バリウム検査はもういらない!?
胃がんリスクを知るピロリ菌検査
すが内科クリニック
(藤沢市/湘南台駅)
最終更新日:2016/01/24


日本人に慢性胃炎や胃がんが多いのは、私たちの体質だと長年言われてきた。しかし今では、日本人の多くがピロリ菌に感染しているからだとわかっている。胃がんはピロリ菌の感染症といっていい。そう語る「すが内科クリニック」の菅誠院長は、ピロリ菌検査の重要性を説き、藤沢市に胃がんリスク検診の導入を働きかけた消化器内視鏡医の一人だ。そんな先生に、ピロリ菌と胃がんの関係、そしてその検査と除菌について聞いた。(取材日2014年11月13日)
目次
胃がんはピロリ菌の感染症。若いうちにピロリ菌検査を受け、除菌治療によって将来胃がんになる率を下げよう
- Qピロリ菌とはどのようなものですか?
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A
▲「ピロリ菌に感染されている方をゼロにしたい」と語る菅院長
ヘリコパクター・ピロリ菌は胃粘膜に生息している細菌です。感染すると胃粘膜に炎症が起こり、徐々に粘膜の萎縮が進んで、胃潰瘍や胃がんの原因になります。感染するのは幼少期まで。大人に移ることはまずありません。汚染された井戸水などから体内へ入るため、衛生環境の悪かった時代に幼かった人には感染者が多く、日本では、65歳以上の約8割がピロリ菌陽性だといわれています。年齢が下がるにつれ感染者は減り、30歳では1〜2割です。今の子どもたちは、ほとんどがピロリ菌をもっていませんが、感染者の親や祖父母が口移しで子どもにあげると移してしまう可能性があるので、注意しましょう。除菌すれば、大人が再感染することはありません。
- Qピロリ菌がいて胃がんになる率はどれくらいなのですか?
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A
▲最近はピロリ菌のことを調べてくる方も多い
ピロリ菌陽性で、胃の萎縮の軽い人は、年間1000人に1人くらいが胃がんになっています。萎縮が進むと、年間に500人に1人くらい、萎縮が進みすぎると胃の中にピロリ菌はいなくなってしまうのですが、そこまで進んだ人では年間80人に1人くらいの割合で、胃がんになるといわれています。萎縮が進行してからピロリ菌を除菌しても、胃がんになるリスクはそう減らないので、軽いうちに除菌することが大事です。ですから、若い人もピロリ菌の有無を調べましょう。私は、20歳になったら全員調べてはどうかと考えています。20歳でがんができている可能性は、極めて少ないですからね。若いうちにピロリ菌を除菌すると、将来胃がんになる率はぐっと下がります。
- Qバリウムの胃がん検診よりピロリ菌検査がまず大事だそうですね。
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A
▲菅先生の働きかけもあり藤沢市で胃がんリスク検診がはじまっている
ピロリ菌のいない胃に、胃がんはほぼできませんし、ピロリ菌の感染者は年齢が下がるにつれ減っているので、若い人から高齢者まで全員がバリウム検査を何度もすることには、あまり意味がないのです。それよりも、ピロリ菌がいるかどうかを調べ、胃がんになるリスクをもった感染者をピックアップし、その人だけに詳しい内視鏡検査を行えばよいと私は考えています。ピロリ菌の有無は、採血で簡単に調べられます。感染していたら、内視鏡検査を受けて胃がんがないか確認し、あれば治療して、その後ピロリ菌を除菌しましょう。除菌は内服治療です。除菌後は、胃の状態に応じて定期的に内視鏡検査を受け、胃の様子をチェックしましょう。
- Qピロリ菌を除菌すれば胃がんになる心配はありませんか?
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A
▲呼気テストも簡単に出来る
除菌後も、100%胃がんにならないわけではありません。60歳以上で除菌した人や、すでに萎縮性胃炎が進んでいた人は、もともと萎縮した部分は残ってしまうので、胃がんになる確率がゼロになるわけではないのです。除菌後も必ず、胃の状態に合わせて、定期的な内視鏡検査を続けることが大事です。40才以下で除菌した場合は、2〜3年に1度、それ以上の人は1年に1回は、内視鏡検査を受けましょう。定期的に検査をしてれいれば、胃がんができても、早い段階で症状がないうちに発見できます。そんな胃がんは治療でほぼ治りますので、そのためにも検査は必ず受けましょう。
- Q藤沢市では胃がんリスク検診が始まったそうですね。
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A
▲「若い方に受けて頂きたい」と、熱く語る菅先生
はい。私たちが市に働きかけてきたものが、ようやく実現されました。藤沢市では、平成26年度から、ピロリ菌抗体検査に、萎縮性胃炎の指標になるペプシノーゲン値を測定する検査を組み合わせた、「ABC検診」という胃がんリスク検診が始まりました。ピロリ菌感染によって萎縮が進んでしまった胃の中には、ピロリ菌がいなくなってしまうので、ピロリ菌検査だけではなく、萎縮の程度もともに調べているのです。この検診は、ピロリ菌陽性の人を見つけて、胃がんになっていないかを調べるだけではなく、除菌治療につなげて、将来的にその人が胃がんになる率を下げることに役立ちます。ただ、対象が40歳以上で、5歳刻みでしか受けられないので、該当年齢外の人にも、ぜひ自費で受けて、胃がんのリスクを減らしてほしいと願っています。