
こちらの記事の監修医師
下北沢病院
足病総合センター 菊池 恭太 先生
がいはんぼし外反母趾
最終更新日:2021/11/26
概要
外反母趾とは、母趾が外側に傾き曲がった変形をいいます。足の日常診療で最もよく出会う疾患の一つで、65歳以上の女性では3人に1人以上が外反母趾を発症していると言われるほどです。本邦では、単純エックス線撮影における外反母趾角(母趾基節骨と第1中足骨の成す角度)が20°以上の変形を外反母趾と定義し、20~30°を軽度、30~40°を中等度、40°以上を重度と定めています。しかしこの角度に満たない程度の変形であっても、疼痛や変形を訴え治療を必要とする患者は少なくありません。外反母趾は母趾だけの問題に限らず足全体の変化の一部と捉えて、他のリスク要因や足部全体の構造なども考慮して診察する必要があります。
原因
外反母趾の発症要因として一般に、遺伝や性差、足部および下肢の解剖学的要因が原因となる「内的要因」と、履物や生活様式などの「外的要因」が挙げられます。性差では女性との相関が強いとされ、また解剖学的要因では母趾が長いことや偏平足、関節弛緩性、変形性膝関節症などとの相関が指摘されています。履物では、先細りのヒール靴により関節が緩んだ状態の母趾を外側に圧迫してしまうことが、外反母趾の要因の一つであると考えられています。そして、これらの要因が複合的に合わさることで外反母趾が発症していくと推測できます。
症状
外反母趾の典型的な症状は、母趾の関節痛や変形突出部(bunion)の疼痛です。しかし母趾の疼痛以外にも、変形に関連してさまざまな症状を発生させる可能性があります。趾神経の圧迫による母趾内側のしびれ、ねじれた母趾で蹴りだすことによる爪トラブルをはじめ、変形が重度になると2趾3趾への接触や交差や足底圧増大などにより胼胝や疼痛、変形などを合併することも。このように外反母趾の増悪に伴い足底圧分布にも変化が生じ、2、3趾側にも影響を及ぼすようになります。一方、変形がかなり強くても受診相談時に疼痛がまったくない患者も多いのが現状です。醜形に対する嫌悪、履物の制限による悩み、変形進行に対する不安など、疼痛がなくても個々の生活環境によって悩みは異なります。
検査・診断
まず、母趾および足部の状況を観察していきます。外反母趾に限らず、足部疾患においては荷重時(立位)の状況を観察することが重要です。母趾においては、変形の程度や可撓性の有無、指の長さ、2趾との重なりの有無などを確認。母趾以外にも2~5趾の変形や疼痛、足底の胼胝や疼痛の有無、足アーチなど足部全体を観察します。観察後は荷重位単純エックス線にて詳細な解剖学的評価を行います。外反母趾角(HVA)と中足骨間角(M12角)にて重症度の評価を行い、母趾MTP関節の適合性(時に亜脱臼を認める)や関節症変化の有無を確認します。母趾以外にも2、3趾の変形や脱臼、外反偏平足、リスフラン関節症などの合併がないかも確認していきます。外反母趾の診断自体は、単純エックス線にて簡単にできます。しかし治療を行うにあたっては、母趾だけでなくその他の部位の症状の合併や解剖学的特徴の把握が必要です。
治療
治療のゴールは必ずしも手術的に変形を治すこととは限らず、個々の悩みに応じて対応します。保存療法は、装具療法と運動療法、フットケアが中心となります。装具療法では、主に足底装具によって荷重に伴う母趾や足部全体への負荷を調整します。運動療法では、主に足趾運動(母趾外転筋運動、Hohmann運動)やアキレス腱ストレッチによって、変形に影響を与える筋機能の改善を図ります。フットケアでは、合併しやすい爪周囲や胼胝の疼痛に対して、爪甲処置や胼胝処置を行います。初期の変形であれば、これらの保存療法によって疼痛緩和のみならず、変形自体の改善や増悪予防が期待できます。変形が進行してしまうと、保存治療では変形矯正効果は期待できず対症的な対応となります。よって疼痛や愁訴が保存療法で改善されない場合は手術治療を検討します。手術治療は主に骨切り術や軟部組織解離によって母趾の変形を矯正しますが、変形のみならず術後の関節可動域や2~5趾との長さのバランスが適切であることは足部機能のために重要です。また、外反母趾手術は術式が100以上存在しており、術者によってさまざまな術式が用いられていることは、外反母趾手術が簡単でないことを意味しています。
予防/治療後の注意
手術を行っても10%ほどに変形再発が報告されています。先に述べたように母趾のみでなく、足部全体の解剖学的特徴や生活環境、履物などの要因も含めて指導を行い変形進行や術後の再発の予防に注意する必要があります。また術後も術前同様に運動療法や装具療法を行い、足部機能を良好に維持することも重要です。手術を行った場合は、変形再発のほかにも感染、内反母趾、骨頭壊死、関節拘縮などの手術併発症に関して注意してフォローします。

こちらの記事の監修医師
足病総合センター 菊池 恭太 先生
北里大学医学部卒。日本整形外科学会整形外科専門医。北里大学病院整形外科、北里大学病院整形外科助教を経て国内医療機関に勤務。横浜総合病院整形外科医長および同病院創傷ケアセンターを経て現在に至る。
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