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河合 利彦 院長の独自取材記事

かわい歯科

(門真市/門真市駅)

最終更新日:2019/08/28

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京阪本線・大阪モノレール門真市駅から歩いて4分。歯科用チェア1台の診療スペースで、有病者歯科診療・障害者歯科診療という仕事に挑んでいる歯科医師がいる。「かわい歯科」の院長を務める河合利彦先生だ。河合院長は大阪大学歯学部の出身で、大学院では摂食嚥下障害や構音障害、睡眠時無呼吸症候群などの機能障害を専攻した。勤務医時代にはがん患者など多くの有病者や障害者の診療を担当。その診察は、口の問題だけでなく、全身の健康、本人家族を含めた生活の充実、心のケアなど、心身の健康の根本への介入を軸とする。それは、もはや歯科の領域を超えていると言っていいだろう。そんな河合院長に、職種を超えて取り組む地域医療の現状や患者への思いの丈、将来に向けたプランなどを聞いた。
(取材日2018年5月25日)

祖父や父の仕事をさらにアップグレード

有病者歯科や障害者歯科の診療を行っているそうですね。

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私の父は歯科医師で、祖父は特別養護老人ホームを経営していました。私が子どもの頃はまだ、歯医者さんの訪問診療はほとんどありませんでした。外来でいろんな患者さんを診るのはどの歯科医師もやっていますが、寝たきりのご高齢の方の口の健康を管理する、それはすごく意味がある仕事なんじゃないかと思い始めたのが高校生の時ですね。そこで大阪大学歯学部に入り、歯科医師免許を取得してからは有病者歯科・障害者歯科を専門にしてきました。開業当時も今も門真市には障害がある方が結構多いんですね。その影響か、市の医師会は在宅医療にすごく熱心で、訪問歯科や多職種連携をするには非常にいい地域だと考えてここでの開業を決めました。

実際には、どのようにして研鑽を積まれましたか?

大学では顎口腔機能治療部といって、摂食嚥下障害はもちろん、構音障害や睡眠時無呼吸症候群、口腔乾燥症など、歯というよりも口の機能を専門的に診るような科に進みました。将来、高齢者や有病者を診る上ではこうした特殊な領域の知識が必要になるだろうから、それを大学病院で学ばなければと思ったわけです。ところが、そういう症状で来られる患者さんには、口以外にもいろいろ全身的な問題があって、そうした疾患や家庭環境などが口の機能にすごく影響していることに気づいたんですね。それで、もっと全身に関わる職種の先生と一緒に仕事がしたいと考え、市立芦屋病院に勤めることになりました。

市立病院での経験はどのようなものでしたか?

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一般的な市民病院なのですが、歯科は一般の開業医の先生が民間委託されていたんです。その先生がすごく魅力的な方で、一般歯科はもちろん、歯科麻酔や口腔外科、障害者歯科も全部1人でこなしておられました。そこに私の摂食嚥下障害や構音障害などの治療を加えれば、かなり広い範囲を網羅できるということで、互いに知識を共有しながら切磋琢磨させていただくことができました。また、病院内でさまざまな医療職の方々と交流して歯科に対する理解も深めていただけましたし、逆に私は普通の歯科医師が知らないような医科の知識を習得できたんです。有病者歯科・障害者歯科診療を行うにあたって、この大学病院と市民病院での経験はとても大きかったと思います。

ケアプランには地域連携が欠かせない

こちらでは、病気や障害のある方を主な対象としていますね。

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当院の患者さんは約半数が肉体的であれ精神的であれ、何らかの問題があって、誰かの助けがないと日常生活を送ることが難しい方です。歯科治療そのものに関しては、たいていのケースは一般の歯医者さんでも可能なんですね。ただ、大切なのは障害者歯科診療に対する理念のあり方で、単に障害がある方の虫歯を治療することではありません。その1本の歯を残すことに情熱を傾けることよりも、患者本人やご家族の歯科以外での生活の問題や希望を丁寧に傾聴し、一緒に整理していくことを意識しています。その過程で築かれる信頼関係が醍醐味だと感じています。

