
こちらの記事の監修医師
順天堂大学医学部附属浦安病院
血液内科長 野口 雅章 先生
きょせきがきゅうせいひんけつ巨赤芽球性貧血
最終更新日:2021/12/23
概要
ビタミンB12または葉酸の不足を原因とする貧血の総称。血液中に、成熟していない大きな赤血球(巨赤芽球)が存在することが特徴。ビタミンB12は主に動物性食品に多く含まれ、食事を通じて摂ると胃の中で胃液に含まれる内因子と結合し、肝臓などで貯えられるため、胃を全部切除した患者や萎縮性胃炎の人がなりやすい。菜食主義者、妊婦などもビタミンB12や葉酸の不足により発症することがある。中でも、胃粘膜が萎縮していたり、胃液の分泌が悪かったりすることが原因のものを「悪性貧血」と呼ぶ。内服または注射によって不足分を補充しなければならず、貧血以外にも食欲の低下や味覚障害などが出ることもあるため注意が必要。
原因
体内のビタミンB12や葉酸が不足することが原因。どちらかが欠乏するとDNA合成が阻害され、未熟な赤血球(巨赤芽球)ができて、貧血を起こす。ビタミンB12が欠乏する主な原因は、胃の全部の切除や、免疫の異常による胃粘膜の萎縮、胃液の分泌が悪いことによってビタミンの吸収障害が起きるため。先天性の異常により、ビタミンB12を取り込めない場合もある。微量のビタミンなので摂取不足によって起きることはあまりないが、ビタミンB12が含まれる動物性食品を摂らない菜食主義者は、まれに発症することがある。一方、葉酸欠乏の主な原因には野菜を食べない偏食や、アルコールの大量摂取があるほか、妊娠・授乳中で体が葉酸を多く必要とする場合にも起こり得る。他には引用している薬の影響で葉酸がうまく取り入れられなかったり、血液透析によって喪失したりして欠乏することがある。
症状
一般的な貧血と同じく、動悸や息切れ、疲れやすい、全身がだるい、食欲低下といった症状が見られる。またビタミン欠乏による末梢神経障害も合併しやすく、その場合は四肢のしびれやチクチクとした痛み、筋力の低下、感覚がない状態などさまざまな症状が起こる。重度のビタミンB12欠乏になると、認知症のような症状や錯乱などの意識障害が生じる場合があるので注意が必要。葉酸が不足していると下痢になる場合があり、舌が赤くなったり腫れたり、味覚障害が出たりすることもある。これらの症状は突発的に起きることはなく、進行するにつれて徐々に現れる。
検査・診断
貧血はさまざまな要因で生じるため、まずは問診を通じて生活状況や既往歴などを確認。また静脈からの採血によって血液を調べ、貧血が認められるとビタミンB12や葉酸の量が正常かどうかを詳しく検査する。さらに顕微鏡で血液を見て、巨赤芽球の有無をチェック。血液中に大きく未熟で、形がいびつな赤血球があると発症の可能性が疑われる。貧血状態が長期間に及ぶ場合には、白血球や血小板にも異常が出ることがある。ビタミンB12や葉酸欠乏の原因を調べ、また貧血の症状が出る他の病気の有無を確認するため、胃や便、肝機能の検査、骨髄検査などを併せて行う場合もある。
治療
ビタミンB12または葉酸が不足している場合はその原因を特定し、内服薬や注射によりビタミンB12と葉酸の補充療法を行う。血中の数値が正常になるまで、1日に1回から週に1回程度の間隔で補充するのが一般的。重症でない患者であれば数時間で体力を回復し、数週間から数ヵ月かけて改善していく。一方、免疫異常や胃の障害による吸収不良が原因の場合、補充療法は通常、生涯にわたって継続的に行っていく必要がある。神経症状に関しては回復に時間を要する場合もあるため、早期の発見が重要。胃を切除した患者の場合は、以前は注射によりビタミンを補充していたが、最近では内服による治療も可能となった。食生活の偏りが原因であれば食事内容の見直しも必要だ。ビタミンB12の多く含まれる魚介類やレバー、海苔、葉酸の多く含まれるレバーやうなぎ、緑黄色野菜を意識的に摂取すること。
予防/治療後の注意
原因が明らかになれば完治も可能。ビタミンB12や葉酸が不足しがちな妊娠中や授乳中は、食事のほかサプリメントなどを用いてそれらを補充することが大切だ。偏食やアルコールの過剰摂取によっても葉酸が欠乏する恐れがあるため、バランスの取れた食事や飲酒習慣を心がけること。

こちらの記事の監修医師
血液内科長 野口 雅章 先生
1983年順天堂大学医学部卒業。膠原病内科に所属し、免疫分野の診療経験を積んだ後、血液内科へ転向。亀田総合病院で移植医療を学び、順天堂大学医学部附属静岡病院を経て2000年から現職。2013年に教授就任。日本血液学会血液専門医、日本内科学会総合内科専門医。
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