坂野 晃 院長の独自取材記事
ばんの歯科
(名古屋市東区/森下駅)
最終更新日:2025/09/22

口腔内のみならず、歯科診療を通じて全身の健康に貢献することをめざす「ばんの歯科」。40年以上にわたり歯科診療と地域活動を継続し、患者や地域住民との関係性を深めてきた。院長の坂野晃先生を慕い、開業当初から通う患者も多い。訪問歯科診療や認知症カフェの開催などにも取り組み、地域コミュニティーの構築にも貢献している。そんな坂野院長が日々実践しているのは、「おもいやりの心の診療」。「長年患者さんに寄り添えることをうれしく思います」と話すほど患者思いの坂野院長に、診療に対する考えや力を入れている治療などについて話を聞いた。
(取材日2025年5月13日)
「おもいやりの心の診療」や認知症カフェで地域に貢献
地元で開業されて40年以上、現在の患者さんとの関係性について教えてください。

開業当初から、口腔内のみならず全身の健康増進に貢献することをめざして診療を続けてきました。長年通ってくださっている方が多く、幼かった患者さんが大人になり、お子さんを連れて受診されるケースも増えています。また、患者さんのほうからご自身の体調や仕事のこと、家族の話、生活の変化などについて話してくださることもありますね。口腔内の変化を診ながら日常生活について聞いてみると、「最近、家でテレビばかり見ている」などと言われることも。その場合は生活の改善を促して、少しでも歩くようアドバイスするようにしています。また、家族の介護に悩んでいる患者さんには、何かできることがないかを一緒に考えます。ある意味、お節介や大きなお世話かもしれません。私はこのような患者さんへの寄り添いを「おもいやりの心の診療」と呼んでいます。徹底的に患者さんに寄り添うことで、健康を願う私の気持ちが患者さんに伝わると信じています。
長年、学校歯科医を務められていたそうですね。お子さんの口腔内で気になることはありますか。
30年以上にわたり学校歯科医を務め、2025年3月に退任しました。子どもたちと接する中で感じたのは、口腔内の状態と心身の健康状態は密接に関係しているということ。近年、子どもの虫歯の数は減ったものの、「落ち着きのなさ」は気になります。これらの原因と考えられるのは、育児です。正しい育児に必要な情報と知識を親御さんに伝えるのも、歯科医師の役割だと考えています。もちろん正しい情報を伝えるためには、勉強が欠かせません。歯科の視点から子どもの発達にアプローチする方法や、嚥下や発音、呼吸にかかわる「舌骨」のコントロールを図る方法などを学び、妊婦歯科検診や乳児歯科検診の際にお話ししています。
地域との交流の場として、院内で認知症カフェを開催されているそうですね。

はい。認知症カフェは、認知症の方やご家族、地域住民、医療や介護、福祉などの専門家が気軽に集える場所です。当院で月に1度開催しています。先日は、近所の洋菓子店のオーナーパティシエの方が来てくださり、ショートケーキを振る舞ってくれましたよ。落語会も好評でした。笑って過ごせる場所、コミュニケーションを保つ場所があれば、認知症予防や地域ネットワークの構築につながるのではないでしょうか。このような地域交流の場は、どちらかというと女性の参加が多いとよくいわれますが、当院の認知症カフェは男性も大勢います。疎外感がなく、居心地が良いと感じていただけているのならうれしいです。スタッフと一緒にさまざまなおもてなしを考えて開催しています。
口腔機能の改善をめざす入れ歯治療
最近、力を入れている治療について教えてください。

