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保澤 総一郎 理事長の独自取材記事

広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀

(広島市中区/八丁堀駅)

最終更新日:2023/01/24

保澤総一郎理事長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀 main

広島電鉄白島線の八丁堀電停から徒歩約1分の好立地。市内中心部のビル4階にある「広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀」は9年前に開院された。同院は保澤総一郎先生が院長を務める、アレルギー性の呼吸器疾患を中心に診療する専門クリニックである。保澤院長は「いつか医療小説を書いてみたい」という夢を語るなど、温厚で親しみやすい印象のドクターだが、世界標準の治療を患者の立場になって提供したいという揺るぎない信念を持つ。医療に真摯に向き合う姿勢が印象的な保澤院長に、同クリニックに関するさまざまな話を聞いた。

(取材日2020年8月1日)

治療を継続しやすい診療体制で、患者のニーズに応える

まず、医師を志された理由を聞かせてください。

保澤総一郎理事長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀1

私は、幼稚園も半分休園しなくてはいけないほど、子どもの頃は病弱でした。大学病院に入院したこともあり、幼い時から白衣の先生の存在を身近に感じて育ったわけです。成長して将来を考えるようになると、物理工学系は向いていないし、法律を暗記するほどの根性もなく、気持ちとしては自然と医療関係に向いていたという感じです。でも、もう一つ夢があって小説家になることでした。中・高生当時、医師で小説家という2足のわらじを履く先生が何人も活躍されていて、「そんなことができるんだ」と新鮮に映りました。とりあえず医師になって、それから小説家になれるかもと気楽に考えていました(笑)。

喘息を専門にされたのはどうしてですか?

保澤総一郎理事長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀2

理論を構築して治療をするほうが向いていると内科を選び、呼吸器疾患を生理学的・形態学的・免疫学的に研究・診療している広島大学第二内科に入局しました。入局当時は腫瘍免疫について勉強し、そこで免疫機構という広い意味でがんも気管支喘息などのアレルギー疾患と関連があることを学びました。私の学位論文も腫瘍免疫とアレルギーの融合領域の内容です。ちょうどその頃、広島大学病院で喘息専門の外来担当医がいないという状況があり当時の教授の「君がやれ」という一言で喘息診療を始めたのです。当時、喘息は発作を起こして救急に運ばれてくるような生死に直結する病気でした。それをきっかけに生命をつかさどる胸部の臓器のダイナミックな働きに興味を持ち、特に外科が手を出せない喘息を専門にしたいと思うようになりました。専門分野を腫瘍免疫から呼吸器系のアレルギー疾患に方向転換し、喘息を中心に内科系のアレルギー疾患を診ることになりました。

喘息専門のクリニックは多くないと思いますが、開院のきっかけは何ですか?

自分の専門としっかり向き合うために、病院を辞めて専門クリニックを開院しました。喘息の患者さんはご高齢の方もいらっしゃいますが、働き盛りの方も多いので、時間の制約を少なくして治療が続けられるような体制を組むことが大切だと思ったのです。2003年に光町院を開院し、原則予約制にして待ち時間を最小限に、また、説明に十分時間を取り治療への意欲を高めてもらえるようにしました。本院には岡山、山口、島根、四国など遠方から通院される方々もけっこうおられたので、より患者さんの利便性を担保するため2014年に交通の便の良い八丁堀に分院をつくりました。日本全国で同じ専門分野の医師とネットワークを組んでいますが、当院の事例を参考に東京・札幌・名古屋など他の地域でも喘息専門クリニックが開院しました。各地で患者さんのニーズに応えられることはとてもうれしいことです。

標準治療を計画的に進めることを大切に

診療では特にどのようなことを心がけておられますか?

