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横浜新都市脳神経外科 院長 森本 将史 先生

こちらの記事の監修医師
横浜新都市脳神経外科
院長 森本 将史 先生

みはれつのうどうみゃくりゅう未破裂脳動脈瘤

概要

脳の動脈の分岐部で弱くなっている動脈壁が血流の圧力で膨らむことによって風船のような血管のこぶが形成され、破れずにとどまっている状態のことをいいます。成人の2~6%くらいの割合でこのようなこぶが発見されるといわれており、脳ドックや脳のMRI検査、CT検査などでたまたま見つかるケースがほとんどです。破裂しない限りは基本的に症状が出ることはありませんが、一旦破れると脳と血管を包んでいる「くも膜」の内側に出血が広がり、くも膜下出血を引き起こします。激しい頭痛や吐き気が生じ、約半数が生命に危険が及び、仮に手術が成功したとしてもすべての人の社会復帰は難しいといわれており、たいへん重篤な結果をもたらします。破裂リスクは統計的に高くはありませんが、破裂すると予後が不良のため、慎重に経過観察を行い、リスクが高いと判断される場合は手術で予防する必要があります。

原因

こぶができる原因ははっきりとしていませんが、高血圧や血流の異常による血管へのストレス、喫煙歴、遺伝などが関係していると考えられています。動脈瘤が破れやすい原因として考えられるのは、大きい、特定部位(椎骨脳底動脈系、前交通動脈)、いびつな形状、多発性、遺伝などです。

症状

動脈瘤が未破裂の段階では、多くは自覚症状がありません。もっとも、場合によってはこぶが大きくなって神経を圧迫し、複視などの神経症状を来すこともあります。破裂してくも膜下出血になると脳や髄膜が刺激され、経験したこともないような激しい頭痛や嘔吐を生じます。また頭蓋内の圧が高まることによって意識を失うこともあります。脳実質の損傷が大きいと意識が戻らず、そのまま死に至る恐れも。脳内出血を伴う場合は手足のまひや言語障害が現れる危険性があります。

検査・診断

頭部MRA検査や3D-CTA(造影剤を用いて血管を調べるCT)検査によって動脈瘤の有無を確認します。検査の結果、未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、慎重に経過観察を続けるか、手術によって破裂を防止するかを判断します。UCAS Japanの2012年の報告では、脳動脈瘤の破裂率は1年平均0.95%となっています。そのため手術を行うべきか否かは、こぶの場所や形、大きさ、患者の年齢、健康状態などを総合的に考慮して決定することになります。目安としては、こぶができている場所が破裂しやすい部位にある場合、こぶの大きさが7ミリ以上である場合、患者の年齢が比較的若い場合などには手術が選択されることがあります。

治療

脳動脈瘤を処置するには外科手術が必要です。主な手術の方法は2つあり、一つは脳動脈瘤ネッククリッピング術といい、こぶの根元部分を金属製クリップで挟み、血液が入り込まないようにする方法です。クリップを正確な位置に挟むことができれば破裂や再発のリスクの低下につながります。もっとも、この手術は頭蓋骨を一旦外すなど侵襲性が高く、脳の奥にこぶがある場合には難しいとされています。もう一つは脳動脈瘤コイル塞栓術と呼ばれる方法です。これは血管にカテーテルを入れ、コイルを動脈瘤の中に誘導して留置する手術法であり、コイルがこぶの中の血液を固めることによって血液の流入を防ぎます。頭を開けずに済むため侵襲性が低いのがメリットですが、コイルによる塞栓が不十分だった場合には破裂のリスクが残り、再治療が必要となります。この他、大きな動脈瘤に対して行われるバイパス併用母血管閉塞術や脳動脈瘤に血流が入らないようにする新しいステント留置術(フローダイバーターステント)などもあります。

予防/治療後の注意

治療をせずに経過観察となった場合は、こぶが破れる危険性を高める高血圧や過度なストレス、疲労、大量の飲酒、喫煙を避けることが大切です。また半年から1年に1回はMRI検査やCT検査を受け、動脈瘤の変化を確認するようにしましょう。

横浜新都市脳神経外科 院長 森本 将史 先生

こちらの記事の監修医師

横浜新都市脳神経外科

院長 森本 将史 先生

1993年京都大学医学部卒業。2002年同大学院医学研究科修了。同医学部附属病院、国立循環器病研究センター、Center for Transgene Technology and Gene Therapyでの勤務を経て、2010年に横浜新都市脳神経外科病院の脳神経外科部長に就任。2011年から現職。専門分野は脳動脈瘤、バイパスなどの血行再建手術、血管内手術などの脳血管障害、脳腫瘍。