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国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 睡眠障害センター 睡眠・覚醒障害研究部長 栗山 健一 先生

こちらの記事の監修医師
国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院
睡眠障害センター 睡眠・覚醒障害研究部長 栗山 健一 先生

かみんしょう過眠症

概要

過眠症は睡眠障害の一種で、極端な睡眠不足がないにもかかわらず、中枢神経系の異常によって日中に著しい眠気が生じ、日常生活に支障を来す病気です。過眠症の中ではナルコレプシーという疾患が最も多く、次に多いのが特発性過眠症です。非常にまれな病気として反復性過眠症(クライネーレビン症候群)という、著しい過眠症状が出現する時期と全く消失する時期を交互に繰り返す疾患の存在も知られています。過眠症の眠気は仕事中のミス、交通事故、労働災害など社会的な不利益につながる可能性もあります。日中に眠気が出る疾患には閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)、むずむず足症候群(レストレスレッグス症候群)、概日リズム睡眠・覚醒障害などがありますが、過眠症状の原因となる睡眠症状が明確に存在する疾患は、ここでいう過眠症には含めません。

原因

脳内の覚醒を調整する機構がうまく働かなることと、夜間の睡眠不足があると考えられています。ナルコレプシーでは、覚醒した状態を保つのに必要な神経ペプチドであるオレキシンを作り出す神経細胞に異常が起き、神経の伝達異常が生じて覚醒状態を保てなくなるといわれています。また、オレキシンはレム睡眠の制御にも関わっていますが、この働きが衰えて昼間の覚醒中であっても容易にレム睡眠に移行してしまいます。ナルコレプシーに伴う、寝入りばなや起きがけに出現する幻覚や金縛りは、レム睡眠の障害に関連する症状です。特発性過眠症、反復性過眠症の原因はよくわかっていません。遺伝的な要因や環境要因が研究されています。

症状

ナルコレプシーは、日中に耐え難い眠気と短い時間(30分程度)の居眠りが繰り返し生じます。目覚めたときは一時的にすっきりします。ナルコレプシーには笑いや怒りなどの感情をきっかけとした情動脱力発作(カタプレキシー)が出るタイプと出ないタイプがあり、脱力症状としてはろれつが回らない、床に崩れ落ちるなどがあります。寝入りばなの幻覚、起きがけの金縛りなどの症状が見られることも。特発性過眠症は、昼間の眠気と1時間以上の居眠り、長時間の夜間睡眠、目覚めたときもすっきりしないといった特徴があります。反復性過眠症は、強い眠気が3日~3週間持続する状態が年に数回から10回ほど見られます。いずれも10代、20代に発症することが多い病気です。

検査・診断

過眠症の診療では、まず、エプワース眠気尺度(ESS)などの問診票を用い、どのような場合にどのくらい居眠りが起きているかを調べます。次に情動脱力発作やそれ以外の症状も詳しく聞き取ります。睡眠日誌を記録してもらうこともあります。さらに終夜睡眠ポリグラフ(PSG)や反復睡眠潜時検査(MSLT)という検査を行って、過眠症であるか、どのタイプであるかを診断します。PSGは一晩にわたって脳波、心電図、筋肉の動き、呼吸状態などを調べる検査で、主に過眠の原因となる障害の鑑別を行います。翌日に行うMSLTは日中に繰り返して行う傾眠傾向を調べる検査で、その結果によりナルコレプシーまたは特発性過眠症の診断を行います。補助的に髄液オレキシンの濃度測定や遺伝子検査を行う場合もあります。

治療

睡眠不足の影響を除外し、過眠の原因となり得る背景疾患への治療を十分に行った上で、ナルコレプシーもしくは特発性過眠症に対しては、薬物療法が実施されます。日本では精神刺激薬(覚醒促進薬)が3種類(モダフィニル、メチルフェニデート、ペモリン)が認可されています。モダフィニル、メチルフェニデートを使用できるのは、上記診断が確定した患者に対し、登録された専門医師に限られます。情動脱力発作(カタプレキシー)や、幻覚、金縛りなどのレム睡眠関連症状に対しては、一部の抗うつ薬が有用である場合があります。症状は10年、20年とたつうちに軽くなる場合もあるため、薬の量を減らすことも見据えて治療を継続していきます。また、薬による治療に先立って規則正しい生活を送って、夜間に十分な睡眠時間を確保するような生活指導が優先されます。睡眠記録表で毎日の睡眠、覚醒時間を記録することも治療の一環です。また、可能であれば昼休みに短い昼寝を取る習慣をつけることで、他の時間帯の居眠りを減らすのに役立ちます。反復性過眠症に有効な治療法は確立していませんが、一部症例では炭酸リチウムという薬が効果が期待できるとされています。

予防/治療後の注意

車の運転、職場での機械の操作などは特に注意を要するため、主治医とよく相談して、医師の指示のもとで行うようにしてください。重度の眠気がある場合は治療によって改善するまで道路交通法の規定に従い、免許の保留・停止処分となります。夜の睡眠前はカフェイン、アルコール、ニコチンなどの睡眠を悪化させる成分の摂取を抑えることが大切です。日中のカフェイン摂取は眠気の改善に有用ですので、摂取量が適正範囲内であれば摂取して問題ありません。症状が軽くなっても自己判断で薬を中止・減量することは避け、必ず主治医の指示に従いましょう。

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院 睡眠障害センター 睡眠・覚醒障害研究部長 栗山 健一 先生

こちらの記事の監修医師

国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院

睡眠障害センター 睡眠・覚醒障害研究部長 栗山 健一 先生

1999年筑波大学医学専門学群卒業後、東京医科歯科大学精神神経科へ入局。2003年同大学大学院修了。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所の成人精神保健研究部室長、滋賀医科大学精神医学講座准教授、同大学附属病院精神科科長などを歴任し、精神・睡眠障害分野での研鑽を積む。2019年1月より現職。日本睡眠学会理事、日本生物学的精神医学会評議員。厚生労働省による睡眠指針や向精神薬使用ガイドラインの策定メンバーを務めた経験も。