口呼吸が出っ歯や受け口の原因に?
矯正治療の専門家に聞く対策
医療法人社団凛湘会 さいとう矯正歯科医院
(藤沢市/湘南台駅)
最終更新日:2021/10/12
- 自由診療
何かに熱中していて、ぼんやりと考え事をしていて、気づいたら口を開けていた……という経験は誰にも一度はあるだろう。しかし最近は、日常的に口が開いたままになる、いわゆる口呼吸の子どもが増えている。そう指摘するのは湘南台駅徒歩2分「さいとう矯正歯科医院」の院長・齋藤康雄先生。矯正治療の専門家であり、口の中だけでなく口腔周辺の各機能と歯並び・かみ合わせとの関係を熟知している。齋藤先生が言うには、口呼吸は顎の形や舌の位置に悪影響を与え、それが歯並びの悪化や口腔内および全身の疾患につながり得るのだそうだ。子どもを持つ親なら特に気になるこのテーマについて、詳しい話を聞いた。
(取材日2017年7月5日)
目次
歯並びと口呼吸の密接な関係を知り、少しでも気になれば専門家による検査と早めの対策を
- Q口呼吸の原因を教えてください。
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A
原因の一つとして、口唇閉鎖力(口を閉じる力)の低下が挙げられます。例えば、鼻炎などのアレルギー性疾患があると鼻で息がしづらく、口呼吸が常態化。やがて鼻呼吸をしなくなり、口唇閉鎖力は落ちていきます。また、出っ歯のように物理的に口を閉じられない状態も、口唇閉鎖力の衰えを招きます。もう一つは、口の周りにある口輪筋の筋力低下。今の時代、硬い物を前歯で噛み切ることが少なくなっており、またシャボン玉や口笛を吹く、風船ガムを膨らませるといった口遊びもあまりしなくなりました。つまり、昔と比べて口輪筋を鍛える機会が減っているといえます。
- Qどうして口呼吸が歯並びの悪化につながるのでしょうか?
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A
舌は「スポット」と呼ばれる口内の天井部分、上顎の歯列内に収まっているのが正常な状態です。そしてそこからの舌の圧力と唇の力、頬の粘膜からの圧力がバランスを取り、歯並びを正常な位置へと導きます。ところが口呼吸が癖になると、舌が下がり上顎から離れて力のバランスが崩れ、頬粘膜の圧力が優位に。頬からの力により歯列が内側に押され狭くなり、その結果、歯並びが乱れるのです。また、常に口を開けているので下顎が下へ下へと成長し、出っ歯や乱ぐい歯、開咬といった不正咬合が生じるほか、顔つきも変わってきます。
- Q他にはどんな影響がありますか?
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A
口呼吸の人は睡眠中も口を開けているので、仰向けで寝ると下顎や舌が下がって気道がふさがり、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすことがあります。また、口が乾燥するので唾液の作用を受けられないのも重大な問題ですね。唾液の持つ抗菌作用は、病原菌やウイルスに対する免疫力を高めます。ほかにも唾液は粘膜保護や粘膜修復、歯の再石灰化を促しますが、唾液が枯渇すると、これらの作用がすべて受けられません。口呼吸は細菌やウイルスなどの異物、温度調節のされていない外気をダイレクトに吸うので、風邪やインフルエンザ、虫歯や歯肉炎になりやすいという報告もあります。
- Q口唇閉鎖力は視力とも関係すると伺いました。
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A
最近の調査ですが、口唇閉鎖力が弱い子どもはそうでない子と比べ、視力が平均して0.3ほど低かったそうです。これには顔面表情筋の働きが関係しています。前歯で食べ物にかじりつき、噛み切るとき、人は前歯だけでなく口の周りのあらゆる筋肉を緊張させます。さらに食べ物を引きちぎる際は、目も閉じていることがわかるでしょう。このように顔面表情筋をフル活用し、目の周囲の筋肉にも働きかけ、目の調節機能にまで影響を与えている可能性があるのです。現代の食生活では、食べ物を口にしやすいよう小さく切ることが多いため、前歯を使うことが減っています。その結果、口唇閉鎖力が弱い子どもが増え、視力にも影響を与えるというわけです。
- Q口呼吸の改善方法はあるのでしょうか?
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A
まずは受け口や出っ歯など物理的な問題を矯正治療によって解決し、それでも改善されない場合は舌や口輪筋を鍛えるMFT(口腔筋機能療法)を行います。具体的には、舌先をスポットにあてたまま唾液を飲み込む練習など、段階的なメニューを通して舌の位置を正すほか、マウスピース型の口腔筋機能トレーナーを用いることも。ただし、これらの訓練は目に見える変化が少ないので効果を感じにくく、特にお子さんの場合はモチベーションを保つのが難しいですね。そこで当院では歯科衛生士が患者さんをフォローし、ユーモアを交えて話をしたり、イラスト入りの冊子を使って治療の目的を説明したり、楽しく続けられるよう工夫を凝らしています。
自由診療費用の目安
自由診療とは小児矯正第1期治療/25万円~、本格矯正(第2期)治療/55万円〜
※歯科分野の記事に関しては、歯科技工士法に基づき記事の作成・情報提供をしております。
マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。