女性に多く生活習慣病との関わりも深い
見逃されやすい甲状腺疾患
新宿金沢内科クリニック
(新宿区/新宿駅)
最終更新日:2024/08/09
- 保険診療
甲状腺疾患とは、一般的にはあまり聞きなれない病名だが、実は女性と関わりの深い病気だという。しかし、例えば、バセドウ病では動悸や息切れ、汗をかきやすいなど更年期障害と似た症状が出るため、見逃されることも少なくない。また甲状腺の働きが低下する橋本病は、放置すると不妊や流産のリスクが高くなるともいわれているそうだ。そこで、長年内分泌の研究や、甲状腺疾患や糖尿病の診療に携わってきた「新宿金沢内科クリニック」の小野田教高院長に取材した。小野田院長は、甲状腺疾患はもちろん甲状腺腫瘍の精密検査に欠かせない穿刺吸引細胞診の専門家でもある。甲状腺疾患や生活習慣病について、利便性の高い駅近のクリニックで専門的な診療を提供する小野田院長の話をぜひ参考にしてほしい。
(取材日2024年7月18日)
目次
バセドウ病や橋本病など女性に多い甲状腺疾患。放置すると循環器疾患や不妊のリスクもあるため早い対応を
- Q甲状腺疾患とは、どのような病気なのでしょうか?
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A
大きく分けると甲状腺機能の病気と、腫瘍があります。そもそも甲状腺とは、喉仏の下にある内分泌器官で、体の代謝や成長などを調節する作用がある甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)によって調節されていますが、何らかの原因で血中の甲状腺ホルモンが過剰になる場合が甲状腺機能亢進症で、代表的なものはバセドウ病です。逆に、甲状腺の働きが低下して血中の甲状腺ホルモンが不足する場合が甲状腺機能低下症で、代表的なものが橋本病です。また甲状腺ホルモンの異常はなくても、甲状腺に腫瘍ができることがあります。多くは良性ですが、がんの場合もあります。
- Q生活習慣病との関わりも深いと聞きました。
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A
そうですね。甲状腺機能低下症の橋本病では、全身の新陳代謝が低下するので、体重増加、血液中のコレステロール増加などが起こり、脂質代謝異常も来しやすくなります。甲状腺機能の異常がわからないまま、脂質異常症の治療だけを行っていても症状の改善は期待できません。また、肥満や舌の腫大、上気道粘膜のむくみなどが起こりやすくなり、代謝機能異常や心臓機能が低下することから睡眠時無呼吸症候群が合併しやすいともいわれています。閉経期以降の女性の5、6人に1人は橋本病といわれていますから、中高年の女性で、生活習慣病や睡眠時無呼吸症候群を指摘された場合は、甲状腺機能の検査を受けることをお勧めします。
- Q検査と治療の流れについて教えてください。
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A
バセドウ病の診断は血液検査で行います。治療法としては飲み薬による内科的な治療、放射線治療、甲状腺を切除する外科的な治療の3つがあります。通常は内科治療から始めて、変化が見られない、副作用で続けられないというような場合は他の2つを検討します。橋本病も血液検査で診断を行い、治療としてはホルモン補充療法などを行います。甲状腺腫瘍が疑われる場合は頸部超音波検査を行います。腫瘍が悪性で手術が必要と思われる場合は、超音波下で甲状腺の内部を確認しながらがんが疑われる部分に針を刺して中の細胞を採取する穿刺吸引細胞診という検査を行います。検査の結果、悪性と判明した場合は高次の医療施設で手術などの治療が必要です。
- Qどのような症状があったときに検査を受けるべきですか?
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A
バセドウ病では、動悸がして脈が早くなる、汗をかきやすくなる、手が震える、食欲はあるが痩せる、下痢、目が飛び出てくるというのが典型的な症状です。橋本病では寒がり、体のだるさ、昼間の眠気、便秘などの症状が起こります。どちらの場合も他の病気にも見られるありふれた症状が多いので、血液検査を受けないと甲状腺疾患の診断はできません。女性の場合は、甲状腺疾患が疑われるような症状があれば、血液検査を受けたほうがよいでしょう。また、首の腫れや首の違和感が気になる場合や、健康診断などで甲状腺の腫れやしこりを指摘された場合は、甲状腺の腫瘍が考えられるので専門の医療機関を必ず受診するようにしましょう。
- Q放置しておいた場合のリスクはありますか?
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A
甲状腺の働きが低下する橋本病は放置していると、不妊や流産のリスクが高くなるといわれており、当院でも最近、不妊治療を行う産婦人科クリニックからの紹介が増えています。甲状腺ホルモンの数値が正常の範囲であっても、低めである場合は妊娠しにくくなるとされていますので、不妊に悩んでいる方は一度、甲状腺疾患の検査を受けたほうがよいでしょう。また、バセドウ病は、動悸や息切れ、汗をかきやすいなど更年期障害と似た症状が出るため、甲状腺機能の異常に気づかず発見が遅れることがあります。動悸など循環器に関係する症状が持続して心不全や心房細胞、血栓のリスクも高まりますので、なるべく早く治療をする必要があります。