患者の健康管理を重視し医療効率化へ
高齢化社会の課題に取り組む
薬院内科循環器クリニック
(福岡市中央区/薬院駅)
最終更新日:2024/04/15


- 保険診療
日本の心不全患者数は非常に多く、その数は超高齢社会の進展を受け2035年までさらに増加していくといわれている。このままでは、入院が必要な心不全患者が病院にあふれ、従来の病院完結型医療では受け止めきれない事態が予測されるという。「今、医療の流れは、病気と共存しながら地域で生活する地域完結型医療へ動き出しています」と語るのは、「薬院内科循環器クリニック」の村岡聡一院長。高齢化に伴い一層ニーズの高まった在宅医療や、患者のヘルスケアを重視した診療に努める医師だ。近年、新型コロナウイルス感染症の流行によって浮き彫りにもなった、個人の健康管理の問題。その解決に向けて取り組む村岡院長に、現代医療の課題や独自の取り組みについて語ってもらった。
(取材日2023年12月15日/情報更新日2024年4月15日)
目次
医療現場におけるさまざまな課題。その解決をめざし、クリニック独自の取り組みで医療DXを推進
- Qまずは在宅医療の現状について、お聞かせいただけますか?
-
A
▲患者一人ひとりと向き合いアドバイスをしてくれる
近年は高齢化の影響もあり、在宅医療に対応できる看護師・介護士が増え、多職種連携が盛んに行われるようになってきました。さらに、独居の方が増加している背景から、各クリニックの専門性を生かした在宅医療に取り組むクリニックが増えてきています。例えば、新型コロナウイルス感染症の流行下では在宅での看取りを希望される方が増加し、心疾患や心不全を専門としたクリニックの在宅医療が充実しました。当院でも2010年から在宅医療に注力し、近隣のクリニックと連携しながら患者さんの看取りまで行っています。一般的ながん末期の患者さんをはじめ、専門の循環器疾患や神経難病、医療的ケア児など幅広く対応できるのではないでしょうか。
- Q在宅医療の課題、そして日本の医療の課題は何でしょうか?
-
A
▲現在の医療における自己管理の大切さを徹底解説
近年は訪問看護ステーションなど在宅医療の裾野を広げる施設も増え、土壌が整ってきました。そうなると次は底上げが課題です。地域間連携をより強固にし、神経難病の方の診療や小児在宅医療など、より幅広く診ていく必要があるでしょう。また、在宅医療はコロナ禍を機にさらに多様化しました。今後は高いコミュニケーション能力を持ち、多くのニーズに応えられる医師の育成が求められるはずです。一方、日本の医療全体としては、同じく質の底上げも重要ですが、医師の人員確保や働き方改革、人件費といった慢性的な課題もあります。保険・医療・介護の情報やデータを用いた医療DXで効率化を図り、いかに業務負担を減らせるかが鍵になります。
- Q医療現場には、具体的にどんな課題があるのでしょうか?
-
A
▲より良い医療を提供するために、スマホアプリの開発にも携わる
主にマンパワーの不足でしょう。ほかにも、患者さんと医師の関わり方が今までのような形ではなくなると思います。例えば、近年、新型コロナウイルス感染症の流行を機に多くのクリニックがオンライン診療を導入しましたよね。その流れを見ると、従来のような外来診療中心の医療では10年後、通用しないのではと思います。すると、医師の働き方改革や労働人口減少により、医療現場の生産性向上が急務であり、日本の医療構造そのものを大きく改革しなければ、実現しないことも多いのではと危惧しています。
- Q医療現場の課題解決には、患者の健康管理も大切だそうですね。
-
A
▲現代の多角的な医療課題に真摯に向き合う
ええ。例えば患者さんが他院で受けた検査の結果をなくされ、再度採血が必要になるというケースは少なくありません。そんなとき、以前の検査データがあれば再検査は不要ですよね。そうした事例から、誰もがヘルスケアを身近に感じ、より正確な医療を享受できるツールが必要と考え、スマホアプリを開発し診療に役立てています。これにより、アプリに記録した他院の検査データを見せてもらうこともできます。また患者さんの食生活を把握できれば指導もできますし、糖質と脂質のどちらを制限すべきかなど患者さんご自身で判断しやすいでしょう。そのほか、チャット機能を活用することで、入退院時に多職種・多施設とスムーズに連携しやすいのです。
- Q今後、アプリをどのように診療に役立てていこうとお考えですか?
-
A
▲情報共有だけでなく、記録としても使うことが可能
例えば、患者さんの情報をPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)、医療者側の情報をEHR(エレクトリック・ヘルス・レコード)と言いますが、この2つをどのように統合していくかによって、アプリの便利さや、診療に与えるスピード感がずいぶん変わってくると考えています。このアプリは、医療者側が作ったデータをPHRとして患者さんにお渡しすることもできるので、他の施設でも効率的に医療を受けることができるはずです。また、医療者側にとっても、多大な時間を費やしていた患者さんの情報収集を容易にすることが期待できるため、今後さらに、マンパワーの問題など診療における課題解決に役立てていきたいと考えています。