口腔機能の衰えと滑舌
50代から早めの対策を
西村歯科
(堺市南区/栂・美木多駅)
最終更新日:2024/11/11
- 保険診療
「オーラルフレイル」という言葉を聞いたことはあるだろうか。噛んだり、飲み込んだりする口腔機能の衰えを表す言葉で、近年は身体機能や認知機能が低下した状態を指す「フレイル」の前段階として注目されている。堺市南区庭代台にある「西村歯科」はオーラルフレイルのリスクに着目し、地域の中で積極的な対策に努めている。今回副院長の西村知倫先生に、オーラルフレイルとはどんな状態か、放置しておくことのリスクやその対処法、関連性の深い訪問歯科診療など、詳しく聞いてみた。
(取材日2023年5月24日/情報更新日2024年11月7日)
目次
検査で口腔内の弱い部分をチェック。日々の口腔体操で必要な筋力を鍛えることで、健康的な人生をめざす
- Qオーラルフレイルとはどのような状態を指すのですか?
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A
フレイルは虚弱を意味し、心と体が弱まっている状態のことを指します。広く浸透しつつある概念ですが、オーラルフレイルはまだ聞きなじみがない方も多いと思います。オーラルは「口の」という意味で、食べ物を噛んだり飲み込んだりする口の機能の衰えを「オーラルフレイル」と呼んでいます。原因は加齢によるものだけではなく、加齢に伴って変わっていく生活環境が大きく関係しています。例えば外出が減る、体を動かさないことで体力・筋力が落ちる、社会参加が減り、人と会わないことで会話も減っていく、その結果、口や喉を動かさなくなるので口周りの動きが徐々に衰えていってしまいます。初期の段階だと、自分で気づくことは非常に困難です。
- Qその状態になると日常生活に影響があるのでしょうか?
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A
口の機能が低下すると、徐々に硬いものが食べにくい、薬が飲み込みにくい、ムセやすい、滑舌が悪くなるという症状が出てきます。以前はしゃっきり炊いていた米が好きだったけれど、軟飯、お粥が好きになったという具合に、食の好みが変化していくこともあります。噛む筋力が低下することでやわらかいものを好んで食べるようになり、さらに噛まなくなり、筋力がどんどん落ちていきます。また、食の好みが偏ることで、栄養にも偏りを生じ、体力など全身にも問題を生じていくといった悪循環を招いてしまいます。なので、全身に影響を及ぼす前にオーラルフレイルに気がつき、健康を維持できるようトレーニングをしていくことが重要なのです。
- Qオーラルフレイルを見つけるにはどのような検査を行うのですか?
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A
まずは口の衛生状態の指標になる舌表面の汚れ具合をチェック。続いてパ・タ・カの各音を発声していただきます。「パ」は唇の、「タ」は舌の先、「カ」は舌の奥がどれだけ滑らかに動くかを評価します。これらの音を発声するときの舌の動きは、食べ物を飲み込むときの動きに通じるのです。他には舌や噛む筋力、口の中の水分量を計測したりします。このように多角的に口の機能を評価・診断し、その結果に従って生活のアドバイスや口のトレーニングを行います。各項目を数値化することで、ご自身の弱くなっている部分がはっきりしたり、トレーニングなどの成果がわかりやすくなっているのは当院の特徴かもしれません。
- Q予防のためにクリニックで取り組まれていることはありますか?
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A
オーラルフレイルにならないためには、早期に気づき、トレーニングをすることで悪化させないことが重要です。一度筋力が落ちてしまうと、それを取り戻すには大変な労力が必要になってしまうからです。当院では、一定の年齢を過ぎた方と検査希望の方に対して、歯科衛生士が定期検診やクリーニングをするだけでなく、オーラルフレイルの検査も加えて行うことで、早期発見に努めています。そして、検査結果が芳しくなかった方にはオリジナルのトレーニング冊子をお渡ししています。トレーニング冊子はできるだけわかりやすいように作っており、QRコードで読み取れる解説つきの動画を見ながら適切で正しいトレーニングをできるようにしています。
- Q訪問歯科診療にも力を入れているそうですね。
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A
地域の口腔環境を支えるため、通院が難しい患者さんのご自宅にお伺いする訪問診療にも積極的に取り組んでいます。理学療法士とは口の筋力低下の対策を練ったり、看護師とはフレイルに対して日常生活での取り組みを共有することで、一人ひとりの患者さんに合ったプランを提供することができます。またオーラルフレイルも大きな問題ですが、歯周病も心疾患や脳梗塞、認知症、誤嚥性肺炎といった全身の病気につながるリスクのある重要な問題です。そうならないためにも口腔ケアは大切です。ただ、いろいろとお伝えするとご家族の負担になってしまうので、「これだけは」というものや簡単にできるものをお伝えすることも大切にしています。
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マウスピース型装置を用いた矯正については、効果・効能に関して個人差があるため、必ず歯科医師の十分な説明を受け同意のもと行うようにお願いいたします。