梅園 朋也 院長の独自取材記事
うめぞの内科クリニック
(厚木市/本厚木駅)
最終更新日:2025/07/02

本厚木駅北口から徒歩約2分と通いやすい「うめぞの内科クリニック」は、糖尿病を中心とした生活習慣病の治療が専門。日本糖尿病学会糖尿病専門医で、大学病院などで糖尿病治療に取り組んできた梅園朋也院長は、「近年は新たな治療薬の登場で治療の選択肢が広がり、より患者さんに適した治療が可能になりました」と話す。一方で「糖尿病は自覚症状なく進行し、深刻な合併症を引き起こすため、早期に治療を始めて中断しないことが大事」との注意点も。患者が継続して通えるよう、全スタッフがチームとなってサポートする同院の専門性や治療の特徴について詳しく聞いた。
(取材日2025年3月10日)
新薬も活用して糖尿病治療のハードルを下げる
どのような患者さんが受診されるのですか?

糖尿病はもちろん、尿酸値やコレステロールが高い、高血圧といった生活習慣病で悩んでいる患者さんが多くいらしています。「会社の健康診断の結果が悪かった」「再検査を放置していたら、本当に調子が悪くなってきた」など理由はさまざまですが、厚木市には糖尿病を専門とする医師が少なかったこともあって、最近は近隣のクリニックからの紹介も多くなりました。年齢層は20〜90代の方まで幅広く、中でも40~60代の働き盛りの世代が多いですね。糖尿病はほとんど自覚症状なく進行し、血糖値が高くても痛くも苦しくもありません。しかし適切に治療せず放置した結果、数年後に合併症などで苦しむ人たちを私はたくさん見てきました。こうした糖尿病の恐ろしさを早い段階で正しく理解していただけるよう、患者さんに丁寧にご説明することを大切にしています。
新たな治療薬など糖尿病治療も進歩していると伺いました。
新しい効き目・効き方が期待される治療薬が続々と登場し、患者さんの症状やライフスタイルに合わせた治療の選択肢が広がっています。例えば「GLP-1受容体作動薬」はインスリンの分泌を促して血糖値の改善などをめざす薬で、1日に1回、少なければ週に1回の自己注射で効果が期待できます。このほか肥満の患者さんには、体重管理や食欲の抑制をサポートするような働きを持つ治療薬もご用意できます。また、インスリンもこれまでは1日に1回から数回の自己注射が一般的でしたが、2025年に1週間に1回で済む「持効型溶解インスリン製剤」が保険適用となり、これまで「注射は難しい」と敬遠していた方も利用しやすくなるのではないでしょうか。週1回ならご家族や訪問看護師などに注射を手伝っていただくことも考えられますね。
食事療法や運動療法との組み合わせも大事になりますね。

それはもちろんですが、誰もが教科書どおりにできるとは限りません。私自身は血糖値がなかなか改善せずに合併症が起きてしまう前に、薬物療法を始めることもご提案しています。患者さんの中にはインスリンや注射薬と聞くと「そんなに重症なのか」とショックを受ける方もいると思いますが、適切な時期から使うことで血糖値のスムーズなコントロールが期待でき、改善すれば注射薬を減らしたり止めたりすることも可能です。患者さんにはご自身の病気や体の状態、治療薬の作用と使用する狙い、費用、注意点など十分な説明とともに薬物治療をご提案しています。どんな状態にどの薬を処方するかを適切に判断するには長年の経験が重要ですから、当院のような専門的な治療を行うクリニックにご相談いただければと思います。
患者が治療を続けやすいようにチーム力でサポート
糖尿病治療で注意されている点を教えてください。

