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独立行政法人地域医療機能推進機構 東京蒲田医療センター 石井 耕司 病院長

こちらの記事の監修医師
独立行政法人地域医療機能推進機構 東京蒲田医療センター
石井 耕司 病院長

きゅうせいあるこーるちゅうどく急性アルコール中毒

概要

アルコールを一度に多く摂取し過ぎることで、血中のアルコール濃度が一気に高くなり、意識障害や血圧低下、嘔吐などを起こす中毒症状。血液に溶けたアルコールが脳に作用し、まひなどの症状を起こすことで発症する。重症になると死に至ることも。アルコール依存症のない人や酒に強い人でも起こる。若年者・女性・高齢者などでリスクが高まり、特に大学生や新社会人では一気飲みなどで飲酒させられ、死亡するケースも発生している。急性アルコール中毒による救急搬送の件数は増加傾向にあり、中でも20代の搬送件数が圧倒的に高いというデータがある。

原因

アルコールは胃や小腸で吸収され、肝臓で分解されるが、短時間で大量に飲酒するとその分解が追いつかなくなり、血中のアルコール濃度が急激に高くなってしまう。その結果、脳にまひなどの症状が出て呼吸・循環中枢が抑制され、最悪の場合、死に至る。どれくらいの飲酒量から急性アルコール中毒になるのかははっきりとした基準がないが、一般的に、血中アルコール濃度が0.3%を超えることによって「泥酔期」という海馬(脳の記憶をつかさどる部分)にまひが広がった状態になり、0.4%以上になると「昏睡期」というまひが脳全体に広がって死の危険がある状態に陥る。昏睡期のレベルに達すると呼吸数の低下、血圧の低下などが起きる。血中アルコール濃度が上昇することにより死に至る場合のほか、嘔吐物がのどに詰まって窒息して死に至ることもある。酩酊状態がきっかけで転倒・転落死、溺死する場合もある。

症状

千鳥足になって歩行が困難になり、意識がはっきりしなくなる。声かけに応じず、眠ってしまったように見える場合もある。また嘔吐することもあり、嘔吐のしすぎが原因で消化管の粘膜が傷つき、血を吐くことも。動悸や呼吸困難、顔が真っ赤になるなどの症状もみられる。一気飲みのように、短時間で大量に飲酒することによってこのような症状が現れやすい。特に昏睡、意識の混濁、呼吸回数の減少、言語の支離滅裂、血圧の低下、失禁、記憶の抜け落ちなどの症状が見られる場合は重篤で、最悪の場合死亡する危険性もあるので一刻も早い治療が必要となる。

検査・診断

アルコールの臭いがする、意識がなく、呼びかけたりゆすったりしても反応しない、呼吸が少ない、嘔吐している、口から泡を吹いている、体が冷えているなどの状態が確認されれば、急性アルコール中毒が疑われる。次に、血中アルコール濃度の測定や、症状とその進行状況を確認することによって、中毒の有無と重症度、別の疾患やケガが隠れていないかどうかを診断する。具体的には、血圧、心拍数、呼吸数、嘔吐の有無、結膜の充血などを調べ、総合的に判断する。画像診断により、脳や肝臓などに障害が現れていないかどうかを調べることもある。

治療

軽症例では、嘔吐物で窒息しないように横向きに寝かせ、下顎を前に出して気道を確保する。急性アルコール中毒になると体温が下がるため、温めるために毛布などで体を覆う。意識がある場合は水分を取らせ、血中アルコール濃度を下げる。アルコールは体内への吸収が早く、胃洗浄は効果的でないとされるが、アルコールを摂取した直後や、その他の中毒症状が疑われるときには行うこともある。重症の場合は、気管内挿管や人工呼吸が必要なケースも。嘔吐物を除去するためには鼻から胃へ管を通して吸引する。アルコールを体内から出すために生理食塩水などを点滴し、尿道バルーンカテーテルを入れて尿として排出させる場合もある。さらに脱水症状、低血圧、低血糖などの症状が出ている場合にはそれぞれに応じた対処が必要。同時に転倒による外傷がある場合は処置を行う。

予防/治療後の注意

飲酒量と体の状態・血中アルコール濃度の関係については個人差が大きいので、普段から自分の適正な飲酒量を把握しておくこと。ほろ酔いで済む飲酒量の目安は、ビール500ml、日本酒180mlくらいが目安とされている。飲酒時は体調などに合わせ飲む量を調節し、一気飲みなどはしない。急性アルコール中毒が疑われる場合は決して1人にせず、周囲の人が衣服をゆるめる、毛布をかける、横向きに寝かせるといった救護をした上で、ただちに病院に運ぶことが大切。

独立行政法人地域医療機能推進機構 東京蒲田医療センター 石井 耕司 病院長

こちらの記事の監修医師

独立行政法人地域医療機能推進機構 東京蒲田医療センター

石井 耕司 病院長

1981年杏林大学卒業後、東邦大学大森病院内科入局。同大学病院に所属しながら関連病院での勤務やアメリカ留学を経験。勤務医の傍ら、開業医の妻のクリニックを手伝い、地域の医療連携の必要性を痛感していたところ、「東京蒲田医療センター」副院長を打診され、縁を感じて就任。2016年より現職。