤めました。循環器科医長、内科医長、診療部長、副院長を務めたのちに、この診療所を開院したんです。管理職だと会議などに時間を取られてしまうため、「できるだけ多くの時間を患者さんの診療に費やしたいな……。そのほうが自分に合っているかな」と思っていました。開院のきっかけは、当院の前任者である先生とのちょっとしたご縁なのです。ある日所用で私が伺った時に、突然「羽溪先生、ここで診療してくれないか」と言われまして。それで「はい、わかりました」って私も二つ返事をしてしまったものだから(笑)、その方向で進んでしまったんですね。
待合室を見ると、中高年の患者さんが多いですね。
そうですね。20代や30代の若い方も来られますが、やはり中高年……特に高齢の方が多いです。私が循環器を専門にしているということもあって、ご高齢の患者さんが多いのだと思います。ほとんどが地元の方ですね。循環器だけでなく、呼吸器・消化器疾患や、風邪などを含めた内科全般を診ているので、かかりつけ医として診させていただいている方が多いかな。高校・大学・勤務医時代と灘区で過ごした時期が長いので、この地域になじみ深いこともあって、違和感なく地域にとけこませてもらっています(笑)。
診療において大切にしていることは何ですか?

専門性を生かした医療を提供していく一方で、「内科の医師として、診られるものは何でも診る。診るからには標準レベル以上で診療を行う」ということです。正確な診断・治療を行うために、患者さんの話をしっかり聞くということを大切にしています。患者さんの生活背景や全身の状態を知り、全体を把握する。そのためにどうしても診察時間が少し長くなってしまい……。待っていただいている患者さんに申し訳ないという気持ちはあるんですが、そこは妥協できなくて。時間がかかってもしっかりと患者さんの話に耳を傾け、患者さんがご自分の思いを話しやすいように心がけています。
心不全の管理から生活習慣病の予防まで手厚くサポート
特に注力している疾患はありますか?

当院では内科全般に対応していますが、私が循環器を専門としていることから心臓疾患を、また臨床経験が多いことから、呼吸器疾患・消化器疾患などをよく診ています。中でも注力しているのは、心臓病や動脈硬化症ですね。もともと「血管の動脈硬化の成因について」大学で研究をしていて、勤務医時代は狭心症・心筋梗塞・脳卒中などの動脈硬化疾患の急性期の患者さんを救急も含めて多く診てきました。その経験から、動脈硬化症の結果を頭において患者さんを診るようにしています。勤務医時代の専門的な経験があるからこそ、大事なことを見逃さず生活習慣病の診療をしていけるのだと考えています。高齢になると心臓疾患になる方も増えてくるので、その点は患者さんに安心していただけると思います。
高齢になるとどうして心臓疾患のリスクが高くなるのですか?
やはり心筋の収縮力や心臓の拡張能力が低下してくるからですね。それは加齢による変化が大きいと思います。血圧が高い人は特にそういうことが起こりやすい。血管の動脈硬化も年齢とともに進みます。だから冠動脈疾患に関しても、加齢というのは大きく影響します。心臓が血液を送り出す大動脈弁の機能の衰えが原因で起こる、大動脈弁狭窄症の患者さんも昔と比べるととても多くなっています。加齢というのは、弁膜・筋肉・血管のいずれにも影響が出ます。そういったことがベースになって、心不全を起こすケースも多くなっているように思います。高齢化が進むにつれて、心不全で入院する人がすごく増えてきている。この診療所でも、心不全がベースにある患者さんが多いです。そういう方に対しては、心不全のコントロールが必要になってきます。
心不全のコントロールとは何ですか?
心不全がベースにある人に対して、心不全で入院することをできるだけ防げるよう投薬治療で管理することですね。高齢者が入院すると、足が弱くなるとかいろいろと機能が落ちるので、できるだけ在宅で過ごせるようにコントロールするということです。このコントロールについても得意としています。利尿剤の調整や心臓の保護作用の期待できる薬などの投薬で管理するのですが、入院する手前の状態の患者さんに関しては病院の循環器内科と連携しながら対応します。
生活習慣病について伝えたいことはありますか?

やはり高血圧症・高脂血症・糖尿病などの生活習慣病が、結局心臓や脳へのリスクを高めるので、生活習慣病にならないように予防することが大切です。検査による数値が悪ければ、適切な治療を受けること。特に印象に残っているのは、30代~40代前半で心筋梗塞を起こした患者さんを何人か診ましたが、全員が“ベースに糖尿病があって喫煙をしている男性”だったんですよ。だから糖尿病の予防というのは大事だと考えています。あとは、たばこですね。日本はまだまだ禁煙に関しての意識が緩やかですが、喫煙は急な発作につながりやすいし、血管の動脈硬化を進めます。ここでは禁煙の外来も行っているので、喫煙者には禁煙をお勧めしています。
休日はバラ栽培や、愛犬と過ごしてリフレッシュ
ご子息も内科の医師で、この診療所を手伝われているそうですね。

3年前に私が潰瘍性大腸炎になって1ヵ月ほど入院をしたことがあったんですね。それで、日々私が忙しくしているのを気にして「1枠だけでも手伝おうか」と言ってくれて。それから金曜の午後に、彼の手が空くときに手伝ってくれているんです。優しいでしょう(笑)。彼は日本循環器学会循環器専門医なのですが、病院でさらに臨床経験を積んでから、今後のことについては考えてくれたらいいかな……と思っています。
健康維持のために心がけていることは何ですか?
運動は大事なので、歩こうと思っているんですが、朝はぎりぎりまで寝てしまうんですよね(笑)。「歩いたほうがいいよ」って日頃患者さんに言っている以上、自分も歩かないといけないとは思っているのですが。以前は東灘区の自宅からクリニックまで歩いたり、愛犬を連れて住吉川沿いを8000~1万歩くらい歩いたりしていたんですけどね。頑張って早起きをして、また歩きたいと思います(笑)。
休日はどのように過ごしていますか?

愛犬と過ごしたり、バラを育てたり……。診察室にも写真を飾っていますが、トイプードルを飼っていて、かわいいんですよ。私が帰ると一番に飛びついて迎えに出てくれるんです。私の癒やしですね(笑)。最近の休日は、バラがちょっと病気になったので、もっぱらバラの世話に時間を取られています。震災後に街がほこりで覆われて心が乾いた感じになっていた時に、花を栽培する楽しさに出合って。ここ数年はバラを育てるのにはまっているんです。手をかけたら、それに応えるようにきれいに花を咲かせてくれるので楽しいですよ。自宅の塀沿いにバラが咲くと、本当にきれい。バラの世話と愛犬との時間に癒やされて、日々疲れをリフレッシュして元気をもらっています。