その方のライフスタイルも考慮して「無理をせずに続けやすい治療」を心がけています。患者さんは、独身の方や既婚の方、子育てや仕事で忙しいなど生活はさまざまで、「会社では注射が打ちにくい」「食事を遅い時間に食べてそのまま寝てしまう」「家族のことに時間が取られ、自分の治療に気が回らない」など糖尿病治療が難しくなる状況も。加えて糖尿病は痛くも苦しくもありませんから、薬の飲み忘れが続くことも少なくないのです。こうした患者さんに「なぜ中断したのですか」と厳しく接しても逆効果なことが多く、当院ではできなかったことを責めず、患者さんの頑張りを認めることを優先しています。さらに担当の看護師が患者さんの悩みなどを聞き、解決方法を一緒に考えたり、アドバイスをしたりと寄り添い、治療を続けてもらえるよう努めます。
患者さんのモチベーションも大事なのですね。
患者さん自身に「病気を治そう」とスイッチが入ることが重要で、そのため当院の医師もスタッフも、ご本人の言葉や行動などから気持ちの動きを見逃さないよう常に注意を払っています。難しい問題を抱えた方もいますが、決して見捨てずに寄り添う姿勢を崩さない。その上で一緒になって解決方法を考えること。この姿勢は、看護師や臨床検査技師、受付スタッフにもお願いしていますし、やってくれていると感じています。また、糖尿病のコントロールがうまくいかない人ほど、糖尿病の治療薬だけではなくいろいろな薬が増えてしまう傾向があり、飲み忘れも増えてコントロールがうまくいかない原因になります。そこをできるだけシンプルにして患者さんが続けやすくするのも、糖尿病治療の専門家の力だと考えています。
チームで治療に取り組んでいることがわかります。

患者さんは医師には話しづらい治療の悩みをスタッフに打ち明けることもあり、多職種によるコミュニケーションは重要です。当日の医師とスタッフ全員が参加する短いミーティングは朝の診察開始前、午前と午後の診察終わりの毎日3回実施し、全員で情報を共有。診療前には看護師や採血のスタッフ、外来担当の看護師などが患者さんから現在の状態などを伺う機会を設け、その内容から「こうした点でお悩みなら違うやり方を試してみましょうか」と提案するなど診療に生かしていきます。必要なら「隣室の管理栄養士に栄養相談もできますよ」と、強制ではなく「良かったらどうぞ」というスタンスで栄養相談を促します。糖尿病患者の療養に関する専門知識を幅広く学んだスタッフもいますし、全員の力で患者さんをサポートしています。
高齢者の糖尿病治療などの知見も踏まえて地域に貢献
検査機器など設備も充実していると伺いました。

大学病院などまで行かなくても、当院で検査が完結できるような体制をめざしています。例えば、血糖値やヘモグロビンA1c、尿検査など、糖尿病に関する検査は約10分で結果を出せるようにしたのは、診察を受けたその日のうちに結果がわかることを重視するから。患者さんが「何かおかしいな」と感じたとき、検査で自分の体の状況を把握し、治療を始めることが大切なのです。また、糖尿病の患者さんは、脂質異常症や高血圧を伴うケースも少なくありません。当院では、腹部超音波や動脈硬化の検査など、その他の生活習慣病に関する検査も可能です。早期発見と早期治療を繰り返すことで10年後や20年後に、糖尿病の合併症に苦しむ人の減少につながればと思っています。
開業されてから現在までの変化をお聞かせください。
開業時に比べてスタッフの人数も増え、患者さんも多数来院されるようになりました。それでもスタッフと協力して限られた時間内でも患者さんと接する機会を設け、糖尿病に関する新たな知見も積極的に導入して、診療のクオリティーの維持・向上に努めています。また高齢の患者さんも多くなり、例えば75歳以上の場合は低血糖になるリスクも考慮して、血糖値の管理目標を若い方に比べて少し緩和するなど高齢者向けの治療も考える必要が出てきました。加えて治療薬の選択肢が増えて、以前のように「飲み薬が効かなくなったらインスリン」という治療法は激減。他の飲み薬を検討したり、複数の治療薬を組み合わせたりする治療によって、患者さんにより適した治療が可能になっています。
今後の展望と地域の方へのメッセージをお願いします。

糖尿病は治療薬の選択肢が増え、患者さんに適した薬の使いこなしにも専門的な知識と経験が求められます。私もスタッフも常に知識をアップデートしながら、診療のクオリティーの維持・向上を図りたいと考えています。診療を続けるには私自身の健康管理も大切で、開業後は1日1万5000歩以上は歩くよう心がけ、診療後に週数回は7、8kmのジョギングを継続。ゴルフはなるべくカートに乗らずに歩いています。糖尿病を必要以上恐れる必要はありませんが、甘く見ていると深刻な合併症を発症することもあります。当院でも糖尿病や適切な栄養・食事について情報発信を続け、地域の健康づくりに役立ちたいですね。