当院では入れ歯治療に注力しています。入れ歯治療は、歯の喪失などで失った本来の口腔機能を取り戻すための治療法として最適だと考えています。入れ歯は「お年寄りのもの」というイメージがあるかもしれませんが、若い世代の患者さんに必要になることもありますので、歯を失った際には、どなたにも相談していただきたいですね。当院では、レジン床の入れ歯と金属床の入れ歯にも対応しております。
特に金属床の入れ歯治療に注力しているそうですね。
はい。舌や上顎にあたる床(しょう)がすべて金属でできた「金属床」の入れ歯治療です。金属床は変形しにくく、フレームの安定感があることが特徴です。当院では、入れ歯の粘膜に接するほとんどの部分を金属で作製します。素材が金属ですので、入れ歯の使用感を良くするためには、患者さんの口元に合うように調整する必要があります。金属床の入れ歯は特に製作が難しいのですが、当院の歯科技工士は長年の経験を研修を受けて、これまで何度も難しい技工に対応してきました。歯科技工士からの力強い後押しもあり、パンフレットを作り、その技術について患者さんにも紹介するようになったんです。適切な診査を行い、高い分析力、高い診断力、そして歯科技巧力をもって、患者さんのために尽力します。
予防を重視した診療について教えてください。

当院では、できる限り天然歯を残す診療を行っています。歯を残すためには、根本的な原因の改善と予防が欠かせません。予防歯科では、PMTCと呼ばれる歯垢除去のためのクリーニングや、病原性が高いといわれる嫌気性菌の除去を行っています。虫歯の治療のみならず、どのような治療においても定期的なメンテナンスと口腔内トラブルの予防が必要です。当院の歯科衛生士は経験豊富なスタッフが多く、まさに口腔ケアの専門家。他院で経験を積んだ歯科衛生士からは、他の歯科医院のやり方や診療の考え方が垣間見えるので、「こんな考え方もあるんだ」と参考になります。
チームスタッフで、患者の健康増進に貢献
スタッフの皆さんも、診療外の取り組みにも積極的に取り組まれているそうですね。

スタッフにも「おもいやりの心の診療」が浸透していますので、患者さんや地域住民に喜んでもらえるようなアイデアを考えて提案してくれています。訪問診療先の患者さんを元気づけるために、訪問先で仮装してダンスを披露したこともあるんですよ。認知症カフェの内容も一緒に考え、当日も積極的に会を盛り上げてくれています。スタッフの活躍ぶりや当院の取り組みを医療関係者や大学教授、言語聴覚士をめざす学生さんなどが、見学に訪れたこともありますし、大学の教授が授業の教材として当院の取り組みを取り上げることもあるそうです。私たちの考えや地域、患者さんへの寄り添いが広まっているのを実感しています。
地域貢献について、どのように考えていますか。
地域密着型の歯科医院とは、患者さんと医療機関、介護や福祉、行政などをつなぐ役割を担うことができると考えています。認知症カフェは各専門家と患者さんがつながる場にもなりますし、歯科診療においても患者さんの全身の健康を見据えることで、医科への受診を促し病気を防げるかもしれません。訪問歯科診療に伺った先で看護師や介護福祉士に口腔ケアの方法や食事についてアドバイスすれば、正しい知識の普及につながるでしょう。例えば、高齢者施設で摂食に問題のある入居者さんに、食形態の改善をアドバイスができれば、問題が解決することもあるのではないでしょうか。歯科医師として患者さんや地域住民、地域の各専門機関と積極的に関わることで、結果的に患者さんの健康や安心につながるのだと感じています。
読者へのメッセージをお願いします。

歯科医師としてありきたりな言葉かもしれませんが、患者さんの健康を守るために診療しています。歯科医師の視点から全身の健康に貢献することをめざしていますので、健康のことで不安があったらご相談ください。お節介かもしれませんが、診療でも診療外でも患者さんに寄り添い、「おもいやりの心の診療」を徹底していきたいと考えています。患者さんのありがとうの言葉をいただけるよう、これからも変わらずスタッフと協力して診療に取り組んでいきます。また、認知症カフェなどの診療外の活動も継続し、地域ネットワークの構築につながれば幸いです。
自由診療費用の目安
自由診療とは入れ歯 レジン床/30万円~ 金属床/50万~