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輿石 太郎 院長の独自取材記事

はぐくみ母子クリニック

(川崎市中原区/武蔵中原駅)

最終更新日:2021/10/12

輿石太郎院長 はぐくみ母子クリニック main

女性の大きなライフイベントである妊娠・出産。新たな命を授かった喜びと、無事に生まれてくれるだろうかという不安が入り混じる女性たちを、「はぐくみ母子クリニック」は温かく受け止め、支えてくれる。産科・小児科の複合施設である同クリニックは、出生と子どもの成長を総合的に見守っていくことを目的に2015年に設立。産科については無痛分娩に力を入れており、自分らしい出産を求めて遠方から来る患者も少なくない。産科の重症を含め数多くの分娩に携わってきた輿石太郎(こしいし・たろう)院長に、クリニックの特徴や方針、今後の展望について語ってもらった。

(取材日2018年11月21日)

わが家のように快適に過ごしてほしい

産科・小児科を併せて診るスタイルは、親にとっても安心感があります。

輿石太郎院長 はぐくみ母子クリニック1

小児科を担当している斉藤洋平先生は学生時代からの友人で、それぞれの専門が連携しやすい科だったこともあり、自然と一緒にやろうということになりました。妊娠中から小児科の医師が赤ちゃんの様子を知っていてくれると、分娩時に緊急事態が起きたときにも迅速な対応ができますし、病気や奇形を早期発見した場合、その後の対応もスムーズです。複合施設ならではの利点を生かして、出生から継続して子どもの成長を見守っていきたいですね。産婦人科には広く都内からも通って来られますが、小児科は自宅近くで探される方が多いと思いますので、地域の方のニーズにもしっかり応えていきたいと考えています。

医師になってから開業するまで、ほとんどの期間を周産期センターで過ごされたそうですね。

大学を卒業後、大学の関係病院や埼玉医科大学総合医療センター、沖縄県立八重山病院を経て、日本医科大学武蔵小杉病院で助教を務めてから開業しました。約13年間、ほとんどの期間は重症の患者さんを診る周産期センターで勤務していました。羊水塞栓症など、稀有な症例も多く診てきています。仕事の性質上、当直や急な手術も多く、夜間に10分に1回ごとに呼び出しがかかったこともありますね。体力的には非常にハードでしたが、この仕事が好きですからつらくはありませんでした。人として尊敬できる先輩や仲間に恵まれていたこともあり、充実した毎日でした。

クリニックづくりでこだわった点や、診療の特色について教えてください。

輿石太郎院長 はぐくみ母子クリニック2

最もこだわったのはシンプルで温かみのある、患者さんにリラックスしていただける環境づくりですね。入院していただくお部屋だけでなく2階のラウンジなども「ここに住みたい」と思ってもらえるような空間を意識しました。待合室の壁面をはじめ、院内の至る所に描かれているキャラクターは、石垣島に生息するマンタの親子なんです。のんびりとした外見がいいなと思っていた時に、マンタは産んだ子どもをとても大切に育てるという話を聞き、クリニックの理念にも合うことから、クリニックのイメージキャラクターに採用しました。診療では、短期入院に対応している点も特徴の一つです。ご家族や親戚が近くにいないなど、さまざまな理由でなるべく早い退院を希望される方もいらっしゃいます。そこで当院では、沐浴(もくよく)などの指導が不要な方であれば産後3日目からの退院も可能にしています。

すべての痛みを取ることをめざして無痛分娩に注力

こちらのクリニックでは、無痛分娩に力を入れていると伺いました。

輿石太郎院長 はぐくみ母子クリニック3

まだ無痛分娩が可能な施設が少ない地域もあり、遠くは品川区や大田区から来院される方もいらっしゃいます。当院では基本的に24時間、無痛分娩に対応しているのが特徴で、背中に入れたチューブから麻酔薬を入れ、「痛みをすべて取ること」をめざしています。100%痛みがないとは言い切れませんが、数多くの経験をもとに可能な限り丁寧に痛みを取り除いていますね。一般的には子宮口が開いてから麻酔を使用するクリニックもありますが、当院では痛みがつらくなったらすぐに麻酔をスタートするようにして、痛みが苦手なお母さんも安心して出産に臨めるよう配慮しています。妊婦さんたちにも事前にしっかりと説明し、不安や疑問を解消しておくことも欠かせません。

