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国家公務員共済組合連合会 大手前病院 脳神経内科部長 脳神経センター長 須貝 文宣 先生

こちらの記事の監修医師
国家公務員共済組合連合会 大手前病院
脳神経内科部長 脳神経センター長 須貝 文宣 先生

じゃくねんせいぱーきんそんびょう 若年性パーキンソン病

概要

パーキンソン病は特徴的な運動障害をもたらす脳神経の病気で、多くは50歳以降で発症しますが、全体の10%程度は40歳以下で発症します。これを「若年性パーキンソン病」と呼びます。一部の若年性パーキンソン病患者の家系には他にもパーキンソン病患者がいるケースもあります。こうしたタイプは、親から子に伝わる遺伝性(家族性)疾患で、遺伝子の異常が病気の原因であると考えられています。若年性パーキンソン病は、中高年で発症する一般的なパーキンソン病に比べて、進行が緩やかなことが特徴です。有効性が期待できる薬もあるので、前向きに病気と長く付き合う気持ちを持ちましょう。

原因

パーキンソン病は、何らかの原因によって、脳が出す指令を神経に伝達するドパミンという物質が不足し、運動に障害が出る病気です。パーキンソン病ではこのドパミンを作る細胞である中脳の「黒質ドパミン神経細胞」が減少し、指令を出す部位のドパミンが不足することがわかってきました。しかし、なぜそうなるのかという原因は十分には解明されていません。若年性パーキンソン病の5%程度は、遺伝性であると考えられています。発症に直接つながる原因遺伝子も何種類か見つかっています。遺伝性でないパーキンソン病の原因はまだ解明されていませんが、環境要因や病気を発症しやすくさせる遺伝子異常など、いくつもの要因が重なって発症するのではないかと考えられます。

症状

若年性パーキンソン病の主な症状は、一般的なパーキンソン病と同じで、動作が緩慢で少なくなる、表情に乏しい、筋肉や関節がこわばる、体のバランスが崩れて転倒しやすい、すり足で小刻みに歩く、安静時も手足が震える、などが代表的です。ただ、若年性の場合、初期に手足の震えが出ることは比較的少ないとされています。転倒するほどバランスを崩すことは少なく、体幹がどちらかに傾くような歩行障害がよく見られます。また、病気の進行は緩やかで、20~30年、時には50年以上かけてゆっくりと進行していきます。高齢のパーキンソン病患者に多い認知症との合併も少数です。

検査・診断

若年性パーキンソン病の検査・診断は、一般的なパーキンソン病の検査・診断と同様、診察、MRIなどによる脳の形質診断、核医学検査などによる脳血流の検査、脳波の検査、ビデオ画像による歩行状態の解析などが基本です。パーキンソン病と関連の深いドパミンを運ぶ細胞の密度を確認する画像検査、心筋の交感神経の働きなどを調べる画像検査など、新しい検査方法も登場しました。特に若年発症で遺伝性パーキンソン病が疑われる場合は、家族にパーキンソン病患者がいるか、などの近親者への病歴聴取が重要となります。

治療

パーキンソン病に対しては、薬によってドパミンの不足を補う治療が基本です。レボドパ製剤と呼ばれる体内でドパミンに変化する薬を中心に、神経細胞をドパミンと似た作用で刺激する薬(ドパミン受容体作動薬)、ドパミンの放出を促す薬、ドパミンの効き目を伸ばす薬、効率よく脳に届ける薬などさまざまな薬を組み合わせて使用します。特に若年性パーキンソン病は少量のレボドパ製剤やドパミン受容体作動薬で長期間、症状を抑えることが期待できます。一方、若年性パーキンソン病は、レボドパ製剤の影響で、ジスキネジアという自分の意志とは関係なく、勝手に体がおかしな動きをする合併症が出やすいことが知られています。最近では、多くのドパミン受容体作動薬が選択できるようになったため、薬による治療の質の向上が望めるようになりました。薬が効かない場合は、根治療法ではありませんが、手術で脳に電極を埋め込んで電気刺激を与える深部脳刺激療法、脳の特定部位を熱で焼く治療などで症状の改善を図る方法もあります。

予防/治療後の注意

若年性パーキンソン病は急激に進行することは少なく、数十年かけて徐々に進行します。歩きにくい症状が出ても、できるだけ運動をすることを習慣づけ、必要に応じてリハビリテーションを行い、日常生活の質を高めることを心がけましょう。若年性パーキンソン病は睡眠が症状の緩和に関係していることも多いため、眠れないときは主治医に相談することが大事です。また、遺伝性のパーキンソン病と判明したときは、遺伝カウンセリングを受けることも考えてみましょう。

国家公務員共済組合連合会 大手前病院 脳神経内科部長 脳神経センター長 須貝 文宣 先生

こちらの記事の監修医師

国家公務員共済組合連合会 大手前病院

脳神経内科部長 脳神経センター長 須貝 文宣 先生

1995年大阪大学医学部卒業後、同大学の神経内科へ入局。関西労災病院や大阪大学医学部附属病院にて豊富な臨床経験を積む。大手前病院では脳神経内科部長、脳神経センター長、パーキンソン病センター長を兼任する。脳卒中からパーキンソン病まで、脳神経内科疾患全般に幅広く対応。日本神経学会神経内科専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本リハビリテーション医学会リハビリテーション科専門医。医学博士。