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辰巳 賢一 院長の独自取材記事

梅ヶ丘産婦人科

(世田谷区/梅ヶ丘駅)

最終更新日:2023/06/16

辰巳賢一院長 梅ヶ丘産婦人科 main

梅ヶ丘駅を出てすぐ目の前にある「梅ヶ丘産婦人科」は、不妊治療を専門としたクリニックだ。3人の常勤の日本生殖医学会生殖医療専門医に加え、臨床遺伝を専門とする医師や、公認心理士も在籍しており、チーム一丸となって患者をサポートしている。辰巳賢一院長は、日本における生殖医療の黎明期から不妊治療に取り組んできた医師の一人。自然に近い形での妊娠をめざしながら、顕微授精を含む体外受精にも30年以上取り組んでいる。男性不妊治療を専門とする泌尿器科医師による男性の診療も院内で実施、体外受精のほぼすべての治療を同院で受けることが可能だ。「信頼してくれた患者さんに何とか応えたい。ともに立ち向かう気持ちを持って診療に臨んでいます」と話す辰巳院長に、今までのキャリアやクリニックの特徴などについて聞いた。

(取材日2023年2月21日)

母校・京都大学の特徴から不妊治療に関心を持つように

まずは、産婦人科の医師をめざした経緯をお聞かせいただけますでしょうか。

辰巳賢一院長 梅ヶ丘産婦人科1

医療の世界にはさまざまな診療科がありますが、産婦人科は命の誕生に立ち会えるという他科では経験できない素晴らしい分野です。伯父が産婦人科医だったこともあり、1979年に京都大学医学部を卒業した後、京都大学病院の産婦人科に入局しました。

先生のご専門は不妊治療だそうですね。

はい。母校の京都大学は私が在籍していた当時から生殖医療にとても力を入れていたので、私もおのずと生殖医療、とりわけ不妊治療に関心を寄せるようになりました。今でこそ不妊治療はメディアで取り上げられることも増えて認知度も高まっていますが、当時はそれほど注目されていませんでした。しかしながら欧米などの状況を見ていると、日本でもこれからニーズが高くなっていくであろうことは予想できました。それで私は京都大学医学部附属病院や滋賀県の市立長浜病院で、まず産婦人科医としての経験を重ね、大学に戻ってすぐに東京大学医科学研究所に客員研究員として派遣され、1年後に博士論文を完成。「今後は体外受精の臨床に専念しなさい」と教授からアドバイスを受けたことで、京都大学医学部附属病院の不妊治療体外受精チームの中心メンバーとして活動しました。

こちらの診療に加わったのはどんな経緯だったのでしょうか。

辰巳賢一院長 梅ヶ丘産婦人科2

当院はもともと、私の妻の父が1958年に開業した医院なんです。私はずっと京都大学医学部附属病院で不妊治療の外来診療や体外受精の研究に従事していましたが、やがて「もっと患者さんに近い距離で治療をしたい」と思うようになり、そうした話を義父にしたところ、「ここで自分のやりたい医療を行ったらどうか」と声をかけてもらったんですね。それで1991年にまずは副院長として加入したわけです。当院は当時、この地域の産院として分娩を担っていたのですが、私の加入によって不妊治療にも注力するようになりました。

今では不妊治療に絞って診療されているのですよね。

ええ。診療開始当初からできるだけ自然に近い形での妊娠をめざす一般不妊治療と、体外受精や顕微授精など高度な技術を活用する生殖補助医療、お産を3本の柱として診療していました。すると、徐々に不妊治療のために来院される方が増えていきました。体外受精の件数が増えたことに伴い、お産と不妊治療のどちらか1本に絞ったほうが集中して治療を行えるだろうと考え、1998年にはお産を止めて不妊治療に専念することにしました。

先端的な治療を行いつつ、患者の負担軽減に努める

先生が生殖医療の研究を始めた当時と今とでは、どんな違いがありますか?

