こちらの記事の監修医師
横浜市立市民病院
石原 淳 病院長
ましん(はしか)麻疹(はしか)
最終更新日:2022/01/04
概要
麻疹ウイルスによって引き起こされる急性の全身感染症。感染力が非常に強く、空気感染、飛沫感染、接触感染など感染経路もさまざまだ。子どもに発症することが多い。通常、約10日間の潜伏期を経て発症する。全身のリンパ組織を中心に増える麻疹ウイルスは、一時的に免疫機能を非常に弱めるため、別の細菌やウイルスによる感染症が重症化する危険性がある。例えば肺炎や脳炎の合併症で、死亡に至ることもある。一度感染して発症すると、免疫は一生持続するとされる。日本では麻疹ワクチンの普及により、麻疹の患者は激減しており、2015年3月、麻疹の排除状態にあることがWHO(世界保健機関)西太平洋地域事務局により認定されている。感染症法で五類感染症(全数把握対象)に定められているため、診断した医師は直ちに保健所に届けなければいけない。
原因
麻疹ウイルスへの感染が原因。麻疹ウイルスに接触すると、免疫を持っていない人はほぼ100%発症する。
症状
発熱、鼻水、激しい咳、目の充血、赤くて痒い発疹などが見られる。38度程度の発熱や風邪のような症状が2~3日続き、少し解熱した後、半日くらいで再び39度以上の高熱と発疹が出現する。発疹は耳の後ろや顔から出始め、2日後には全身に広がる。高熱は3~4日続く。合併症がなければ、7~10日後には回復する。乳幼児では初期症状として、下痢や腹痛を伴うことが多く、口の中の粘膜に白いアワ粒のようなコプリック斑と呼ばれる斑点ができるのが特徴。麻疹は中耳炎、肺炎、脳炎などの合併症が起こりやすく、肺炎や脳炎は重症化すると死亡することもある。また、麻疹にかかった後4~8年の潜伏期間を経て学童期に発症することが多い亜急性硬化性全脳炎は、重篤な合併症として知られている。妊娠中に感染すると、流産や早産を起こす可能性がある。
検査・診断
コプリック斑が見られるなど、症状や流行状況などから総合的に診断する。血液検査、麻疹ウイルスの抗体検査や遺伝子検査なども行う。
治療
特効薬はなく、対症療法として解熱薬(アセトアミノフェンなど)を使用する。細菌感染が同時に起こった場合には抗菌薬も用いる。
予防/治療後の注意
麻疹ワクチンの予防接種により、高い確率で予防できる。麻疹ワクチン(麻疹風疹混合ワクチンとして接種)は2006年から1歳と小学校入学前の計2回の接種が義務化され、高い予防効果を上げている。麻疹の患者と接触後、72時間以内に麻疹ワクチンの接種を受ければ発症を防ぐことができる可能性がある。妊娠中はワクチン接種ができないため、麻疹が流行している時は、人混みの多い場所への外出を避けるほうが良い。また、過去のワクチン接種の効果が弱まった場合など麻疹ウイルスに対する免疫が不十分な場合は、典型的な麻疹の症状は出ず軽症で済むことがあるが、感染源になるので注意が必要だ。感染力の高い麻疹は、手洗いやマスクでは予防できない。
こちらの記事の監修医師
石原 淳 病院長
島根県出身。1979年慶應義塾大学医学部卒業。同大学病院や関連病院で小児循環器科の診療に携わり、1998年に市民病院に入職。 小児科部長、副病院長などを経て2013年より現職。研修医の指導や育成、看護師の教育に力を入れる。
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