
こちらの記事の監修医師
同愛記念病院
アレルギー呼吸器科部長 黨(とう)康夫 先生
はいえんきゅうきんかんせんしょう肺炎球菌感染症
最終更新日:2022/01/05
概要
肺炎球菌によって引き起こされる感染症のこと。肺炎だけでなく、他にも中耳炎や副鼻腔炎などを発症することもある。脳や脊髄を覆っている髄膜の部分に感染すると髄膜炎になったり、原因となる菌が血液を通して全身に運ばれると敗血症を起こしたりして、重症化するケースも見られる。特に、免疫機能の未発達な乳幼児や加齢により免疫機能が低下している高齢者に感染しやすく、重篤な症状を引き起こしやすい感染症の1つ。
原因
原因となる肺炎球菌は、分類すると90種類以上ある。このうち、症状が悪化しやすい感染症を引き起こす肺炎球菌は、それほど多くない。肺炎球菌は、主に乳幼児の鼻や喉に常在している確率が高い。成人でも一定程度の保菌者がいる。肺炎球菌を持つ人が必ずしも発症するわけではなく、無症状のことも多い。ただし、菌を保有している間は常に感染の可能性がある。免疫力が弱い乳幼児や高齢者でなくても、小児と接する機会が多い成人、がん患者や慢性疾患を持つ患者は注意したほうがよい。また、インフルエンザにかかった後に弱っている喉の粘膜から感染して肺炎が起こることも。乳幼児が集まる保育園や幼稚園、高齢者が利用する介護施設などでは感染が広がりやすいので、十分注意する必要がある。
症状
季節は関係なく、一年中いつでも発症する可能性がある。たいていは、発熱や全身のだるさ、悪寒を感じるといった症状が急に現れる。菌が肺に入り込み肺炎を起こすと、咳や喉の痛みが出る他、強い胸の痛みを胸部の左右いずれかに感じたり、血が混じったたんが出たりすることもある。肺を覆う胸膜の部分に水がたまることで、痛みが出たり呼吸がしづらい症状が出たりしやすい。ただし、高齢者ではこうした症状がはっきりと見られない場合もある。また、肺炎の他にも肺炎球菌が感染する場所によって、中耳炎、副鼻腔炎、髄膜炎などが起きると、それぞれの状況に応じた症状が発生する。
検査・診断
肺炎については、胸部エックス線検査を行う。これによって、肺炎にかかっている特徴である影が見られるかどうかを調べる。また、肺炎が肺炎球菌に感染して起きているものかどうかを調べるためには、たんや血液を採取して原因菌が検出されるかを検査する。この他に、成人の場合は尿中の肺炎球菌に対する抗原を調べるための検査キットを使う場合もある。肺炎球菌による髄膜炎が疑われる場合は、腰椎穿刺(ようついせんし)の検査を行い、背中から背骨に注射針を挿入して髄液を採取する。得られたサンプルから、炎症の有無や細菌感染があるかどうかを調べる。
治療
肺炎や髄膜炎など、肺炎球菌により引き起こされる疾患はいくつかあり、それぞれによって細かな治療法は異なる。基本的には抗菌薬を用いての治療を行う。一般的にはペニシリン系の薬が投与されることが多いが、近年ではこうした抗菌薬に耐性を持つ耐性菌が増えていることが大きな問題になっている。この結果、治療に使える抗菌薬が限られるケースもあり、それが症状の重症化をもたらし、敗血症などを招く原因ともなっている。肺炎球菌が引き起こす中耳炎でも耐性菌が多く、治りにくい傾向がある。髄膜炎の場合は、重症化して命に関わるケースもあるため、治療初期から大量の抗菌薬を投与したり、複数の抗菌薬を投与したりする。
予防/治療後の注意
日本人の死因の中で、肺炎は第3位に挙げられる。また肺炎を起こす原因としては、肺炎球菌が最も多い。このため、ワクチン接種を受けることが、予防や重症化を防ぐための大きな意味を持つ。乳幼児であれば生後2ヵ月から5歳まで接種できるが、1歳未満の罹患率が高いことを考えると、できるだけ早めに接種を始めたほうがよい。また高齢者についても、定期予防接種の対象になっており、65歳で一度ワクチン接種を行い、以後5年間隔で接種することが推奨されている。

こちらの記事の監修医師
アレルギー呼吸器科部長 黨(とう)康夫 先生
1991年佐賀医科大学卒業。国立国際医療研究センター、東京大学、都立駒込病院、英国インペリアルカレッジ留学を経て2008年より現職。専門領域の講演・論文多数。日本呼吸器学会呼吸器専門医、日本アレルギー学会アレルギー専門医。
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