安全性への配慮も徹底されているのですね。

無痛分娩の際、命に関わるような合併症は3つ考えられます。1つは麻酔薬がくも膜下腔という部分に入ってしまうこと、2つ目は麻酔薬が血管の中に入ってしまうこと、3つ目はアナフィラキシーショックという激しいアレルギー症状の発症です。これらを確実に防ぐために何より重要なのは早期発見です。そこで当院では、妊婦さんを一番近くで見守る助産師にも、責任を持って対応できるレベルの知識を身につけてもらっています。妊婦さんご本人にも「こういう症状があれば早めに教えてください」とお願いし協力を仰いでいます。このようにしてドクター、妊婦さん、助産師の3者による協力体制を築くことで初めて、安全なお産をめざすことができるのです。

診療に際して、心がけていることを教えてください。

輿石太郎院長 はぐくみ母子クリニック4

一貫して母子の安全を確保するということです。お産は本来、命を落とす危険性があるものです。アフリカの環境の悪い地域では現在も出産で多くの妊婦が亡くなっています。それを医療が介入することで死亡率を下げているのです。ですから、まずは母子ともに絶対に死なせず、元気に退院できる体制を整えることを第一に考えています。さらに、できる限り帝王切開をしないこと、無痛分娩をサポートすることによって快適な出産環境の提供を心がけています。安全確保の面では、ほかにもさまざまなことに配慮しています。例えば血液型がRHマイナスの方で手術中に大量出血する可能性のある場合には、ご自身の血液を事前に準備する「貯血」を推進しています。緊急時や出血時のガイドラインは、毎回スタッフ全員でしっかりと確認してから手術に臨むようにもしていますね。

産婦人科の就労環境改善を図り、長く働ける職場に

胎児の超音波検査にも力を入れておられると伺いました。

輿石太郎院長 はぐくみ母子クリニック5

赤ちゃんの向きによって見えにくい場合があるので、妊娠20週前後と妊娠30週前後の2回、妊婦さん全員を対象とした胎児の超音波検査を必ず行っています。赤ちゃんが何らかの奇形を持って生まれることは決して少なくはないんです。多くは心臓の奇形ですね。中には出生直後から厳重な管理を必要とするケースがあり、できるだけ早く発見して対応可能な状態で出産に臨めるよう準備しなければなりません。当院では高精度な診断を可能とするために超音波設備を導入していますし、心臓の細部まで診断できる技術にも自信があります。診断の結果、必要であれば提携する日本医科大学武蔵小杉病院をはじめとした基幹病院への紹介もしています。

助産師が担当する外来も特徴の一つですね。

母子の安全と、理想に沿った快適な分娩を両立するために、助産師主導の外来と分娩を行っています。妊婦健診も、24週以降は医師と助産師が順番に担当しているんですよ。どのようなお産をしたいかという「バースプラン」も、助産師の外来で相談に乗っています。母子の状態によってはお断りする場合もありますが、普通分娩や無痛分娩だけでなく、和室での分娩、自由な姿勢での分娩なども可能な環境を整えました。多様な可能性の中から自分に適したかたちを見つけて、満足いくお産をしていただけるといいですね。産後の生活もバースプランに沿って事前に話し合いますので、母子同室で過ごすことも、あるいは授乳の時以外はできるだけ預けて休むこともできます。

今後の展望と、読者へのメッセージをお願いします。

輿石太郎院長 はぐくみ母子クリニック6

産婦人科は精神的にも体力的にもきつい部分があるのは事実で、10年ほどでやめてしまう医師も少なくありません。ですが、新しい命を取り上げ、無事に生まれたことをチーム全体で喜び合える非常にやりがいのある仕事ですから、就労環境を整えて余裕を持って働ける職場にしていくのも経営者としての務めだと思っています。当院には非常勤の医師10人、常勤の医師3人が在籍していて、週3日は休めるように配慮しています。また助産師にも力をフルに発揮してもらい、自ら責任を持って判断できる人を育てることにも注力しています。それが助産師の仕事のやりがいや、医師の働きやすさにもつながりますし、患者さんにとっても良い医療を提供できるのではないでしょうか。産婦人科をより長く続けていける仕組みづくりに尽力しつつ、多くの妊婦さんに頼りにしていただけるクリニックへと今後も成長していきたいです。

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