一山 茂樹 院長の独自取材記事
いちやま整形外科
(伊丹市/新伊丹駅)
最終更新日:2025/02/12

阪急伊丹線新伊丹駅の目と鼻の先にある「いちやま整形外科」は2006年に開業し、地域住民に寄り添う医療を提供してきた。「患者さんには、最初に来られた時より少しでも悩みを解消して帰ってほしい」と話す一山茂樹院長は、痛みの緩和を図るとともに生活の質の向上を目標に据え、信頼できるスタッフとともに診療にあたっている。特別支援学校の学校医としてなど、さまざまな立場の人のために日々奔走する忙しい毎日の中で、患者一人ひとりに温かく接することを常に心がけているという一山院長。同院での何げない会話を楽しみに、通う患者もいるそうだ。開業して約20年、これまでの歩みや日々の診療にかける想いを聞いた。
(取材日2025年1月17日)
一人ひとりの症状に合わせた適切な治療の提供をめざす
医師をめざしたきっかけや、この地で開業された頃の様子についてお聞きします。

私が高校生の頃は医学部をめざす学生が多かったというのもありますが、親戚が病気で若くして亡くなってしまったことも、医師をめざすきっかけになったかもしれません。大学では脊椎領域を専門に学び、その後は関連病院に勤めました。自宅は豊中市ですが、家族が伊丹市に住んでいた縁で、2006年にこの地で開業しました。それまで勤めていた病院からは遠く、この街に知り合いもいなかったので、開業当初はうまくいくかどうか不安もありました。しかし、地域の皆さんの支えがあったからこそ、約20年にわたって続けてこられたと思っています。
患者層について教えてください。
50代以上の方が多く、7割~8割はご高齢の方でしょうか。腰痛をはじめ、膝や首が痛いという方が多く来院されますが、整形外科のリハビリテーションに来られる方は基本的に元気な方が多いように思います。今は80代や90代の方々も、とても元気でいらっしゃいますよね。できるだけ自分のことは自分でやりたいという意識をお持ちのように見えます。90代の患者さんから、「また元気になって歩きたい」という声を聞いたこともあります。しかし、最初から意欲的な方ばかりではないので、なんとかして自力で動いてもらえるように、こちらから働きかけていくのも大事なことだと思っています。
スポーツ整形にも力を入れているそうですが、若い患者さんもいるのでしょうか?

スポーツ整形に関しては、腰痛や捻挫、突き指などで来られることが多く、若い方も来院されます。もし骨折していたらしばらく休んでもらうしかありませんが、「次の試合に出たいからどうしても治してほしい」と言われた場合には、ケースバイケースですが、どうすればできるだけ休まずに継続していけるか考え、一人ひとりの症状に合わせて適切な治療プランをつくります。そこから生活の質を向上させることにもつながればとも思っています。あとは、若い世代といえば、40~50代の方が関節リウマチで来られることが多いです。その場合は、定期的に通院していただき、飲み薬や注射で痛みの改善を図りますが、状況を見極めて新しい薬に変えていくこともあります。普段の生活でどのようなことに苦労されているかなども詳しく聞いて、治療に生かすようにしています。
基本的には自力で動こうとすることが大事
診察の際、重視しているポイントはありますか?

一般的な腰痛や膝の痛みなどの場合は、骨折などをしていなければ、とりあえず様子を見ながらゆっくり休んでもらうようにしています。しかし、「歩けない、動かせない」といった場合は、緊急性の高い病気が隠れている可能性も考えながら診察します。滅多にないですが、がんが転移していることもあり得ますので、特殊な場合は市民病院などに紹介することもあります。
患者さんと接する際に心がけていることがあればお聞かせください。
初診時はとにかく痛みにアプローチして、来院された時より少しでも悩みが解消されれば、と思っています。また、難しい医学用語などは使わず、なるべくわかりやすく説明するようにしています。患者さんは痛みを抱えて来られるわけですし、ご高齢の方も多いので、できるだけ優しく接することも心がけています。患者さんの中には、私やスタッフと何げない会話をすることを楽しみに来る方もいて、時には「ここでしか言えません」なんて言いながら、自宅での話をしてくださることもありますよ。「来て良かった」と言われるのが一番うれしいですが、リラックスして心を開いてもらえている、というのもうれしいですね。
リハビリテーション室が充実しています。家庭での運動方法などについてもアドバイスしているのでしょうか?

開業当初からリハビリテーションには力を入れたいと思って設計しました。基本的には、とにかくできるだけ日常的に自力で動いたり、歩いたりしようとすることが大事です。痛みがあるとどうしても動かなくなりがちですが、寝たきりになるのを予防するためにも、励ましの声をかけ、少しでも動けるように導いていきます。最近はご高齢の方の圧迫骨折や骨粗しょう症も多いです。骨折をしてしまったとしても、頑張れば少しずつではありますが、動けるようになることも望めます。膝が痛い場合だけは無理して歩かず、もし乗れるようなら自転車にしていただくように伝えるなど、一人ひとりの方とコミュニケーションを取り、状況に合わせてアドバイスしています。
スタッフとともに親身になって患者に寄り添う
看護師や理学療法士など、スタッフの方とはどのように連携しておられますか?

スタッフとは何か困ったことがあれば常に相談し、情報交換するようにしています。ベテランのスタッフが多く、15年ほど勤めているスタッフもいます。いつも変わらないスタッフが応対することは、患者さんの安心感にもつながっているかもしれません。医療技術を駆使したり設備を充実させたりするだけでなく、患者さんに寄り添う親身な対応ができるように心がけているので、スタッフを採用するときは真面目で優しいと感じる方を選んできました。これまでの約20年間、スタッフが患者さんとのコミュニケーションを大事にし、日頃いろいろなことに気を使いながら業務にあたってくれていると思っています。
日常の診療以外でも、地域の特別支援学校などに出向いて活動されているそうですね。
地域医療や障害者医療にも貢献できればという考えから、特別支援学校の学校医などを引き受けています。健常者とは治療の方法が違ってくるので難しい面もありますが、この活動を通じて、脳性麻痺や珍しい病気の方、車いすで生活している方とも出会い、世の中には障害がある方がたくさんいることを改めて知りました。すでに特定の医療機関にかかっている方がほとんどですが、もし何かのご縁で当院に新しい患者さんとして来られた場合には、この経験を生かし、できる限り対応したいと思っています。
地域の患者さんやそのご家族に向けて、メッセージをお願いします。

開業して約20年になるので、これを機に何か新しい目標を掲げてみようかとも思いましたが、特別なことは何も思いつかないものですね。これからも今までどおり地域に根差した医療機関として患者さんの声に耳を傾け、生活を支え続けるパートナーでありたいと思います。当院だけであらゆる治療に対応できるわけではありませんが、例えば内科にも関連するような症状の相談があった場合は、クリニックをかけ持ちするのも大変でしょうから、こちらで血圧の薬などを出すこともあります。もっと専門的な診療が必要な場合は、当院のお隣にある内科クリニックをはじめ、信頼できる他の医療機関を紹介することも可能です。何か困ったことがあれば、最初の相談先として頼ってもらえるとうれしいです。