山田 智子 院長の独自取材記事
ひまわりクリニック
(浦安市/新浦安駅)
最終更新日:2026/10/02
外来診療と在宅医療の両方に対応し、患者をトータルな視点で診ることで、地域に暮らす人々を支えている「ひまわりクリニック」。山田智子院長は、勤務医時代から対応が難しいケースも含めてさまざまな在宅医療の経験を積み重ねてきた。2014年に同院を開業後も、常に患者本人やその家族と相談しながら、理想の自宅療養の形を実現できるよう努めている。近年、地域のケアマネジャーが不足していることから、2025年には居宅介護支援事業所も新たに開設し、介護支援体制も拡充させている。そんな山田院長に、在宅医療や地域医療への想いを聞いた。
(取材日2026年5月20日)
外来診療も在宅医療も「トータルに診る」クリニック
こちらは外来診療と在宅医療の両方に対応されていますね。

はい。開院時から地域のかかりつけ医として、患者さんをトータルに診るクリニックをめざしてきました。当初は平日の午前が外来、午後が訪問診療でしたが、訪問診療のご希望が年々増え、今は週3回、午前に外来をし、訪問診療は午前午後問わず対応しています。また、より多くの方を受け入れられるよう2023年に院内を改装し、待合室のスペースを広げて診療室も1室増やしました。現在、医師は私を含めて常勤3人、非常勤12人となっています。また、在宅医療や福祉サービスに関する相談室では、3人の社会福祉士が通院から訪問診療への切り替えや社会生活のサポートなどについての疑問や不安にお応えしています。
在宅医療ではどのような診療が受けられるのですか?
医師と看護師が患者さんのご自宅や施設に定期的に伺う訪問診療が主で、容体が落ち着いた方なら2週間に1回程度、曜日と時間帯を決めて訪問します。一般内科を中心に、必要に応じて血液検査や心電図、腹部エコー、エックス線検査などを行い、床ずれの処置や在宅酸素療法などの医療管理にも対応しています。また、急な容体の変化や看取りなど、24時間365日医師につながる体制を整え、夜間や休日も必要に応じて電話でのフォローや往診を行います。訪問看護が必要な場合は、外部の訪問看護事業所と連携し、情報共有しながら療養生活を支えます。初回の訪問診療に先立ち、まず当院の相談員が患者さんのご自宅や施設で、ご本人やご家族と面談を行います。現在の症状や生活状況、ご家族の介護力、お困り事を詳しく伺い、今後の診療内容や費用もご説明します。伺った内容は医師や看護師と共有し、ご本人やご家族の状況と希望を踏まえた診療につなげています。
診療で大切にされていることを教えてください。

訪問診療の患者さんは外出する機会も少ないですから、私たちが訪問することで少しでも「楽しい時間を過ごせた」「良かった」と、感じていただけるよう努めています。患者さんやご家族が望まれていることを早く知り、実行することも大切にしています。実際、患者さんやご家族の言葉が本心と違うことがよくあります。その典型が、患者さんが「もう死んでもいい」と言いながらも本当は「まだ死にたくない」と考えているケースでしょう。それぞれの本音をすくい上げ、本当の願いをかなえたいと思いますし、もし患者さんとご家族の考えにずれがあるならばうまく折り合いをつけ、どちらも幸せになれる訪問診療を実現したいですね。そのためには、ご家庭の内情にも詳しいケアマネジャーの協力が欠かせません。その他介護スタッフや訪問看護師など多職種の協力や、地域包括支援センター、病院の力も借りながら、地域全体で患者さんとご家族をお支えしています。
患者だけでなく家族の悩みや心配事にも丁寧に対応
訪問診療では家族へのケアも重要ですね。

