牛田 美帆 先生の独自取材記事
英クリニック
(津市/久居駅)
最終更新日:2026/10/15
吹き抜けの高窓からやわらかな陽射しが差し込む、明るく落ち着いた待合室。その光に重なるような穏やかな笑顔を見せるのが、牛田美帆先生だ。牛田先生の父である佐々木英人理事長が2006年に開業した「英クリニック」で外来診療を担い、現在は一般内科に加え、専門である糖尿病・内分泌・甲状腺を中心に診療している。総合診療科で幅広い内科疾患を学び、その後、糖尿病・内分泌内科で専門性を磨いてきた。「私自身も食べることが大好きなので、患者さんの気持ちはよくわかるんです。おいしい物はやっぱり食べたいですよね」とほほ笑む牛田先生。患者の話に丁寧に耳を傾け、生活に取り入れられる治療を一緒に考えることを大切にしているという。そんな牛田先生に、これまでの歩みや専門診療、患者と向き合う中で大切にしていることについて聞いた。
(取材日2026年10月1日)
自分自身の経験も、患者に寄り添う力に
こちらで診療を始められた経緯について教えてください。

父が理事長を務めているクリニックですので、私がいずれ継承することは以前から念頭に置いていました。子どもの学校や家族の状況も考えながら、少しずつ外来を担当する日を増やしていき、本格的にこちらで診療を始めて今年で5年目になります。今は父が外来に立つことはなく、基本的に私が外来診療を担当しています。一方で、以前勤務していた小牧市民病院では、現在も糖尿病・内分泌内科専門の外来を続けています。当院へ移る際に「外来を続けてほしい」とお声がけいただき、当院の休診日に診療しています。地域のクリニックでは幅広い症状の患者さんを診ますが、病院では専門領域に特化した診療を行います。幅広く診ることと、専門性を深めること、その両方から学べることがありますので、これからもできる限り大切にしていきたいと思っています。
それぞれ異なる診療に携わりながら、お母さまとしての顔もお持ちなんですね。
そうですね。クリニックの診療、病院での専門の外来、そして家庭では母親としての生活があり、毎日慌ただしく過ごしています。ただ、そうした経験が患者さんとの診療に生きることもあります。当院は女性の患者さんが比較的多く、診察では病気のことだけでなく、ご家庭やお仕事、お子さんについて話してくださることも少なくありません。私自身も仕事や子育てを経験しているからこそ、患者さんのお話に共感できる部分があります。その方がどのような生活を送っているのかを知ることは、診療を考える上でも大切です。自分自身の経験を重ねる中で、患者さんの生活背景を想像できる幅も少しずつ広がり、それが日々の診療にも生かされているのではないかなと感じています。
現在はどのような患者さんが多く受診されていますか?

以前から通院されているご高齢の方に加えて、甲状腺の診療を行っていることもあり、最近は若い世代の方も増えています。受診理由はさまざまで、風邪や発熱といった一般内科の症状から、健康診断で指摘された生活習慣病、甲状腺の相談まで幅広く診ています。甲状腺の病気は更年期に見られる症状と重なることもあるため、「更年期なのか、甲状腺の病気なのか」と心配される方も多く、鈴鹿や松阪方面、奈良県との県境に近い地域などから来てくださる方もいます。また、糖尿病については、自覚症状がないまま悪化してしまう方もいます。糖尿病予備群や境界型の段階でも、気をつけられることはありますので、健康診断で指摘を受けた時点で一度ご相談いただけたらと思っています。
「異常がない」で終わらせず、その先を一緒に考える
牛田先生が糖尿病・内分泌内科を志したきっかけは?

