岡田 源義 院長の独自取材記事
岡田内科クリニック
(名古屋市緑区/鳴海駅)
最終更新日:2022/10/27
昔ながらの住宅地にたたずむ「岡田内科クリニック」。1993年より日本糖尿病学会認定糖尿病専門医である岡田源義(おかだ・もとよし)院長が1998年に開業し、毎月1回「糖尿病教室」を開催するなど、誰でも来やすい、地域に開かれたクリニックだ。糖尿病の治療には、薬だけでなく食生活の改善や適度な運動が欠かせないが、自身も健康を意識した生活を実践しているという岡田院長は「無理なくできることから生活習慣を改善してほしい」と呼びかける。知識や経験を総動員して用意する糖尿病教室の原稿は、毎回手書きでレポート用紙何枚にもなるという。実直で勉強熱心な岡田院長に、地域や患者に対する思いを聞いた。
(取材日2018年10月13日)
専門である糖尿病を軸に、子どもも高齢者も診る医院
医師をめざされたきっかけや開業の経緯について教えてください。
私の父は岐阜で産婦人科の開業医をしていて、うちで生まれた同級生や、お産をされた学校の先生もいます。周りから「岡田くんも大きくなったら医者になるんだろう」と言われて育ち、そのとおりになりました(笑)。大学病院や総合病院に勤務した後、糖尿病の患者さんが多いのではないかと名古屋の地で開業を決めた次第です。この建物はちょうど前の院長が引退されて後を継ぐ人を探していたんですよ。周辺は静かな住宅地で良い環境だと思います。
どのような患者が来院されていますか?
生後2ヵ月の赤ちゃんから高齢の方まで幅広い年代の方に来ていただいています。中には、私が十数年間校医をしている中学校の生徒さんで、大人になって結婚し、お子さんを連れてきてくれる方も。子どもの患者さんは結構多くて、手紙や絵を描いてくれることもあり、それらは壁に貼って楽しんでいます。正直、医師になりたての頃は子どもに慣れませんでしたが、20年もやっていると慣れますね(笑)。話しかけたり、泣いている子をぬいぐるみであやしたり、診療後はシールをあげたりしています。大事だなと思うのは、家族関係を知ること。「今日は妹の〇〇ちゃんは、どうしたの?」と聞いたりすると、親御さんもうれしそうにされますね。当院の10人いるスタッフたちは長年勤めてくれているベテランが多く、お子さんにも慣れていて、処置も手早く丁寧に行ってくれるので助かっています。
先生のご専門は糖尿病だそうですね。
はい。でも実は私が大学を卒業した頃、糖尿病はマイナーな分野でしたので、やるまいと思っていたのです。しかし研修医としていろいろな症例を診る中で、次第に興味が湧き、また諸先輩方とのご縁もあり、専門に選びました。開業した20年前と比べて感じることは、まず患者さんの数が増えたこと、その中でも肥満の方、若い方が多くなったということです。健康診断が定着して早期に病気がわかることもあり、昔のように「喉が渇く」「尿の量が多い」といった初期症状で来られる方は少なくなりました。糖尿病は定期的に通院することが最も大切です。通院を続けて、安定した状態を保っていただけたらと思います。
食事は3食きちんと、運動は歩くことが基本
糖尿病の患者に対しては、どのような生活指導をされていますか?
まず食事についてですが、1日3食しっかり食べること、夜は食べすぎず、食後すぐ横にならないこと、できるだけ品数を多く取ることをお話ししています。間食はしても大丈夫です。我慢することや、不眠、ストレス、これらが最もいけません。食べ物を見たり匂いをかいだりすると食べたくなるので、食卓の上には普段から調味料も含め何も置かず、食事が済んだらすぐ片づけるようにしましょう。食事はお盆に乗せて食卓まで運ぶと片づけやすくいいですね。あとは時間も大事です。私は朝4時に起きますが、できれば6時に朝食が理想です。朝昼晩3食の間隔が均等だと、血糖値も上がりにくいのですよ。買い物は、余計なものを買わないよう計画的にまとめ買いを、そして空腹時ではなく、満腹の時に行くことが望ましいですね。
運動の指導についてはどのようにされていますか?