治療にあたって気をつけていることを教えてください。

障害がある方というのは、口以外にもいろんな病気、生活上の不便や経済的なこと、ご家族のことなど、多くの問題を抱えておられます。その中で歯科の位置づけを考えて治療計画を立てないと、通院がものすごく負担になってしまうケースもあるわけです。例えば経済的にもご家族にも恵まれていて、大学病院で何時間でも待てるという患者さん。一方で、例え同じ病態でも身内は遠い親戚だけで家族がなく、治そうという意気込みを失ってしまった患者さん。このお二人では、当然ながら治療計画が変わってきますよね。大切なのは歯科医師と患者さんだけでなく、ご家族・訪問看護師・ケアマネジャーなど、みんなでよく話し合いながら、できれば全員が同じ方向へ進んでいけるケアプランを立てることです。

診療時に大切にしていることは何ですか?

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うちの看板のイラストは私がデザインしたもので、歯の文字と鍋をモチーフにしています。鍋ってみんなで囲みますし、患者さんが食事と会話を笑顔で長く続けられるようにというコンセプトを込めています。そこに口の機能が大きく関わるわけですが、それは一つの手段であって、一番大事なのは心のケアなんですね。まずは患者さんの話を聞くことで、「元気になったら球場へ行って、好きなプロ野球チームを応援したい」などとおっしゃれば、「球場といったらビールでしょう。飲み込みをちょっと診てみましょうか」とか、「声を出してメガホンを叩けるように、リハビリの先生に相談してみましょうか」とか、一つの夢に向かって進んでいけるような話をします。何より、人として同じ目線に立つことが大切ではないでしょうか。「遠くの名医より近くの良医」が私のモットーでもあります。些細なことも、気軽に相談できる地域の歯医者さんでありたいと思っております。

必要なのは「神の手」ではなく「仏の心」

院長が何か趣味にされていることはありますか?

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学生時代は劇団に入って、照明などの裏方をしていました。演劇の面白さは、みんなで一つの目標に向かっていくことです。つらいことがあっても最後はみんなでガッツポーズして笑い合える、そういう瞬間っていいですよね。そこは、先ほどのケアプランの話と一緒で、大切なのは全体の中での役割で、自分の照明にだけ夢中になっていても芝居が成功しなければ意味がありません。歯の1本をパーフェクトに治したといって悦に入っても自己満足に過ぎないのと同じです。今ちょっと考えているのは、聴覚障害のある方を集めてパントマイムや無声劇なんかのイベントを開催することです。社会への恩返しも兼ねて、いつか実現できればと思っています。

今後に向けた展望などがあれば教えてください。

現在進めているのは言語治療に関するシステムです。私はもともと大学でも口唇口蓋裂の言語治療をやっていましたが、子どもの患者さんを大学病院に連れてくるお母さんが大変そうなのをたくさん見てきました。また、言語聴覚士とよく一緒に仕事をしていましたが、口蓋裂言語はあまりに専門的ですので、退職後にそのスキルを生かせる場がないんですね。そこでその両者をマッチさせようと、インターネットのビデオ通話を使って在宅治療や指導を行うことを考えました。これならちょっとしたことで大学病院や言語教室にわざわざ通わなくて済みますし、言語聴覚士の技能も生かすことができます。私自身もPLP(軟口蓋挙上装置)や、舌癖を治す装置を作る技術がありますから、一緒になって取り組めると思います。現在、システム構築は進んでおり、近いうちに実現したいと考えています。

最後に、読者に向けたメッセージをお願いします。

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われわれ医療職に求められていることに、よく「神の手」などと言ったりしますが、どんな病気も治せる「神様」ではなく、決して改善しないような障害や生活の問題に、そっと寄り添ってあげられる「仏様」のようなスタンスを意識しています。最初は障害がある方を診たいというところからスタートし、そこから機能障害の疾患を勉強しました。その後、疾患レベルから全身の健康レベル、さらには地域レベルでのヘルスプロモーション、最近では、患者とその家族の心の在り方へと重きを置く部分が常に変化してきました。これで到達したとは思っていませんが、少しずつ高い次元に向かっているような手応えはあります。患者さんも介助者の方も、つらいことや苦しいこともあると思いますが、地域には仲間がたくさんいるんです。ちょっと勇気を出して電話をいただければ、きっと何かのお力になれると信じています。

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