患者さんの気持ちに自分自身が共感できたことが大きかったですね。糖尿病は、食事や運動など毎日の生活と深く関わる病気です。私自身も食べることが好きなので、「おいしい物は食べたい」「運動はできればしたくない」という気持ちはよくわかります。治療が必要だとわかっていても、生活を大きく変えることは簡単ではありません。できないことを責めるのではなく、その方の気持ちや生活を理解した上で、続けられる方法を一緒に考えていく。そうした診療が、私自身に合っていると感じたんです。また、糖尿病は早期に介入することで、進行や合併症を防いだり抑えたりすることが期待できます。患者さんの気持ちや生活に寄り添いながら、少しでも良い方向へ向かえるよう長く関わっていけることにも、魅力を感じています。
これまで多くの経験を積まれた中で、印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
総合診療科にいた頃、上司の先生から学んだことが、今の診療にも強く残っています。その先生は、体の病気であっても心の問題であっても、まず患者さんの困り事を受け止めることを大切にされていました。検査をして異常が見つからなくても、患者さんの症状やつらさがなくなるわけではありません。「大丈夫でしたよ」で終わるのではなく、何に困っているのかを伺いながら、別の診療科への受診も含め次の道を一緒に考えていく。その姿勢は、今も大切にしています。もし診察中に涙を流されるようなことがあれば、「それだけ今まで困ってこられたんだろうな」と思いながら、できるだけお話を伺うようにしています。
日々の診療において大切にされていることは何でしょうか?

まずは、患者さんの困り事をご自身の言葉でお話しいただくことを大切にしています。標準的な治療を基本としながらも、生活のリズムや仕事、食事、運動習慣は一人ひとり違いますので、丁寧にお話を伺い、その方の生活に取り入れやすい方法を一緒に考えていきます。また、検査も重視しています。糖尿病や内分泌の病気は、だるさや発汗、動悸、体重の増減など、はっきりしない症状として現れることもあります。特に更年期の年代では「年齢のせいかな」と思われがちですが、甲状腺などの病気が隠れていることもあります。最初から決めつけず、必要な検査を行い、体の病気がないかを確認するようにしています。患者さんが「この先生になら話してもいいかな」と思える関係をつくりながら、無理なく続けられる治療を一緒に探していきたいと思っています。
曖昧な症状だからこそ、きちんと調べることを大切に
スタッフの皆さんについてもお聞かせください。

スタッフには、朝礼などの機会に「患者さん一人ひとりに丁寧な対応をお願いします」と、その都度伝えるようにしています。ミスを防ぐことは医療機関として当然大切なことですが、それと同じように、患者さんへの言葉のかけ方や接し方も大切にしたいと思っています。忙しい時間帯には、どうしても慌ただしくなってしまうことがあります。それでも、そういうときほど一人ひとりの患者さんに対して丁寧に接することを忘れないようにしてほしいと伝えています。患者さんが安心して受診できるクリニックであるために、私だけではなく、スタッフみんなで丁寧な対応を積み重ねていけたらと思っています。
これから、どんなクリニックにしていきたいと考えていますか?
何か困ったことがあったときに、「まずはここで相談してみよう」と気軽に思っていただけるクリニックにしていきたいと思っています。必要に応じて他の医療機関へつなぐこともできますので、「こんなことで受診してもいいのかな」と構えずにご相談いただけたらうれしいですね。当院は父が2006年に開業し、長く地域の皆さんに支えていただいてきました。私が外来を担当するようになってからは少しずつ診療体制も変わり、現在は一般内科に加えて、専門である糖尿病・内分泌・甲状腺を中心に診療しています。以前から当院をご存じの地域の方にも、現在の診療内容を少しずつ知っていただけたらと思っています。
読者にメッセージをお願いします。

動悸や発汗、だるさ、体重の増減などの症状の中には、甲状腺の病気が隠れていることもあります。気になる症状が続いているときには、一人で抱え込まずにお話を聞かせてください。検査をして問題がなければ、それも一つの安心につながりますし、病気が見つかれば適切な治療につなげることができます。糖尿病についても、健康診断で血糖値を指摘された方や、糖尿病予備群と言われた段階からご相談いただきたいですね。また、すでに治療を受けている方でも、「今の治療でいいのかな」と迷われることがあれば、気軽にご相談ください。治療の選択肢も増えていますので、その方の生活に合わせながら、一緒に続けられる方法を考えていければと思っています。地域の皆さんにとって、体のことで困ったときに気軽に相談できる場所でありたいですね。

