木暮 悦子 理事長の独自取材記事
木暮クリニック
(川崎市高津区/溝の口駅)
最終更新日:2024/09/12

溝の口駅南口から徒歩5分、高津区役所正面のメディカルモール3階にあるのが「木暮クリニック」だ。パステルカラーで色調が統一され、優しいクラシック音楽が流れる居心地の良い雰囲気の同院は、木暮悦子理事長が専門である内視鏡検査で消化器のがんを早期発見、早期治療することで、一人でも多くの命を救いたいと考え開院。現在は、先進の内視鏡検査システムを用いた経験豊富な女性医師による検査を受けることができると、広い地域から多くの患者が訪れている。「死因の1位が大腸がんである女性に、大腸内視鏡検査を受けてほしい」と語る木暮理事長に、同院のことやこれまでの歩みを聞いた。
(取材日2020年4月22日/更新日2024年6月25日)
内視鏡検査による消化器のがんの早期発見に力を入れる
こちらは、どのようなクリニックですか?

当院が最も力を入れているのは、内視鏡検査による消化器のがんの早期発見と早期治療です。その中でも私の専門は大腸内視鏡検査と治療なのですが、女性の死因の1位は大腸がんで、それで死なないためには、早期発見と早期治療しかないんです。そこで当院では、検査精度の高さはもちろん、痛みなどできるだけ患者さんへの負担軽減にもこだわり、検査を受けていただきやすい環境を整えることで、がんを早期発見・治療につなげています。また、肝臓や胆嚢、膵臓を含む消化器内科や、かかりつけ医として風邪や高血圧、脂質異常症、糖尿病、花粉症などの内科一般の診療も行っています。
負担の少ない大腸内視鏡検査とは、具体的にどのようなものでしょうか?
大腸内視鏡検査の痛みは、内視鏡を腸の奥へ進める時に腸が引っ張られて伸びることで感じます。そこで当院では、少量の空気を入れながら大腸を伸ばさずに、ほぼ直線的に奥まで挿入する「軸保持短縮法」で検査を行っていますので、痛みを感じることはほぼないと思います。さらに、必要に応じて鎮静剤を使うので、患者さんはほとんど眠っているような状態で苦痛を感じないように検査を受けることができます。また、大腸ポリープを切除する必要があるときには、比較的小さなものであれば切除後の出血が少ない「コールドポリペクトミー」という方法で行い、検査後の腹部膨満感が少なくなるよう検査には炭酸ガスを使用するなど、少しでも患者さんへの負担が少なく、安心して検査を受けることができるように工夫をしています。
病院との連携体制についても教えてください。

受診された患者さんに少しでも良い医療が提供できるよう、病診連携にも力を入れています。以前から非常勤の男性医師たちによる内視鏡検査も実施しており、いずれも消化器内視鏡検査や治療に注力する病院から派遣されている精鋭の先生たちです。また、検査の結果で病院への紹介が必要になった時にも、大腸がんならこの病院、肝臓や胆道、膵臓ならこの先生、というように病気や臓器によってそれぞれ最適だと考えられる病院や医師へ紹介をしています。私が信頼を寄せる先生方との幅広い連携体制を生かし、内視鏡検査や消化器疾患については、地域でトップの医療を提供できるよう努めています。
大腸がんは、早期発見できれば治療が可能
ほかに工夫していることはありますか?