保澤総一郎理事長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀3

世界のスタンダード、標準治療をきちんとする、やるべきことをやるということに尽きます。すなわち、喘息病態を診断し、経過観察するシステムを診療の中に構築してきたわけです。しかも、ご本人の負担が少ない検査で、結果がすぐわかるように、また診療内容をよく理解していただけるような説明を、というような工夫を重ねてきました。喘息は慢性疾患なので症状が一旦治まってもぶり返すことがあり、患者さんに治療を継続してもらうこと、根気よく経過観察することが大切だからです。喘息は、わかりやすく言えば体質から起こる場合が多いですが、残念ながら現在の医学でこの体質を治すことはできません。しかし、きちんと計画的に治療を進めることで、薬を使わなくても日常生活が送れる可能性はあります。

記憶に残る患者さんについて、お聞かせください。

保澤総一郎理事長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀4

喘息で亡くなる方は、治療法が進歩した現在でも、年間1000人~1500人程度いらっしゃいます。私が治療に携わった方で3人経験しています。お一人は20代の若い女性でした。エアロビクス教室の帰りにケーキを買って、駅から自転車で帰宅する途中で発作を起こされ亡くなられました。また、ペットにアレルギー反応が出た男性の家に薬剤師さんと一緒に伺ったら、ウサギをたくさん飼われていたんです。一旦は良くなられましたが、ある日警察からの電話で亡くなられたことを知りました。今がとても良い状態でも急激に悪くなる可能性はゼロではありません。しかし、医師はその可能性を限りなくゼロにすることを目標に治療を組み立てているので、患者さんには治療の継続の重要性を訴えているのです。

医師として転機になったと思われることはありますか?

1990年から本格的に喘息の研究を始めましたが、全世界の喘息の専門家とネットワークができてきたことはとても幸せなことです。母校の広島大学だけでなく他の大学や病院の先生にもアドバイスいただいたく機会に恵まれ、交流を深めることができました。現在、近畿大学病院病院長をされている東田有智先生、大阪市立大学医学部附属病院病院長をされていた平田一人先生、金沢大学でご活躍され、国立病院機構七尾病院院長である藤村政樹先生との出会いがありました。あえてこの先生方を兄貴分と言わせていただきますが、そういった近い関係でかわいがってもらいました。基礎から臨床まで幅広く研鑽できたのは、この3人の恩師のおかげと感謝しています。

日々の診療は、世界の医療の発展につながっている

アレルギー疾患を持つ人が増えているそうですね。

保澤総一郎理事長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀5

確実に増えていると感じますね。ハウスダスト、ダニ、ペット、花粉などに対するアレルギーが原因であることが多いです。喘息に関して言えば、1970年代以降、喘息があるのは人口の3%程度とずっといわれてきましたが、いまや10%ともいわれています。長引く咳の代表である咳喘息も非常に増えています。また、花粉症は国民病といわれるほど多くの方が罹っており、全人口の30%以上とも言われています。日本家屋のような通気性のいい住環境でなくなったことや食生活の変化が発症に関わっているとされています。しかし、検査して反応があってもつらい症状が出なければいいわけで、症状が出ない方向に治療していくことはできます。衛生環境が良くなかった昔は細菌やウイルスによる感染症が多かったのですが、現代は生体反応が感染症からアレルギーにシフトしてきたということでしょう。

ご自身の診療やクリニックについて、どのような展望をお持ちですか?

保澤総一郎理事長 広島アレルギー呼吸器クリニック八丁堀6

繰り返しになりますが、きちんとした診断をした上で経過を的確にモニタリングしていく、それをもとに世界標準の治療を行うという診療体制がぶれることはありません。新しい治療方法が世に出るまでには、10年くらいの歳月をかけ試験が繰り返されますが、できる限り自分もその経験を積み、近未来の治療を実感しておくことが大事だと思います。そうするといち早く臨床に生かせることになりますから。同時に、その成果を論文にして世界に発信する責任も担うことで、医療の発展のために貢献することもできるでしょう。日々患者さんの診療にしっかり取り組むことが、世界の医療の発展につながる、そんな気持ちで診療に臨んでいます。ですから、こういった真摯な気持ちが薄らいだ時は引退だと決めています。

最後に読者へメッセージをいただけますか?

当院では喘息だけでなく関連性のある周辺疾患の患者さんも多いのですが、もし呼吸に違和感がある場合は、なぜそうなのかを知るためにも一度きちんと診察を受けていただけたらと思います。その上で、正しい診断と経過のモニタリングが重要です。今は重大な症状がなくてもまずは受診をお勧めします。また、治療が始まれば自己判断で治療を中断することのないよう、医師と信頼関係を育んで治療を続けてほしいと思います。

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