はい、とても重要です。訪問診療は患者さん自身が望む自宅療養の姿を実現し、ご家族の介護も楽になるよう支援するものですから、気になることや困っていることはお早めにご相談ください。ご家族だけで介護を頑張って、本当に行き詰まってからご相談いただくというケースも多くあります。大きな病院などは患者さんやご家族にとってアウェーな場所かもしれませんが、訪問診療では「ホーム」にいるのですから、遠慮せずお話しください。それでも患者さんの前では話しづらいことや抱えている不安があるかと思います。ですので、帰り際には玄関先で必ずご家族の方に「大丈夫ですか」と声をかけ、困っていることがないか確認しています。診療の時間帯にご家族に会えないときは手紙を残したり、後でお電話したりとコンタクトを取り、些細なことでも安心して話していただけるよう心を配っています。
治療のことなどを医師と相談して決めていけるのですね。
身近な場所に医師がいて気軽に相談できれば、患者さんご本人もご家族も気持ちが楽になるでしょう。これは在宅に限らず外来の患者さんも同じです。といいますのも、患者さんがすでに受けた専門的な検査や治療の内容について、「これはどういう意味?」「結局どうしたらいい?」とご相談を受けることが多いからです。つまり、聞いた内容がよくわからなくても、その場で聞き直しにくいようです。疑問や不安が残っていそうな場合には、紹介先の医師に私から問い合わせたり、次の機会にもっとかみ砕いて説明してもらうようお願いしたりするなど、患者さんやご家族が納得して医療を受けられるよう努めています。
新しく居宅介護支援事業所を開設されたそうですね。

実は今、全国的にケアマネジャーが不足していて、介護サービスを受けたいと思ってもケアプランを立てるケアマネジャーがいないために介護サービスを受けられないケースが増えています。そうした状況を改善したいと考え、2025年1月に居宅介護支援事業所「ひだまり新浦安」を開設しました。当院と連携して、浦安市の医療を支えていけたらと考えています。
地域連携で浦安市全体を「安心の医療施設」にしたい
開院された経緯について教えてください。

高校生の時、大好きだった祖父を在宅で看取ったのですが、最期まで付き添ってくれた医師の姿に感動しました。それをきっかけに患者さん一人ひとりと向き合える医師になりたいと思い、医学部に入学しました。卒業後は大学病院の消化器内科に在籍したものの、診療時間が短く物足りなさを感じ、結婚を機に市川市の小規模な病院に移りました。その病院が在宅医療を始めることになり、私も患者さんのご自宅に伺って在宅医療の経験を積むことができました。それから高齢者施設での健康管理へと広がり、舞浜倶楽部ともご縁ができました。その後、子どもの成長に合わせて仕事量をセーブしたいと思い転職を考えていた時、舞浜倶楽部の方に「ここで開院してはどうか?」と、お声がけいただき、開院に至りました。
地域での医療連携についても教えてください。
専門的な検査や手術が必要なときは、順天堂大学医学部附属浦安病院や東京ベイ・浦安市川医療センターをご紹介します。ご家族が家を数日離れるような場合には、患者さんに提携先の病院でレスパイト入院していただくことも可能です。また、グループ内の内科・小児科の「おひさまクリニック」、呼吸器科専門の「ひまわり行徳クリニック」とも連携しています。浦安市全体が大きな医療施設なら、私は一部の患者さんの主治医に過ぎません。けれど、他の場所にもそれぞれ主治医がいて、専門の治療を担当する医師もいて、それらがうまく連携すればお住まいの皆さんが安心できる地域になるはずです。各病院の地域連携の窓口や医師などと常時連絡を取り合う、そんな「顔の見える医療連携」をめざし、地域全体の安心を高めていきたいですね。
今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

当院は、ご本人が認知症と認めたがらないケースや一人住まいの方が認知症になられたケースなどのまだ適切な医療を受けていない方々や、ご家族の認知症で困っている方などを包括的に支援する浦安市認知症初期集中支援チームに所属しています。私は認知症サポート医でもありますから、これからも地域包括支援センターと協力しながら認知症の初期段階での支援をさらに強化したいと考えています。当院は外来から在宅へ、逆に在宅から外来への切り替えをスムーズに行える点が強みです。在宅医療や介護のことで困り事や心配事があれば、相談窓口の一つとしてどんなことでも気軽にご相談ください。