歩くことをお勧めしています。体の状態にもよりますが、私のように60代ですと週に4~5回、最低1日おきに30分ほど歩いていただきたいですね。スピードは普通よりやや早めに。私は40代の頃から、日曜も含めいつも朝8時すぎに当院まで区外の自宅から歩いてくるんですよ。数キロなら普通に歩きますので、万歩計を見ると1日平均8000歩~9000歩です。近隣の患者さんはよくご存じで、道でお会いすると「今日はどこまで歩いたんですか?」と聞かれます(笑)。腰の悪い方は、プールでゆっくり泳いだり自転車に乗ったりするのもいいですね。糖尿病の方にスポーツジムはお勧めしていません。息を止めて力むような強い運動は血圧や血糖値が上がり、良くないからです。
先生ご自身が食事も運動もきちんとされているのですね。
実は、私は40代の一時期、今より10キロほど体重が多く、脂肪の数値が非常に高かったことがあったのです。それでこれではいけない、食事を変えようと思い、先に言ったような食生活を実践しました。次第に脂肪の値は下がり、3年たつ頃には自然に痩せていましたね。間食は、人には勧めますが私自身はもともと30代の頃から食べていません。でもたまに外食くらいはしていますよ。そのときは必ずサラダなど野菜も頼み、少し残すぐらいで無理には食べず、しょうゆやソース、ドレッシングはかけない、ということが習慣になっています。ちなみに、タバコは吸いませんが、ビールは1日に飲む量を決めており、20時以降は食べたり飲んだりしていません。
地域の健康のため20年以上、糖尿病教室を開催
診療の中で工夫されていることはありますか?
おやつが好きな人に「間食は絶対駄目」というのは恐らく無理ですので、「食べてもいいけど、洋菓子よりも、おせんべいやまんじゅうなど和菓子にしてね」と伝えます。本当はジュースや缶コーヒーもやめてほしいのですが、その人に合わせて、できそうなことから少しずつ改善していくというところでしょうか。生活全般をお聞きすることも大事で、例えば一時的に血糖値が良くても、ヘモグロビンA1cの値が高い状態の方には「お風呂は何時頃入っていますか」と聞くこともあります。お風呂に入ると体温が上がり、出ると体温が下がりますね。そのことを利用して寝る1時間前には入浴すると、夜更かしせずよく眠れて、朝もきちんと起きることができ、朝食も取りやすくなります。休日もゴロゴロしすぎず、生活のリズムを保っていただきたいと思います。
こちらでは毎月、糖尿病教室を開催されているのですね。
はい、毎月第3土曜に無料で行っており、開業21年目になりますので240回を超えました。テーマは、糖尿病1型と2型について、食事についてなど基本的なことから、健康補助食品、インフルエンザ、ダイエット、新しく出た薬までさまざま。資料は1日かけて私がレポート用紙にびっしり手書きし、それを家族にパソコンで、読みやすいよう大きめの文字で打ち出してもらいます。毎回20ページ前後の分量になりますね。資料の最後には、私の血液検査の結果をつけて、中性脂肪の値はこれぐらいにしてくださいね、とさりげなく訴えているんです(笑)。1年で2~3回は管理栄養士に講師をお願いしています。資料作りや、連日の外来をこなしてからの立ちっぱなしの講演は結構大変な時もあるのですが、やはり糖尿病は危険な病気。少しでも知識を増やし、予防や改善に努めていただければと考えています。
20年以上、地域に根づいて診療してこられましたが、今後のことなどお考えがあればお聞かせください。
地域医療という点から言いますと、患者さんのご希望を受けて行っている往診や、障害をお持ちの方を対象とした健康診断は、今後も引き続き取り組んでいきたいと思っています。糖尿病に関しては、やはり薬だけ飲めばいい、というものではなく、通院を続けて食事や運動など生活指導を受けることが極めて重要だと知っていただきたいですね。通院を中断した方は、合併症が進んで視力障害が起きたり、腎臓が悪くなって人工透析に進んだり、あるいは脳梗塞、心筋梗塞を起こしたりと、残念ながらたいてい症状が悪くなってしまいます。これからもできる限り糖尿病教室を開催していきますので、地域の方々のお役に立つことができればうれしいですね。