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こちらの記事の監修医師
東京慈恵会医科大学附属第三病院
消化器・肝臓内科診療部長 小池 和彦 先生

げきしょうかんえん(きゅうせいかんふぜん)劇症肝炎(急性肝不全)

概要

劇症肝炎は、肝炎が急激に悪化し、肝細胞が大量に壊れて機能しなくなった「肝不全」といわれる状態をさします。肝臓は体に必要な物質を合成するとともに、有害物質を解毒する働きを担っていますが、劇症肝炎になるとこの機能が極端に低下するため、有害物質が体に蓄積されて意識障害、さまざまな臓器の障害、血が固まらなくなるなどの異常が起こり、適切に治療しないと命を落とす可能性もあります。急性肝炎の患者のうちの1%程度が劇症肝炎に移行し、日本では年間約400人の患者が発生しています。肝細胞は増殖力が高く、通常は急性肝炎になっても機能を回復しますが、劇症肝炎にまで進行すると機能が回復せず、肝移植が必要な場合もあります。

原因

劇症肝炎の原因としてわかっているのは、ウイルス性の肝炎、薬物アレルギーによる肝障害、自己免疫性肝炎などですが、3割程度ははっきりとした原因を特定できていません。劇症肝炎の原因ではウイルス性肝炎によるものが多く、日本ではB型肝炎ウイルスを原因とするものが全体の40%を占め、次いでA型肝炎ウイルスとなります。A型肝炎ウイルスは年によって流行状況に差があるので、劇症肝炎に移行する人数も年によって異なります。C型肝炎ウイルスによるものはごく少数です。自己免疫性肝炎は何らかの原因で自分の免疫が、肝細胞を異物と勘違いして破壊してしまう病気です。薬物性の肝障害はあらゆる薬で出る可能性がありますが、消炎鎮痛薬、抗がん剤、麻酔薬などでの報告例が比較的多くなっています。同じ肝炎ウイルスによる急性肝炎で、なぜ、一部の人だけ重症化して劇症肝炎に移行するのかの原因はよくわかっていません。また、B型肝炎ウイルスが原因の場合、感染してすぐ劇症肝炎になる場合と、ウイルス保有者が長く無症状で過ごした後、急に劇症肝炎になる場合があります。

症状

初期症状は急性肝炎と同様で、全身のだるさ、吐き気、食欲不振などです。劇症肝炎では、ここから肝性脳症という特徴的な症状があらわれます。肝性脳症は、肝機能が低下することで有毒物質がたまって脳に回ってしまうことで起きる、意識がぼんやりしたり、なくなってしまったりする症状です。場所、人、時間などを間違えたり、興奮して暴れたりするようになり、さらに重症になると呼びかけや痛みにも反応せず、昏睡状態になります。また、全身に有毒物質が回り、血液凝固物質をつくる機能が低下することで、腎臓、肺、心臓、消化管など多くの臓器で異常が起き、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、出血などいろいろな症状が次々と表れ、最悪の場合は死に至ります。

検査・診断

最初の症状が表れてから、8週間以内に肝性脳症が出現し、血液中の凝固因子の活性度が一定の値を下回ったときに、劇症肝炎と診断します。この検査は、患者の血液を採取し、試薬を加えて血が固まる時間(プロトロンビン時間)を測り、健常者の標準的な凝固時間と比較するものです。肝臓では多くの血液凝固因子が作られていますから、この時間が長いと、それだけ重症な肝障害が起こっているということになります。また、最初の症状出現から肝性脳症出現までの期間が10日以内なら急性型、11日以上かかったら亜急性型と分類しますが、急性型より亜急性型のほうが救命率は低いとされています。

治療

劇症肝炎になる前の段階で、原因がB型肝炎ウイルスであれば抗ウイルス薬を用いた治療を行います。自己免疫性肝炎や薬物アレルギーが原因の場合は、大量のステロイドを投与することもあります。劇症肝炎に移行した場合は、機能低下した肝臓の働きを補う人工肝補助療法を行います。人工肝補助療法には、血液の体外循環装置を用いて、有害物質を含んだ血漿を除去し健常人の血漿を補充する血漿交換と、血液中の有害物質を除去して不足物質を補充する血液ろ過透析があり、両方を組み合わせて実施する場合が多くなっています。これをしばらく続け、肝細胞が増えて肝機能が改善してくると生命の危険はなくなり、回復に向かいます。この治療を行っても回復が難しい場合、肝移植が検討されます。日本の場合は、近親者から肝臓の一部の提供を受ける生体部分肝移植が中心になっていますが、2010年以降は脳死肝移植の実施件数も増えています。2010年から2014年に集計を行った全国の主な病院からのデータによると、肝移植の実施患者を含めた急性型の救命率は約50%、亜急性型は約40%とされています。

予防/治療後の注意

どのような人が急性肝炎から劇症肝炎になるのかは明確になっていませんので、原因疾患の予防を心がけましょう。全体の40%程度がB型肝炎ウイルス感染からの発症で、持続的なウイルスの保有者が急に発症するケースが増える傾向にあります。ウイルス保有者は褐色の尿、白目が黄色いなどの症状に気づいたら直ちに医療機関を受診してください。また、A型肝炎とB型肝炎にはワクチンがあります。A型肝炎流行地域への渡航、パートナーがB型肝炎ウイルス保有者であるなどの場合は接種を検討してください。

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こちらの記事の監修医師

東京慈恵会医科大学附属第三病院

消化器・肝臓内科診療部長 小池 和彦 先生

1990年東京慈恵会医科大学卒業。2006年より同大学附属病院の消化器・肝臓内科医長に就任。2012年に同大学附属第三病院へ赴任した後、2018年消化器・肝臓内科の診療部長に就任。医学博士。日本消化器病学会消化器専門医。