性行為(セックス)・挿入時の痛み
女性の性交痛と治療について
咲江レディスクリニック
(名古屋市千種区/池下駅)
最終更新日:2021/10/28


- 保険診療
男女ともに、切実でありながら誰にも相談できない悩みの一つである「性交」。特に女性は痛みや苦痛を感じてもパートナーに言いにくく、病気ではないだろうかと不安も抱えながら一人で悩むことも多い。「咲江レディスクリニック」の丹羽咲江院長は、通常の婦人科の診療に加え、そうした性交時の悩みや苦痛を「性交痛」として受け止め、原因をひも解きながらさまざまな治療をしている。性交痛は体の病気が隠れている場合もあるほか、精神的な原因を抱えていることも多い。「女性が生き生きと、主体性をもって人生を歩めるように」という思いを抱く丹羽院長。痛みから解放され、「女性が本当に幸福なひと時を過ごす」ために、性交痛の症状や原因、治療について詳しく聞いた。
(取材日2021年10月28日)
目次
痛みや恐怖、嫌悪感などの改善、幸せなセックスのための治療
- Q「性交痛」について教えてください。
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A
▲清潔感の明るい待合。女性専門のクリニックでスタッフも全員女性
性交時に痛みがある、痛くて挿入できない、その途中や後から痛くなった、などの症状があるもので、痛みを感じる場所は、膣の入り口付近とおなかの奥のほうとの主に2つに分けられます。膣の入り口付近の痛みは、粘膜や皮膚が荒れたり細菌に感染したりして膣炎や外陰炎の可能性があるほか、緊張感が強すぎて膣の筋肉がけいれんのように収縮してしまったり、疲労やストレスによる免疫力の低下、また処女膜が通常より厚い処女膜強靭症の場合もあります。奥のほうの痛みは、子宮内膜症やクラミジア感染症など臓器の癒着や炎症、卵巣腫瘍の疑いもあります。これらは悪化すると不妊症の原因となることもありますので受診が必要です。
- Q体だけでなく、精神的なことが原因となる場合もあるのだとか。
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A
▲女性の性体験や無意識的な記憶をひも解き、丁寧に診療
はい。「セックスが恐怖」「触られるのが嫌」など心因性の痛みは人によって違います。例えば「セックスは悪い、汚いもの」と刷り込まれて育ち、恋愛にすら無意識に罪悪感を持つ方や、妊娠や出産に恐怖を抱く方、過去に性暴力被害に遭ったり、望まないセックスを強要されたりしてつらい思いをされた方などさまざまです。性教育の授業で中絶の器具を見て怖くなった方や、私が「内診しましょう」と言うだけで泣いてしまう方もいました。そうした患者さんには、外陰部に触れる前にまず太ももに触れることから始めていくなど、丁寧な診療を心がけています。
- Q治療では具体的にどのようなことを行うのですか?
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A
▲セルフトレーニングのサポートも密に行っている
おりものの検査をし、膣や外陰部の炎症の有無や処女膜の状態を診たり、エコー検査で臓器の癒着や病変を確認します。外陰部の炎症ですと外用薬で治療したりローションの使用で痛みを軽減することが多いですが、心因的な要因で恐怖感や嫌悪感のある場合は治療にも時間が必要になります。膣に挿入するトレーニングも指導しながら進めます。最初は指、その後に造膣用器具という棒状の医療器具を入れられるようにしていくもので、自宅でもトレーニングしていただきます。当院でもオリジナルのセルフトレーニンググッズや保湿用のバームを製作しました。
- Q若い人だけでなく中高年女性にも性交痛があるのですか?
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A
▲幸せな性交渉を望む女性の繊細な悩み。多くの女性が救われている
はい、患者さんの年齢は10~60代と幅広いです。閉経以降は女性ホルモンの分泌が減少して、膣粘膜や外陰部が委縮して薄くなり、それで痛みが起こるのです。男性には、そういった女性の体の変化を理解しにくいので、「今までできたのになぜできないのか」と考えることもあるかもしれませんね。女性ホルモンの補充療法や潤滑剤によって痛みの軽減につながる場合がありますので、まずは受診していただければと思います。
- Qこちらの治療の特徴としてどのようなものがありますか?
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A
▲個室診療室でじっくり相談できる
性交痛の治療は、一般的には「潤滑剤を使いましょう」と言われることが多いと思いますが、痛みはがまんするものではありません。今は20~30代の女性の約7割が性交痛を経験しているといわれ、珍しくありません。患者さんは緊張感が強いので、治療も焦らず丁寧に行い、自宅でのトレーニングも「できた」「できない」など相談しながら、他のアプローチも試みつつ進めていきます。