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井上眼科成田クリニック 井上 順治 院長

こちらの記事の監修医師
井上眼科成田クリニック
井上 順治 院長

もうまくしきそへんせいしょう網膜色素変性症

概要

網膜色素変性症は、網膜に異常がみられる遺伝性の病気だ。原因となる遺伝子の種類が複数あるため、病態が多岐にわたることが特徴。夜盲、視野の狭窄、視力低下が主な症状だ。進行は極めて緩やかで、数年から数十年かけて徐々に進行する。網膜の機能を回復したり、病気の進行を止めたりする治療法は確立されていないため、対処療法が中心となる。日本では4000~8000人に1人がかかるといわれ、厚生労働省によって難病に指定されている。

原因

原因は光の刺激を電気信号に変換する視細胞や、視細胞に密着している網膜色素上皮細胞の中に存在する遺伝子の異常だとされている。視細胞には錐体(すいたい)細胞と桿体(かんたい)細胞という2種類がある。錐体細胞は、網膜の中心にある黄斑という部分に集中して存在し、明るいところで色を認識する。桿体細胞は、その周りに多く分布し、色は判別できないが、わずかな光でも感じることができるため、暗いところでの視力を担っている。網膜色素変性症は、まず桿体細胞が変性し、その後錐体細胞の変性へと進行することが多い。遺伝性の病気ではあるが、明らかに遺伝傾向が認められる患者は全体の約半数で、残り半数は遺伝傾向が証明されていない。遺伝傾向が認められる患者のうち、最も多いのは常染色体劣性遺伝を示すタイプで、全体の35%程度を占める。次に多いのが常染色体優性遺伝を示すタイプで、全体の10%、最も少ないのがX連鎖性遺伝(X染色体劣性遺伝)で5%程度とされる。現在までに原因となる遺伝子のうちの一部は特定されているが、その数は今後さらに増えていくと考えられている。

症状

夜盲、視野の狭窄、視力の低下が主症状だ。夜盲とは暗い所で物が見えにくくなる症状で、桿体細胞が機能を失うことで起こるため、病気の初期段階に見られることが多い。視野の狭窄は初期段階で見られることもあるが、通常はある程度病状が進行してから現れる。視野の中央しか見えなくなることが多いが、逆に中央のみが欠けたり、下側だけ残ったりすることもある。病気がさらに進行すると視力が低下し、文字が読みにくくなる、物がかすんで見えるといった症状が現れる。人によっては、まぶしさを感じる、全体的に白っぽく見える、視界で光が明滅するといった症状を訴えることもある。発症年齢は個人差が大きく、子どもの頃から症状を訴える患者もいる一方、40歳頃になってから症状を自覚する場合もある。男女の差はほとんどない。

検査・診断

問診による夜盲などの症状や家族歴などの確認と、検査を行う。検査では一般的な視力検査に加え、眼底(網膜と視神経、血管などで構成される眼の奥の部分)の状態を調べる眼底検査、帯状の光を目に当てて観察する細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、見える範囲を調べる視野検査、光の刺激による電気信号を調べる網膜電図検査などを行なう。眼底検査では、病気の初期には網膜の色調が乱れることによるごま塩状の変化と、網膜血管が細くなるといった所見がみられる。中期になるとそういった変化が進行するとともに、眼底周辺部に特徴的な色素沈着が現れる。後期には網膜の変性が眼底の中心部に及び、視神経の萎縮が確認されるようになる。

治療

現在のところ、網膜の機能を回復させたり、病気の進行を確実に止めたりする治療法は確立されていない。対症的な療法として、明暗の感受性を維持する作用があるビタミンA製剤や、神経細胞への血流の障害を改善する循環改善薬などを投与。まぶしさの要因となる波長の光をカットする遮光眼鏡や、文字を読みやすくするための拡大鏡、読みたいページをテレビ画面に映し出す拡大読書器といった補助器具なども使用する。遮光眼鏡は、明るいところでのまぶしさを軽減するだけでなく、明るいところから急に暗いところに入ったときに感じる暗順応障害に対して有効で、コントラストをより鮮明にする効果もある。

予防/治療後の注意

病気の進行が極めて緩やかではあるが、徐々に悪化していくため、定期的に経過を観察していく必要がある。治療法は確立されていないため、矯正視力や視野結果から病気が進行する速度を自分で把握すること、そこから予測される将来の状況に向けて準備していくことが大切になる。将来的に期待される治療法として、遺伝子治療、網膜移植、人工網膜などの研究が行われている。

井上眼科成田クリニック 井上 順治 院長

こちらの記事の監修医師

井上眼科成田クリニック

井上 順治 院長

2001年順天堂大学医学部卒業後、同大学医学部附属順天堂医院眼科入局。2003年順天堂大学医学部附属浦安病院眼科勤務。同病院で約10年間、網膜硝子体を専門に手術を行う。2005年からは2年間ハーバード大学スケペンス眼研究所に留学。2012年から西葛西・井上眼科病院勤務。副院長を経て2016年院長に就任。