軟部組織診断に力を発揮する
整形外科の超音波診断装置とは
香取整形外科
(世田谷区/上町駅)
最終更新日:2021/10/12
- 保険診療
靭帯などのエックス線写真では写らない軟部組織を、非侵襲的かつ簡便に検査することができる超音波診断装置。近年はエックス線写真、MRI、CTに次ぐ「第4の目」として整形外科でも注目されている。例えば、捻挫による腫れなどは、どこの靭帯がどの程度損傷しているかまで診断可能だという。整形外科ではまだなじみの少ない超音波診断装置を導入する香取整形外科の香取勧院長に、その特徴やメリットなどを聞いた。
(取材日2014年7月24日)
目次
筋や腱の動きをリアルタイムに見て確認。画期的な診断ツールが、軟部組織の精密診断を可能に
- Q超音波診断装置とはどのような機械なのですか?
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A
基本的には内科健診や、妊婦健診で胎児の状態を確認したり、心臓や肝臓などの内臓の診断に用いられる超音波(エコー)検査と同じと考えていただけばよいでしょう。患者さんの体に影響の少ない超音波を利用する点で安心で簡便な検査です。当院では、主にエックス線画像ではわからない軟部組織の検査に用いています。エックス線画像は骨の状態はよくわかりますが、軟部組織までは写りません。一方、超音波は筋肉や腱・靭帯の損傷、断裂、内出血や軟骨の状態などを、リアルタイム画像で確認ができます。最近では、装置のデジタル化、高周波化により画質が飛躍的に向上した超音波診断装置が、「第4の目」として整形外科でも注目を集めています。
- Q超音波検査で診断できるのはどのような疾患ですか?
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A
捻挫に伴う靭帯断裂や腱損傷、肉離れなど、軟部組織診断に有用です。例えば手関節や足関節を捻じって腫れている場合、エックス線写真では「骨折や脱臼がない」ということしかわかりません。しかしエックス線写真に加えてエコー検査をすることで、どこの靭帯がどの程度損傷しているか、あるいは断裂しているのかなど、重症度の診断ができます。「捻挫だけどギプス固定のほうがいい」や、逆に「固定は必要ない」など適切な治療法を選択できるのです。また、足関節捻挫・肩腱板断裂・アキレス腱断裂などの外傷には視診・触診と併用して利用します。その他にも手指腱鞘炎・バネ指などの炎症性疾患でも腱鞘の肥厚や狭窄などを確認することが可能です。
- Q実際の検査方法を教えてください。
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A
基本的に診察室の椅子に座ったまま検査の対象部位にゼリーを塗り、発振子(プローブ)を軽く押して行います。損傷部をモニターに映し、患者さんと一緒にその場でモニターを見ながら診断をすることができます。また、検査による痛みの心配がなく、被ばくで身体に影響を与えることもないので、小さなお子さんや妊婦の方でも安心して検査を受けていただくことが可能です。このように気軽に検査ができますから、治療中も癒合状況や回復の確認が簡単にできることもメリットの一つです。
- Qその他にも特徴的なことや、メリットはありますか?
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A
超音波で動きを見れることです。患者さんに指を動かしてもらえれば、筋や腱が動いている画像をその場でリアルタイムに確認できます。当院でエコーをよく利用するのは、肩関節と足関節です。肩の動きが悪い場合、五十肩なのか、腱板断裂や損傷を伴うのか、肩を実際に動かしてもらいながら画像を見れば、より適切な診断が下せます。また、足関節の捻挫では靭帯損傷の重症度や内出血などの程度が鮮明に確認できます。手軽に扱えるので問診・触診の延長として利用することができることも、エコーならではの特徴と言えるでしょう。逆にデメリットは骨などの硬組織は画像で捉えることができないですが、メリットがとても大きい検査方法だと言えます。