三戸岡 英樹 院長の独自取材記事
芦屋三戸岡クリニック
(芦屋市/芦屋駅)
最終更新日:2022/05/19
芦屋駅すぐの商業施設内3階にある「芦屋三戸岡クリニック」は、完全自由診療の内視鏡専門クリニック。内視鏡一筋40年の三戸岡英樹院長が、自身も患者も納得できる高品質な医療の提供をめざし、2006年に開院した。内視鏡検査は苦痛を伴うイメージが強いが、長年培ってきた経験を生かし痛みに配慮した検査を実践している。そんな三戸岡院長に、内視鏡との運命の出合い、患者への接し方、現在力を入れている食生活改善指導などの取り組みについてたっぷりと話を聞いた。
(取材日2019年4月19日/再取材日2022年1月20日)
医師人生を180度変えた、内視鏡との出合い
先生が医療の道を志した理由を教えてください。
祖父と父が医師という家系に生まれたため「何となく」医師をめざしたというのが本音です。ですから運よく医学部に合格しても不真面目でしたし、医師国家試験を通過した後もやりがいを見い出せず「頑張ったのになぜこんなことになってしまったんだろう」と悔やむほどでした。しかし研修を終え、須磨赤十字病院(現・神戸赤十字病院)で勤務をスタートした時に内視鏡に出合ったんです。それまで内視鏡と言えば診断しかできず手術はメスを使って体を切るしかなかったのですが、当時は診断から治療へと移行していく黎明期。内視鏡から電気メスを出して、体を切らず負担をかけにくい低侵襲の診断医療が提供できるようになった時期でした。自分で病気を見つけて同時に治療できる。このやりがいある医療に出合った瞬間の喜びは一生忘れませんし、そこから一気にのめり込んで、あっという間の40年です。
内視鏡とは運命の出合いだったのですね。
指導してくださった故玉田文彦先生には今も感謝しています。玉田先生は手取り足取り教えるようなことはせず「責任は私が取るから自由にやりなさい」と若手にさまざまな経験を積ませてくださいました。私は内視鏡が大好きになり、どう診療に取り組むのか自ら探求していったんです。アメリカやヨーロッパに行ってその技術を学んだり、研究会で論文を発表したり、内視鏡機器メーカーの開発に協力したり、ヨーロッパ、南アメリカ、アジアで手技を見せるライブデモンストレーションを行ったりと、内視鏡分野を「自らの力で切り開いていく」というきっかけをくださったのが玉田先生です。
開業までの経緯を教えてください。
須磨赤十字病院から神戸海岸病院、神戸海星病院の消化器病センター長などを経て、2006年4月に開業しました。神戸海星病院では症状があって来られた患者さんの検査予約が2~3ヵ月先と、かなりお待たせしてしまうような状況でした。私も朝から夕方まで外来診療、夕方から深夜まで検査と患者さん対応、帰宅後に食事をかき込んで寝るという生活。あまりにも私自身が不健康だし、私の信念を理解してついてきてくれる看護師さんらスタッフの体ももたない、病院のシステム上の都合で患者さんに不便をかけているなど、内視鏡が大好きなのに「うまくいかない」と考えるようになったんです。その頃、親族の企業が海外に支店を構えている関係で、現地での完全自由診療クリニックの開業話が持ち上がりました。結局海外には行きませんでしたが、自分が思うクオリティーを追求できる自由診療専門という発想に可能性を感じ、開業を決意しました。
品質追求。寝ている間に終わらせる内視鏡検査
クリニックの特色を教えてください。
当院は全国的にも珍しい、自由診療のみの内視鏡専門クリニックです。内視鏡の検査は一生に1回行って終わるわけではありません。例えば大腸の内視鏡でしたらポリープ切除して3年に1回、胃の場合であればピロリ菌を持っている方は年1回、持っていない方は3年に1回、定期検査を推奨しています。そうしていくことで仮にがんなど疾患が見つかっても、初期に見つけることが期待でき、内視鏡を活用して体をほとんど傷つけずに手術して完治をめざすことが可能です。そのためには、まずは気軽に検査を受けてもらえるよう「つらくない」「痛くない」環境が重要。拡大内視鏡をはじめとする新鋭の機器を備え、意識下鎮静法や経口色素カプセル法などを用いた医療を提供しています。
内視鏡は苦痛を伴うイメージがある方も多いのではないでしょうか。