辰巳賢一院長 梅ヶ丘産婦人科3

当時はいうなれば生殖医療の黎明期で、日本は欧米に比べて不妊治療の技術は未成熟でした。不妊治療のために医療機関を受診すること自体、一般的ではありませんでしたし、メディアで「年齢が高くなると卵子が老化するので妊娠が難しくなる」と言及してもほとんど注目されず、あっさりと流されてしまうほど。しかしこの40年で不妊治療の技術は格段に進歩し、より安全性に配慮されたさまざまな治療を行えるようになり、また多くの方がその恩恵を受けられるようになりました。それに伴って社会的な認知度も高まり、卵子の老化についても常識として語られるようになってきたように思います。

不妊治療ではどのようなことを意識されていますか?

私が心がけているのは、できるだけ自然に近い形で妊娠していただくことです。当院では人工授精や体外受精、顕微授精などの生殖補助医療の分野のほとんどの先端的な治療を行うことができますが、高度なものになるほど患者さんの身体的、精神的、経済的な負担は大きくなってしまうので、私は必要最小限の治療で妊娠していただくことを重視しています。

不妊治療はどのくらいの期間がかかるのでしょうか。

辰巳賢一院長 梅ヶ丘産婦人科4

基本的な流れでは最初の3ヵ月から6ヵ月でタイミング法などを行い、次の3ヵ月から6ヵ月間で人工授精を行ったのち、体外受精などの生殖補助医療に移ります。治療期間は数ヵ月から1~2年の場合が多く、力を尽くしても中には妊娠に至らない方もいらっしゃいます。不妊治療で難しいのは治療の終わりの見極めです。年齢が高くなるほど妊娠が難しくなることはわかっていても、実際は個人差があります。「45歳以上だと妊娠はできない」と杓子定規に決めることはできないわけで、治療を止めるタイミングを決めるのはとても難しいんです。いずれにしても女性の年齢が不妊治療の結果に影響するのは確かですので、妊娠を望まれるのならば、なるべく早くいらしてください。

患者とともに立ち向かうつもりで治療に臨む

現在の診療体制についてお聞かせください。

辰巳賢一院長 梅ヶ丘産婦人科5

私と、大学や医局の後輩である内田崇史副院長と、国立成育医療研究センターの不妊診療科長をしておられた齊藤英和ARTセンター長の3人で主に診療を行っています。毎週水曜の夜間は男性不妊治療を専門とする泌尿器科の岡田弘先生に、男性不妊の外来を開いてもらっています。この外来に来院される男性も増えましたね。臨床遺伝を専門とする医師も非常勤で診療にあたっており、チーム一丸となって患者さんをサポートしています。患者さんに当院を選んでいただいた以上、何とか信頼に応えたい。患者さんと一緒に立ち向かう気持ちで治療に臨んでいます。

お忙しい中、休日はどんなふうにお過ごしですか?

私は大学時代、アイスホッケー部に所属していました。とても厳しい部活で、先輩に「世の中に出たらもっとつらいことがあるんだぞ!」と叱咤激励されながら何とか卒業まで頑張りましたが、いまだにあの頃ほど、つらい目にあったことはありません(笑)。当時の経験が医師としてのハードワークに耐えられた原点になっていますね。卒業してからもずっとプレーを続け、2016年と2018年には60歳以上の大会で日本一を果たしましたが、現在はコロナ禍でお休み中です。ゴルフはシングルで、関東ゴルフ連盟主催の競技にも出ています。

最後に、読者にメッセージをお願いします。

辰巳賢一院長 梅ヶ丘産婦人科6

2022年より人工授精や体外受精に保険が適用され、患者さんの経済的な負担が軽減されるようになりました。また新しい薬も開発され、体外受精のリスクは少なくなってきています。以前に比べて体外受精のハードルが下がり、妊娠につながる機会が広がってきました。タイミング療法で結果が出ず悩んでいた方、年齢の問題から少しでも妊娠の可能性を高めたい方にとって、治療の選択肢が増えたと言えます。不妊に悩まれているならば、少しでも早めの受診をお勧めします。

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