こちらの記事の監修医師
兵庫医科大学病院
主任教授 新崎 信一郎 先生
きのうせいでぃすぺぷしあ機能性ディスペプシア
最終更新日:2022/10/06
概要
胃の痛みや胃もたれ、みぞおち周辺の痛みなど、腹部の不快な症状のことを「ディスペプシア」といいます。内視鏡検査などを行っても、ディスペプシアの原因となる疾患が見つからず、慢性的に症状だけが続く状態が「機能性ディスペプシア(FD)」です。これまでは慢性胃炎やストレス性胃炎、神経性胃炎などと診断されることが大半でしたが、これらは内視鏡検査で胃の中に何らかの疾患や異常の原因が見つかる疾患。近年は原因が見つからないものについて、機能性ディスペプシアと定義されるようになりました。医療機関受診者の約半数がかかっているといわれるほど、患者数が多いことがわかっています。生活の質(QOL)に深く関わってくる疾患のため、適切な診断と治療が欠かせません。
原因
機能性ディスペプシアの原因は多岐にわたります。中でも、ストレスや不眠、過労、過食、喫煙、飲酒などによって、胃や十二指腸の運動機能が阻害されたり、少ない刺激で症状が出やすくなる知覚過敏になったりすることが主な原因です。ほかにも、強いストレスやトラウマなどの心理的要因や、胃酸やヘリコバクター・ピロリ菌感染、サルモネラ感染などの感染性胃腸炎、不規則な生活習慣、遺伝、胃の形態などが機能性ディスペプシアを引き起こすこともあります。一つの原因だけでなく、複数の原因が組み合わさって発症することもわかっています。
症状
「食後に胃もたれや胸焼けがする」「みぞおち辺りが痛い」「あまり食べていないのに満腹感がある」「酸っぱいものや苦いものが込み上がってくる」「吐き気やげっぷがよく出る」など、腹部にさまざまな不快な症状が現れます。通常、慢性胃炎やストレス性胃炎、胃がん、胃潰瘍などでも同様の症状が出ますが、機能性ディスペプシアでは症状の原因となる疾患が特定できないのが特徴です。内視鏡検査などを行っても、食道や胃に明らかな異常が見つかりません。しかし、慢性的に症状が続き、QOLを低下させてしまうため、患者本人のストレスにもなり得ます。
検査・診断
問診にて腹部の症状をはじめ、症状が出ている期間や頻度、食生活、体重減少の有無などをチェックします。慢性胃炎やストレス性胃炎、胃がん、胃潰瘍などの疾患が疑われる場合、上部内視鏡検査(胃カメラ)を実施し、腹部に不快な症状を引き起こしている原因を探ります。必要に応じて、ピロリ菌など感染症の検査、血液検査、超音波検査、腹部CT検査などを行うこともあります。いずれの検査でも疾患が特定できず、慢性的に症状が続く場合、機能性ディスペプシアと診断されます。
治療
症状に応じて、胃酸の分泌を抑える薬や胃の働きを改善させるための薬を中心に、抗うつ薬や抗不安薬、漢方薬などを処方します。ピロリ菌の感染がある場合は、その除去治療も実施します。また、ストレスや不眠、過労、過食、喫煙、飲酒などが機能性ディスペプシアの原因となっている可能性も考えられるため、生活習慣や食事の改善も重要です。規則正しい生活を基本に、バランスの取れた食事や適度な運動を心がけましょう。
予防/治療後の注意
現時点において、機能性ディスペプシアの予防方法などはわかっていません。ストレスや自律神経の乱れと関わりがあるとされる疾患のため、できるだけストレスをためない暮らしを送っていくことが大切です。「寝つきが悪い」「おなかが痛くなりやすい」「いらいらしやすい」など、何らかのストレスサインがあったら、一休みして気分転換をしてみましょう。日頃からストレスとの付き合い方を考えていくことが、健康的な暮らしにつながります。なお、機能性ディスペプシアは治療後の数ヵ月間で再発する人も多いといわれています。気になる症状があれば、早めに受診してください。
こちらの記事の監修医師
主任教授 新崎 信一郎 先生
1998年大阪大学医学部医学科卒業。大阪大学消化器内科を経て2022年から現職。医学博士。専門分野は、消化器内科一般、炎症性腸疾患、消化管疾患の診断と治療。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、日本肝臓学会肝臓専門医。患者が安心して受診できるようエビデンスに基づき、一人ひとりの病状に応じた丁寧な診療を心がけている。
都道府県からクリニック・病院を探す
関東 | |
---|---|
関西 | |
東海 | |
北海道 | |
東北 | |
甲信越・北陸 | |
中国・四国 | |
九州・沖縄 |
関東 | |
---|---|
関西 | |
東海 | |
北海道 | |
東北 | |
甲信越・北陸 | |
中国・四国 | |
九州・沖縄 |