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こちらの記事の監修医師
東京都済生会向島病院
脳神経内科部長 大野 英樹 先生
けいせいしゃけい(けいぶじすとにあ)痙性斜頸(頸部ジストニア)
最終更新日:2022/10/31
概要
自分の意思とは関係なく筋肉が収縮する「ジストニア」が首や肩に生じたもので、頸部ジストニアともいう。首の筋肉が異常に収縮し、頭が傾いたり前後左右に動いたり、肩こりや頭痛が起きる。精神的な問題や神経の障害などから来るとされるが、明らかな原因は不明である。脳性まひや向精神薬の服用などがきっかけで起きることもある。不自然な姿勢になるため、周囲の目を気にして心理的ストレスが高まる人もいる。患者層は主に30代から50代で、ほとんどが50歳未満で発症する。海外では女性に多く見られるが、国内では男性患者の方が多いとされている。
原因
首や肩には肩甲挙筋(けんこうきょきん)、胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)、板状筋(ばんじょうきん)、僧帽筋(そうぼうきん)などさまざまな筋肉があるが、それらが自分の意思に関係なく収縮することによって、頭部の傾き、不自然な姿勢、肩こり、頭痛など痙性斜頸の症状が現れる。これは大脳皮質と視床・脳幹を結びつけている神経核の機能異常によるもので、脳の機能がうまく働かなくなることが原因で発症すると考えられているが、詳しくは明らかになっていない。一方、原因がはっきりしている痙性斜頸もあり、ストレスや過度の疲労、長時間の不自然な姿勢による首・肩への負担、脳疾患やその後遺症、異常な分娩、遺伝、薬の副作用などをきっかけに発症しやすいといわれている。無理な歩行や体操、ストレスにより、症状の悪化を招くこともある。
症状
首の筋肉の断続的または連続的な収縮やけいれんにより、頭や肩の位置が異常になり、自分の意思とは無関係に頭が回転したり、前後左右に傾いたりする。下あごが突き出る、背中が曲がる、肩が上がるといった症状もよく見られる。進行すると強い筋収縮が持続し、一定の向きから元に戻らなくなる。精神的ストレスを感じたときのみ、頭や肩が動く人もいる。また、肩こりや筋肉の張り、首や肩の違和感、頭痛などのみが生じることもあり、その場合は痙性斜頸だとわかりにくいこともある。横になると症状が緩和され、通常は寝ている間は発症しない。
検査・診断
問診を行い、ケガなどによる症状でないかを確かめる。また異常を感じ始めた時期や既往歴、職業、ストレスの度合い、一定の姿勢を長時間取ることがあるかどうか、家族に同様の症状のある人はいないかなどが問われる。必要に応じて、エックス線検査やCT検査、MRI検査などの画像検査で首の状態を確認する。筋肉の収縮を表面筋電図検査で評価し、筋の同定に針筋電図検査を行う場合もある。頭が傾くなど似たような症状の出る別の病気と見分けるため、血液検査で炎症の有無なども探る。遺伝性が疑われる場合は遺伝子検査を行うこともある。
治療
基本的には対症療法となる。筋肉のけいれんと不随意運動の軽減、痛みの緩和のため、筋弛緩薬、抗不安薬、抗てんかん薬などを内服する薬物療法を行う。筋肉の緊張を和らげる薬を筋肉に直接注射し、過剰な収縮を抑えるボツリヌス療法という治療法もある。この効果は3、4ヵ月持続するが、徐々に効果が薄れるため治療を継続する必要がある。これらと併せて、筋電計や鏡を使って首や肩の位置を正常に保つ「バイオフィードバック療法」を行う場合もある。思うような効果が見られない場合は手術が検討される。手術療法には、異常な命令を出している神経を一部切断したり、脳に電気刺激を与えたりする方法がある。また、ストレスが原因で発症している患者には、心理療法が有効な場合も。日頃からリラックスすることを心がけるなど、生活スタイルの改善でも症状の緩和が期待できる。
予防/治療後の注意
精神緊張や運動により悪化することが多いため、ストレスをためず十分な休養を心がけることが大切だ。
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脳神経内科部長 大野 英樹 先生
脳神経内科を専門分野とし、脳卒中診療のスペシャリストであるとともに、末梢神経疾患にも精通。日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医。
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