子どもの発達を見守る「乳幼児健康診査」
育児の悩みも気軽に相談
みやけクリニック
(北九州市八幡西区/黒崎駅)
最終更新日:2024/09/12


- 保険診療
教科書どおりにはいかないのが、育児。「成長曲線どおりに体重が増えていかないけれど、大丈夫なんだろうか」「同じ月齢の子と比べて言葉が遅い気がする」など心配事が尽きることはない。逆に、本当はもっと気にかけて早くサポートするべき子どもに目が行き届いていないケースもある。育児にプロの目を入れる貴重な機会となるのが「乳幼児健康診査」だ。北九州市では、子どもが生後4ヵ月、7ヵ月、1歳6ヵ月、3歳になる頃に自治体から通知が届き、市内の登録医療機関で個別に受診票を利用して乳幼児健診を受けることができる。地域医療への取り組みから行政との関わりも大きい「みやけクリニック」の三宅巧院長に、今の乳幼児健診について詳しく教えてもらった。
(取材日2023年9月13日)
目次
小児科医師は育児の頼れる相談相手。乳幼児健診を通して信頼関係を築き、ともに子どもの発育を見守っていく
- Q乳幼児健診の目的は何でしょうか。
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A
▲母子手帳や母子手帳アプリを活用するとスケジューリングしやすい
乳幼児期のお子さんの身体的・心理的な発育の状態を定期的に確認すること、そして、親御さんたちが今悩んでいること、困っていることを伺い適切なフォローをするのが主な目的です。今は赤ちゃんの病気は生まれてすぐわかることが多いので、生後4ヵ月から始まる乳幼児健診では病気を発見するというより、月齢に応じた発達をしているかチェックする役割が大きいです。とは言っても赤ちゃんも人間ですから、一人ひとり発達に多少の偏りがあるのは当たり前。体重が増えない、歩かない、言葉が出ない……お子さんのその状態は本当に心配して早く手を打ったほうがいいものなのか、様子見でいいのかを小児科医として見極め、次につなぐことが大切です。
- Q北九州市では具体的にどのように実施されているのですか。
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A
▲乳幼児健診は、親の困り事を聞き出してフォローする場でもある
自治体によって多少時期が前後したり、集団健診のところがあったりしますが、北九州市では4ヵ月児、7ヵ月児、1歳6ヵ月児、3歳児の乳幼児健診を登録医療機関で個別に行っています。当院のある八幡西区では約20ヵ所の医療機関で受けることができ、一般診療とは分けて健診の曜日・時間帯を設けているところも多いです。当院では火~木曜の14~15時に1日5~6人の健診を行っていて、予防接種も同時にできます。健診内容は身長や体重、頭囲や胸囲の測定、運動・言語など発達のチェック、1歳半、3歳児健診では目のスクリーニング検査などで、親御さんからは食事の様子や兄弟との関係などを聞き取り、心配事の相談を受けます。
- Q乳幼児健診において、先生が特に注意していることはありますか。
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A
▲待合室に面して池を配し、子どもたちが楽しめるよう工夫
親御さんのお話をよく聴くことです。小さなことまで気にして心配される方、これくらい大丈夫と大らかすぎる方など親御さんのキャラクターはさまざまで、私はそれに合わせた声かけをするよう心がけています。「離乳食を食べないと心配されていますが、これくらい体重が増えているなら大丈夫」と言い切ることで安心感を与えたり、「この湿疹、私の子どもだったら専門の先生に一度診てもらいますね」と赤ちゃんに目を向けるきっかけをつくったり。お子さんはもちろん、親御さんとも継続して関わることができるのが個別健診のメリット。何かあった時にインターネットで調べるのではなく、医師に直接相談してもらえるようなつながりを保ちたいですね。
- Q産前から親御さんと小児科をつなぐ体制が構築されているとか。
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A
▲安心して子育てができるよう相談しやすい環境づくりを行っている
妊娠28週から産後2ヵ月の初産の方とご家族が小児科で相談できる「ペリネイタルビジット事業」ですね。小児科医と早くつながり、安心して子育てしてもらうための支援策として、市内の一部医療機関で2016年から公費負担で行われています。産前からかかりつけの小児科を決めておけば、生後2ヵ月から始まるワクチン接種もスケジューリングしやすいと思います。また2023年9月から、母子手帳アプリを通じて乳幼児健診の問診の記入や提出、健診結果の確認ができるサービスがスタートしました。当院でも2024年夏頃から導入の予定ですが、当分は紙の母子手帳との併用となりますので、使いやすいほうを利用していただければと思います。
- Q発達の遅れを指摘されたら、その後どうすればいいのでしょうか。
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A
▲小児救急や新生児、小児循環器の診療に長く携るベテランドクター
保健所の子育て相談、神経発達症の診察・評価を行う専門機関である北九州市立総合療育センターなどにつなぎますのでご安心ください。大事なのは、発達の遅れや特性になるべく早く気づき、お子さん本人や親御さんへの支援を始めること。しかし発達に関する相談は近年非常に多く、診察を受けるまでにかなりの時間を要します。また小学校入学前の就学時健診で発達の遅れを指摘されるケースも多くなっています。3歳児健診から就学時健診の間が空きすぎていて、その間のすくい上げが難しい。そこで北九州市では5歳児健診の開始を検討しています。神経発達症のお子さんがスムーズに小学校生活が送れるよう体制を整える一助になればと期待しています。