当院の内視鏡検査は、鎮静剤を使用し完全に寝ている間に検査が終わります。患者さんには「当院には昼寝しに来てくださいね」と言っているくらいですよ。恩師から植えつけられた「どんどん新しいことにチャレンジする」という精神で、さまざまな鎮静剤などを試し、どうしたら患者さんが楽に検査を受けられるかを常に考え続けてきました。開業してからも新しい鎮静剤は出てきており、組み合わせ使用などいろいろと研究をして、私自身もレベルアップしていると考えています。完全自由診療クリニックの開業は大きなチャレンジでしたが、その代わり自分が思うクオリティーをとことん突き詰めたかたちで検査ができています。
患者さんと接する際に心がけていることは何でしょう。
医師と患者さんという立場だと、絶対的に医師のほうが上の立場になってしまうんです。昔から嫌と言うほどそういうケースを知っているので「絶対にそうなってはいけない」と常に意識しています。私自身ははっきり言って偉くも何でもない。私は診療して治すための方向づけをしてるだけで、病気を治しているのは患者さんでしょう? 患者さんの体が健康になるための手助けや方向づけをしているだけで、治すのは患者さんなんですよ。一般的に言うと、日本の患者さんは医師に依存しすべてを委ねすぎる傾向があるため、調子に乗ってしまう医師が少なからずいると考えています。私はそんな医師にだけはなりたくないんです。
定期検査で早期発見・治療。予防のための食生活指導も
注力している診療や取り組みなどありますか?
日帰りで完結できる内視鏡治療を追求しています。同じベッドでも自宅のほうがリラックスできるのは当然だと思うので、体調の急変に備えてコミュニケーションさえ取れれば、手術も日帰りで行えるのが一番ですね。現在は携帯電話も普及しているのでその点は問題ありません。ただしリスクが高く、入院しなければならない人もいらっしゃいます。私は現在も神戸海星病院で客員部長を務めており、月2回ほど行って手術を行っていますが、当院で検査し入院が必要だと判断した患者さんは、神戸海星病院で自ら執刀しています。一方、たくさんの人のがんを内視鏡で見つけ治療してきましたが、がんをつくってしまった体の本質を治しているわけではありません。そのための断食と食生活を中心とした生活習慣改善への取り組みを行っています。
食生活改善について詳しく教えてください。
日本の内視鏡の技術は世界的に見ても進んでいると言われていますが、近年は2人に1人ががんになる時代と言われるように毎年患者数は増えているんです。医療レベルは上がっているけれど予防ができていない。患者さんの体を根本的に改善したいという思いから、クリニック内に健康な腸をテーマにした教室を開くための施設を併設しました。内視鏡でがんを発見し、早期で治すことができた患者さんには今後はこれまで以上に健康になっていただき、再発も防止したい。そのためには断食、バランスのいい食事、適度な運動など生活習慣の見直しが欠かせないと考えています。ここでは私自身が断食、食事や運動を実践し、栄養学の先生とも交流を深める中で、良いと思うことを取り入れて患者さんに指導しています。
読者へのメッセージをお願いいたします。
年齢的に言えば、40歳を過ぎたら1回、50歳を過ぎたら症状の有無に関わらず検査を受けていただきたいですね。例えば大腸がんであれば、内視鏡で取れる初期段階であれば自覚症状は起きないんです。私の経験で言えば、大腸がんや胃がんで亡くなる方は内視鏡を受けた時がすでに遅く、早期発見ができなかったケース。ですから無症状のうちに検査を受けるのが重要です。定期的に検査を受けていれば、大腸ポリープや初期のがんが発見されても、体を大きく傷つけずに内側から臓器を欠損せずに治療することが望めます。さらに当院では疾患の治療と同時に、今後の体をより健康にする手だてを伝えていく医療を提供していきたいと考えています。教室の開催もその一例。病気にならない体づくりのために、これからも注力していきたいですね。
自由診療費用の目安
自由診療とは胃内視鏡検査/5万円~、大腸内視鏡検査/8万円~、内視鏡的洗浄液注入法/1万5000円、ESDを含む早期がん(胃・大腸・直腸)の日帰り手術/12万円~(診断込)