検査結果の説明を検査だけなら翌日、ポリープ切除を行った場合には、その病理検査の結果が出る10日目以降にしています。当日中に結果の説明を受けられるクリニックも少なくありませんが、検査が終わって鎮静剤の効果がなくなるのを待ってから説明をしようとすると、特に検査をする人数が多い日は患者さんを長時間お待たせしてしまうことになるんですね。それに、一定時間が経過しても鎮静剤の影響が残り、説明を受けても内容を忘れてしまう患者さんもいますから、緊急を要する場合を除いては後日にゆっくりと、モニターで実際の画像を見せたり、絵を使ったりしてわかりやすく説明したほうが、患者さんにもしっかりと理解してもらえると考えています。
先生の熱意と真摯さに、きっと患者さんも安心されるのではないでしょうか。
そう思っていただけるのであればうれしいですね。私は患者さんと一緒に、ずっとがんと闘ってきました。医師としての今日までを振り返るといろんな思い出が甦ってきますが、今でも決して忘れることができない出来事があります。勤務医時代ですが、ある末期がんの男性患者さんを担当していました。その患者さんはがんが見つかった時点でかなり進行しており、入院されてから1ヵ月で旅立つことになりました。その方には3人のお嬢さんがいたのですが、そのうちの一人が、私がその子の父親を献身的に治療している姿を見て「私も先生みたいなお医者さんになりたい」と言ってくれたんです。そして彼女は医学部への進学をめざしました。それは本当にうれしく、今も大切な出来事の一つです。
設備にもこだわっていると伺いました。

常に先進のものを導入するなど、大きな病院に行かなくても同等かそれ以上の検査を受けられる体制をめざしています。現在は、特殊な光を当てることで組織表面の微細な血管を鮮明に表示でき、がんなどの早期病変が発見しやすくなるNBIが搭載された新鋭のハイビジョン内視鏡システムを導入しています。さらに大腸内視鏡については、最大で約135倍まで画像を拡大できる拡大内視鏡を使いますので、その病変が腫瘍なのか、腫瘍であればがんなのか、良性のものなのかなどを組織を採取することなく、その場で診断することが可能です。また、上部でも拡大内視鏡を用意しており、患者さんが希望をすれば胃と大腸内視鏡の同時検査も可能です。
経験豊富な教授のもとで大腸内視鏡の経験を積む
先生は、なぜ医師を志したのですか?

祖父は医師で父は歯科医師と、おそらく私の周りに医療に携わる者が多かったからだと思います。父は私に好きな道に進めばいいと言ってくれましたが、それでもやはり私が興味を持ったのは医学の世界でした。それで医学部に進学し、いろいろな診療科を回ってみましたが、その中で内視鏡に特別に関心を持つようになったんです。内視鏡というのは、モニターを通して実際に病気そのものを見ることができます。処置すべき部分、さらに踏み込んで言うなら闘うべき相手がそこにしっかり映っているので、内視鏡の分野は大きなやりがいや興味が持てる分野だと思ったんです。
その後は、どのような道を歩んだのですか?
医師に限らず内視鏡手術や大腸がんに詳しい一般の方の中にも、工藤進英教授の名前を知っている人はいると思います。大腸がんの治療で国内はもちろん世界的にも知られる教授で、私はその工藤教授のもとで経験を積む機会に恵まれ、秋田赤十字病院や昭和大学横浜市北部病院で内視鏡による診断と治療をご指導いただきました。尊敬する教授のもとで研修、研究、そして診療するわけですから、必死で勉強しました。今だからこんなに笑いながらお話しできますが、その頃はめちゃくちゃ体育会系というか、朝早くからのカンファレンスに、患者さんの検査や診察をして夜は研究と、本当にハードな毎日でしたね。ただ患者さんを診るだけでなく、大腸がんの研究も私に課せられた仕事でしたから、ほとんど病院に寝泊まりしている状態でした。生活のほとんどが内視鏡を中心に回っていました。
今後の展望とメッセージをお願いします。

開院から数年がたち、川崎市内や東急田園都市線沿線にとどまらず、東京都内や千葉県からもわざわざ患者さんが来てくれるようになりました。そんな患者さんの期待に応えるためにも医療の知識や技術、そして設備も常にアップデートを欠かさずに、地域に貢献できるクリニックでいたいです。そして、特に地域を意識したわけではないのですが、私はスポーツ全般が、中でもサッカーが大好きで地元のチームを応援しています。だからというわけではないですが、これまで以上に地域に根づいたクリニックにもしていきたいですね。そして当院は、精度にこだわった内視鏡検査を体への負担や痛みを少なく行うことで病気を早期発見し、治療につなげることが第一の目標です。加えて、かかりつけ医としての内科一般の診療もしていますから、体の具合が悪いときには気軽に受診をしてもらえるとうれしいですね。